万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

南北会談の議題は平昌オリンピック-“リトマス試験紙”から逃げた南北両国

2018-01-07 10:56:55 | 国際政治
南北会談は五輪のみ議論…米韓国防相が確認
強硬姿勢を綱貫いてきた北朝鮮が韓国側の提案を受け入れ、凡そ2年ぶりとなる南北当局者による会談が今月9日に板門店で開かれる運びとなりました。南北会談再開の報に、日本国政府は“リトマス試験紙”という表現で静観方針を示しましたが、同会談が、仮に北朝鮮の核・ミサイル問題に踏み込むとすれば、南北両国に対する決定的な“リトマス試験紙”となるはずでした。

 北朝鮮に対しては、同会談は、核・ミサイル放棄を前提とした交渉に応じる意思があるか、否かを問う貴重なチャンスとなったことでしょう。この場面において期待される韓国の役割は、北朝鮮側の最終的な意思の確認であり、手にした“リトマス試験紙”によって、北朝鮮側の対米交渉への決断の有無が判断されるのです。仮に、北朝鮮側の回答が核・ミサイル開発・保有の堅持であれば、対米交渉の道は、この時点で閉ざされます(米軍による対北武力制裁の可能性が格段に高まる…)。

 一方、同会談は、韓国に対する“リトマス試験紙”でもあります。否、北朝鮮以上に、韓国は、この会談において各国からその立場を試されたことでしょう。何故ならば、この会談における韓国側の発言こそ、同盟国であるアメリカの味方なのか、それとも、昨今、急速に関係を改善させた中国の‘代理人’なのか、同国の立ち位置を明らかとするからです。南北会談の再開については、当初より、米韓離反策の一環ではないかとする懸念がありましたが、仮に、韓国側が、アメリカの方針を無視して核・ミサイル開発の一次的な凍結路線で交渉を進めるとすれば、同国は、中国の“代理人”と化した可能性が高まります。

 以上に述べたように、南北会談は、両国の基本的な立場を明らかにする上でも、重要な機会となるはずでしたが、結局、同会談での議題は、北朝鮮の平昌オリンピックへの参加問題に限定されてしまったようです。議題の限定化は、米韓電話会談後のマティス米国防長官の発言に依りますが、おそらく、この判断の背景には、“リトマス試験紙”を怖れる両国の思惑があったことは想像に難くありません(もっとも、韓国側の裏切りリスクを懸念したアメリカが、交渉議題から核・ミサイル問題を外した可能性も…)。時間稼ぎと瀬戸際作戦を得意とする北朝鮮にとりましては、会談における最終的な意思の表示はアメリカの決断を早めますし、“蝙蝠外交”を維持したい、あるいは、親中・親北の本音を隠したい韓国もまた、旗幟を鮮明にすれば、米中両国、あるいは、同国の裏切りを確信した一方から手厳しい報復を受けかねないからです。

 結局、平昌オリンピックの参加問題のみを話し合う南北会談とは、北朝鮮問題解決には何ら貢献するところもなく、対北宥和派が切望していた話し合いの実現という自己満足に過ぎないのではないでしょうか。そして、両当事国が、自国に不都合と見るや、真っ先に“本題”から逃げたことは(北朝鮮側から核・ミサイル問題に関する提案があるとは思えない…)、この‘本題’、すなわち、核・ミサイル問題の交渉による解決の難しさを暗示していように思うのです。

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2 コメント

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もしかしたら (Unknown)
2018-01-08 05:03:02
中国のボヤ作戦かもしれない。ハニートラップとか賄賂とかは、すべての国がやりそう。中国の得意はボヤ作戦と各個撃破。
尖閣では白い煙がちょっと出たけど、朝鮮半島は黒い煙がもくもく。今にも火事になりそうな雰囲気。それで、注意をひきつけて、自分はせっせと南シナ海をわが海にすることにいそしむ。今頃、人工島には対艦ミサイルがずらりかも。
各個撃破も得意だ。日本と友好関係を持っていないから中国に叩かれるのだと朝鮮日報に出ていた。遅かりし由良乃介だが。この大国の周りの国は経済的に友好関係を持っていないと叩かれるよ。ベトナムは、だからTPPに熱心なのだろう。叩かれたからね。
Unknownさま (kuranishi masako)
2018-01-08 07:56:49
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 朝鮮半島情勢につきましては、中国が、この事態を自国の覇権拡大のために利用しないはずはありません。日米両政府、並びに、国際社会は、真の脅威は中国にあることを十分に認識し、ゆめゆめ、”ボヤ作戦”に騙されてはならないと思います。なお、TPP11につきましても、中韓企業を利する可能性も否定はできず、警戒が必要ではないかと考えております。

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