万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

圧力あるいは同調圧力集団としての新興宗教団体

2022年07月20日 13時22分23秒 | 国際政治
新興宗教団体の信者たちとは、悩める者、海外出身者、あるいは、麻薬常習者といった人々である可能性が極めて高く、このため、必然的に社会全体からすればマイノリティーとならざるを得ません。否、新興宗教団体を創設し、‘使う側’は、必ずしもマジョリティーとなることを望んでいるわけではないからです。むしろ、上部の指揮命令が末端の信者まで行き届き、かつ、機動性に優れた小集団である方が望ましいのでしょう。なお、ここで言う‘使う側’とは、必ずしも教祖とは限りません。

 新興宗教集団が小集団であることが、それを‘使う側’にとりまして好都合である理由は、その目的にあるものと推測されます。新興宗教集団の特徴の一つは閉鎖性にありますが、同閉鎖性は、社会から完全に切り離された状態を意味しているわけではありません。自らが信じる、あるいは、目指す世界観を実現するためには、外部に対して積極的な働きかけをしなければならないからです。言い換えますと、新興宗教団体とは、それを‘使う側’にとりましては、自らの目的を実現するための実行部隊であり、いわば、‘手足’なのです。

 それでは、社会にあって新興宗教団体はどのような活動を行っているのでしょうか。一般的には、まずもって教説の布教や信者の勧誘を行っているものと考えられます。しかしながら、カルト的な教えを信じる人も入信しようとする人も、それほど多いわけではありません。最初から教団の名前を出せば、多くの人々は、慌てて逃げて行くことでしょう。そこで、教団側は、ステルス作戦を行っています。つまり、信者たちは、自らが教団の一員であることを隠した上で、外部の一般の人々と接触しようとするのです。

 ‘自分は、統一教会員である’、‘自分は創価学会員である’といった自己紹介を受けた人はほとんどいないことでしょう。信者たちは、自らが教団の一員であることを伏せた上で、少しづつ少しづつ教団の側に引き込もうとするのです。教団のメンバーであることが、発覚した場合、‘世間の噂話’となるのも、そのステルス性に起因しており、信者同士ではお互いをメンバーとして認識することがあっても、外部の人々には殆どわからないのです。この強いステルス性は、教団を‘使う側’にとりましては、大変好都合です。

 第1に、社会全体を内部から他の人々から気が付かれずに変る作戦を遂行することができます。例えば、マーケット戦略の一つに‘さくら作戦’というものがあります。それは、新製品などを販売したり、新しい店舗を開店するといった際に、報酬の支払いを以ってそれを使ってもらったり、お店の前に並んでもらうと言うものです。自らの世界観を実現しようとする場合、教団を利用すれば自然に社会全体に広げることができます。韓流の流行などもこの手法によるのかもしれません(併せてメディアの利用も…)。

 自由な言論空間であるはずのネット上でも、時事問題などについて、不自然なぐらいに同じようなコメントが並ぶことがありますが、世論を一定の方向に誘導しようとする意図が窺えます。こうしたケースにも、‘さくら作戦’が用いられているかもしれません。政府もまた国民を特定の方向に導くために‘さくら作戦’を採用しないとも限らず、この際、信者数の多い統一教会や創価学会は、願ってもいない実行部隊となり得ましょう。

 第1の手法は誘導ですが、新興宗教団体が、よりアグレッシブな‘同調圧力団体’となることもあり得ます。第2の利用方法は、同調圧力を生み出すことです。自らの方針に反する一般の人々に対して、一般人を装いながら圧力をかけていくのです。政府が積極的に推進した今般のコロナ・ワクチン接種に際しても、同調圧力が社会問題化しました。そして、この同調圧力については、与党公明党の母体である創価学会が協力したとの指摘もあります。この説の真偽は確認されていませんが、こうした‘噂’が流れるのも、新興宗教団体の政治・社会的な活動に多くの人々が警戒している証とも言えましょう。そして、ヒトラーユーゲントや紅衛兵といった組織的同調圧力こそ、独裁的な権力掌握の手法の一つであったことを思い起こしますと、新興宗教団体における政治的危険性が垣間見えるのです。

 そして、第3の利用方法とは、信者の大規模な動員により、権威主義体制、あるいは全体主義体制を強化する、あるいは、同体制に導く導火線となり得ることです。例えば、皇族の姻族については他の新興宗教団体との関連も報じられましたが、皇族の外出に際して街路から‘声かけ’なるものを行ってきたのは、動員された創価学会員であるとされてきました。権威が権威を保つためには、国民からの求心力を維持する必要があります。権威保持を演出するためには、演技者が要するのですが、新興宗教団体ほど、この役に適した組織はありません。一度に多数の信者を集めることができますし、指示通りに行動してくれるからです。

 以上に三つほど主要な利用方法を述べてきましたが、何れも、極めて政治・社会性が強く、宗教の領域に留まるものではありません。そして、それ故に、新興宗教団体と政治との関係は、一般の国民にとりましては極めて危険なものとなるのです(続く)。

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