万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

’一億総探偵の時代’- 陰謀否定論は藪蛇では?

2021年04月05日 12時03分50秒 | 日本政治

 本日、ネット上で公開されているAERAウェブ記事に、興味深いものを発見しました。そのタイトルは、「「陰謀説」は“普通の人”こそハマりやすい? 驚きの調査結果 騙されないためには「免疫を」と専門家」というものです。この記事、読んでみますと結論は逆なのではないかと思うのです。

 

 まず初めに、同記事は、自らを他の大勢の人と同じように考えているとみなす普通の人(普通自認層)、つまり、特定の政治的信条や宗教等を持たない人ほど、陰謀論を信じやすいとしています。この分析は、ウェブ上で実施したアンケート調査に基づいており、(1)「北朝鮮と日本の政府は実は裏でつながっている」、(2)「反安倍勢力と外国政府は裏でつながっている」の二つの質問に対する回答から導き出されたものです。日本国民は、支持政党なし、かつ、日常的に宗教活動をしていないという意味での無宗教者が大半を占めていますので、同研究結果は、日本人の大半が‘陰謀論’を信じている現状を示しているともいえましょう。

 

 ここで注意を要するのは、同記事は、陰謀論は事実ではない’とする前提で書かれていることです。この前提が間違っていますと、上述したアンケートの結果は、国民の多くが、’マスメディアは事実を報じていない’、あるいは、’重要な事実を隠蔽している’と疑っていることを意味します。つまり、陰謀論が事実であるのか、虚偽であるのか、明確に判断できない状態にあってこうした質問を行ったとしても’普通の人ほど騙されやすい’という結論には至らないこととなりましょう。

 

 むしろ、確定的な証拠はなくとも、国民が接している情報や状況証拠からは、北朝鮮と日本国政府が繋がっている可能性も否定はできません。とりわけ、連立政権の一角を成す公明党は親北政党ともされてきましたし、自民党内にも統一教会の影響が及んでいるとされています。国民の多くが、(1)を陰謀ではなく事実と見なしてもおかしくはないのです。(2)につきましても、日本国の左派政党が中国、韓国、北朝鮮との間に密接な繋がりがあることはいわば’常識’であり、事実を事実として述べたに過ぎないと見なすことでしょう。思考傾向に偏りのない一般的な理性を以って観察すれば、(1)と(2)を信じることは人としては当然ですので、同調査の結果は、むしろ’普通の人’が、メディアも政府も国民を騙していると疑っていることを裏付けているのです。

 

 同記事でさらに問題となるのは、陰謀論への対処法です。陰謀論を信じる傾向にある人は好奇心が旺盛であるとして、陰謀論の拡散を防ぐためには好奇心を捨てるべき、とする意見を紹介しています。さらに’悪い推論’に至らない予防措置として、SNS等による陰謀論の削除強化を奨励しており、言論の自由の侵害や言論統制を正当化しているのです。上述したように、陰謀が事実である場合には、アメリカ大統領選挙にあって問題視されたように、こうした行為は、一方的で恣意的な情報隠蔽、さらには憲法によって定められている「言論の自由」の封殺となりましょう。憲法にも違反する行為となるのですが、人々から好奇心を奪い、情報を徹底的に統制しようというのですから、この手法こそ、人類にとりましては、’陰謀論’以上の脅威となりましょう(奴隷化への道という陰謀…)。

 

 また、もう一つの対処法として、免疫の獲得も奨励されています。ここで言う免疫力の意味は、事実に含まれる1%の嘘を見抜く力なそうです。「例えば、『ワクチンは殺人兵器だ』という陰謀論について、なぜそのような言説が出てきたのか真正面から受け止め、一つ一つ確認していく。そうすれば、嘘かどうか簡単にわかる。」としています。しかしながら、「ワクチンは殺人兵器」という説は、上述したアンケートの設問と同様に、事実である可能性があります。医科学的な見地、並びに、政治・社会的な動機からして、嘘かどうかなど、簡単に分かるはずもありません。遺伝子ワクチンであれ、中ロ製のワクチンであれ、中長期的なリスクについては誰も分かりませんし、ファイザー社製に至っては、元副社長の方が有毒性について警告を発しています。科学的な知識を深め、あらゆる方面からの情報を収集すればするほど、「ワクチンは殺人兵器」である可能性も否定できなくなるのです。

 

免疫説にあっては、「…陰謀論について、なぜそのような言説が出てきたのか真正面から受け止め…」とありますが、同記事についても、多くの人々は、今の時期にあって、何故、陰謀否定論が掲載されたのか、その動機を探ろうとすることでしょう。そして、誰もが、多くの人々が陰謀論を信じるに至った現状を前にして、’陰謀論を信じてはいけない!’と訴えるがために、陰謀を企んでいる側が、陰謀が発覚することを恐れて掲載したと推理することでしょう。

 

つまり、陰謀を進めるに際して’陰謀論’が邪魔となる、即ち、事実に気が付いた人々が拒絶や抵抗を始めるので、それを防ぐために同記事を掲載したのではないかと、疑われることとなるのです。この推理は、犯罪心理にまで及ぶ合理的なものですので、同記事の掲載は、陰謀論を否定しようとして逆に陰謀論を強めてしまったという意味において、’藪蛇’となったとも言えましょう(裏の裏を詠めば、人々に危険を知らせるために意図的に’藪蛇’を作出…)。同記事を含めた陰謀が渦巻く今日、日本国は、’一億総探偵の時代’を迎えているのかもしれません。


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