万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

暴力性を露わにする中国-国連資格を問うては?

2019年07月25日 12時53分39秒 | 国際政治
現代と云う時代にあって、異民族を支配下に置く中華帝国を維持し、かつ、その勢力範囲を全世界に広げようとしている中国の姿は、時代錯誤であると共に、国際社会にとりまして極めて危険な存在になりつつあります。第二次世界大戦後に纏った平和主義国家の衣を脱ぎ捨て、あらゆる場面で暴力主義を露わにしているのです。

 西方のウイグル人やチベット人に対するジュノサイドレベルの弾圧に加え、東方の台湾、並びに、南方の香港も、目下、中国の暴力主義の脅威に晒されています。昨日7月24日に4年ぶりに公表された中国の国防白書では、‘台湾統一’のためには武力行使も辞さずの姿勢が改めて強調され、習近平国家主席の台湾併合に向けた並々ならぬ決意が窺えます。また、中国国防相の呉謙報道官も、「逃亡犯条例」改正を機に発生した香港の大規模抗議デモについて、記者団を前に香港側の要請があれば人民解放軍を出動させる意向を示しました。先日発生した一部デモ隊の過激化については中国側の人民解放軍投入に向けた口実造りの疑いも濃厚ですが、香港もまた、北京政府から武力による威嚇を受けているのです。

 中国は、南シナ海問題についても国際法に従わず、常設仲裁裁判所の判決を破り捨てており、暴力主義への傾斜は近年とみに激しくなりました。あたかも国際社会における‘暴力団’、あるいは、‘反社会組織’の如くです。暴力主義に走る中国の暴走を放置すれば、ウイグル、チベット、内モンゴル、台湾、並びに、香港のみならず、やがて全世界の諸国はその暴力の脅しに屈するか、あるいは、直接的な武力行使によって甚大なる被害を蒙ることになりましょう。中国がその鋭い牙を剥く今日ほど、国際社会の治安維持を要する時はないかもしれません。

 それでは、国際社会は、一体、何ができるのでしょうか。例えば、中国の国連における資格を問うのも一案です。国連憲章に定める平和的な解決に背を向けている以上、中国には、国連安保理において常任理事国の地位を維持する資格があるとは思えません。そもそも、中国が国連安保理で常任理事国の地位を得たのは、社会・共産主義国の後押しを背景に、事実上中華民国を追放して中華人民共和国に代表権を与える「アルバニア決議」が1971年10月25日に成立したことによります。この時、‘世界の警察官’としての厳密な資格審査が行われたわけではなく、国連総会における多数決を以ってその席を得たに過ぎないのです。つまり、無審査による資格獲得なのです。

 中国自身が国連憲章に違反する行為を繰り返している現状からしますと、同国から常任理事国の地位を剥奪する決議案が提出されてしかるべきです。国連常任理事国の資格付与の権限が国連総会にあるならば、逆に、安保理常任理事国であれ、国連そのもののメンバーシップであれ、資格を抹消する権限も総会にあるはずです。「アルバニア決議」の採択に際しては、国連憲章第18条2に記されている重要事項に関する手続きが採られており、決議案が成立するには3分の2以上の賛成票を要するものの、第6条の除名手続きとは違い、国連安保理は全く関与しません(常任理事国は‘拒否権’を行使できない…)。中国に対する警戒感が広がれば、中国の国連における資格を問う決議案が成立しないとも限らないのです。

 中国は、しばしば国連憲章における‘敵国条項’を持ち出しては日本国に対する武力攻撃を仄めかしてきました。しかしながら、国連が対処すべきは、過去の脅威よりも現在の脅威なはずです。国連から中国を追放すれば、野獣の如くに同国は拘束的な枠組みから解き放たれ、より危険な無法国家となるとする意見もありますが、現状でさえ、既にこの状態にあります(国連のメンバーシップは残しながら、常任理事国の地位のみをはく奪する方が’野放しリスク’は低減する…)。中国が、核保有を含め、常任理事国としての特権を享受することで今日の軍事大国の地位を築いた点を考慮しますと、その資格を剥奪する案は、一考に値するのではないかと思うのです。

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コメント (8)
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