万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

東シナ海のガス田レーダー設置は国際法違反ー日本国政府は仲裁提訴を

2016年08月08日 15時18分11秒 | 国際政治
中国、東シナ海のガス田にレーダー…軍事利用か
 尖閣諸島の危機が深まる中、東シナ海のガス田においても、中国による軍事拠点化の動きが加速しているそうです。ガス田に不必要なレーダーが設置されていることが確認され、先日、その証拠となる写真が公開されました。

 南シナ海のスプラトリー諸島でも、中国は、ユネスコのプロジェクトを悪用し、純粋な科学調査のための気象観測所の建設を装いつつ、人工島の軍事拠点化を進めました。こうした’騙し’の前例があることから、ガス田の建設と見せかけながら、東シナ海の日中中間線付近を軍事拠点化する可能性も否定はできないのです。

 もっともこの問題に関しては、日本国政府は、フィリピンの提訴と同様に、中国の同意なくして仲裁裁判に付すという選択肢があります。何故ならば、排他的経済水域とは、経済目的に限定して沿岸国に認められた権利であるからです(国連海洋法条約第56条)。中国は、同条約第298条に基づいて境界画定等に関しては強制的な係争解決手続きからの排除を宣言していますが、軍事用レーダー設置の問題であれは、利用目的に関する争いであり、単独で同条約第287条に規定された付属書の仲裁に付すことができるのです(中国EEZ内の資源に対して主権的権利を主張している国は皆無であり、資源の防衛目的という理由も成立しない…)。

 先月12日の仲裁判決に対して無視を決め込むぐらいですから、日本国政府による仲裁提訴も無意味とする反論もあるかもしれませんが、国際司法に判断を仰ぎ、中国の行為を違法とする判決を得ることは、国際社会において自国の主張や今後の行動に正当性を備えることに他なりません。いわば、正義の”お墨付き”を得ることなのですから、日本国政府は、無法国家と化している中国を法の支配に追い込むべく、国際司法制度の積極的活用を推進すべきと思うのです。

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