万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

呆れた北朝鮮の”世界の偽警察官”宣言

2016年05月08日 16時27分36秒 | 国際政治
「責任ある核保有国」強調=非核化・不拡散に努力―北朝鮮党大会で金第1書記
 昨日から平壌で開催されている第7回労働党大会において述べられた金正恩第一書記の発言に、世界は唖然とさせられることとなりました。”責任ある核保有国として非核化に努める”と宣言したというのですから。

 北朝鮮は、NPT体制において合法的な核保有国として承認されていないどころか、同条約に違反し、核・ミサイル開発を継続したことから、国連の制裁を受けております。いわば、国際社会における札付きの無法国家であると共に、自己中心の無責任国家でもあるのです。NPTは、確かに欠陥を内在させた条約ですが、それでも、核保有国の立場は、表向きは安保理常任理事国である五カ国に限られています。これらの諸国は、国連発足時に”世界の警察官”の役割を果たすことが期待された諸国であり、核保有国の地位も、核不拡散の義務とのバランスによって成り立っています。ところが、北朝鮮は、自らが違法行為を働いた”犯人”側に位置しながら開き直り、”警察官”の役割を自称しているのです。言い換えますと、北朝鮮は、”世界の警察官”を詐称し、他の諸国に対して”非核化や不拡散”という名の”取締”を行おうとしているのです。もちろん、核保有による軍事的な優位性と脅迫効果を高めるために。

 アメリカのオバマ大統領は、世界の警察官から身を引くことを宣言しておりますが、その代わりに、北朝鮮という”偽警察官”が登場するのでは、国際社会の秩序は崩壊の危機に瀕します。それとも、北朝鮮は、党大会を舞台に犯罪者と警察が入れ替わるという誰も笑えないコメディー、あるいは、パロディを演じることで、核保有国の義務不履行やご都合主義を暗に揶揄しているのでしょうか。北朝鮮の”世界の偽警察官”宣言は、悪い冗談としか思えないのです。

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