万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国による国際法秩序破壊への備え-弱肉強食の世界

2016年03月17日 15時27分09秒 | 国際政治
中国公船3隻が領海侵入=今年6回目―沖縄・尖閣沖
 南シナ海における領有権問題に関し、仲裁裁判所での決定を中国が受け入れず、あくまでも、実力行使を貫く場合、国際社会は甚大な危機に直面します。国連海洋法条約からの脱退は中国にも不利益をもたらすものの、仮に、国際法によって保護されている利益よりも国際法秩序を破壊した方が自国の利益になると判断した場合、中国が、後者を選択する可能性も皆無ではないからです。

 それでは、中国によって国際法秩序が破壊された場合、国際社会は、どのような状態に陥るのでしょうか。国際社会における主権国家の独立性や主権平等の原則も、国連憲章を含む国際法あってのことです。国際法秩序の消滅とは、国際社会が弱肉強食の世界に回帰することに他ならず、軍事力こそが、唯一の秩序形成力となります。仮に、中国が、他の諸国に抜きん出た軍事力を有するとしますと、他の軍事力に劣る弱小の国家は属国となるか、植民地化されることでしょう。となりますと、唯一、中国の支配から逃れる道は、中国を上回る軍事力を保有する以外にはなく、際限なき軍拡競争が開始されるものと予測されるのです。そして同時に、中国の軍事力を間接的に削ぐために、経済面における制裁をも強める必要があり、これまでの対中経済関係の全面的見直しも急務となります。加えて、NPTによる核拡散防止も無意味どころか、無法国家に対する軍事的特権の付与となり、当然に見直しを迫られることでしょう。むろん、国連が中国から攻撃を受けた国を援けてくれるはずもありません。

 中国は、自らが軍事的弱小国家であった時期においては国際法秩序の恩恵を受けながら、軍事大国に上り詰めた途端に、それを破壊しようとしております。国際法秩序の破壊という自らの行為によって、中国自身も法の保護を捨てるわけですから、『羅生門』の如く、たとえ自らの主権や領域等を侵害されたとしてもそれを認めざるを得なくなります。中国には、その覚悟があるのでしょうか。国際社会は、中国の選択を固唾を飲んで見守っております。

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