万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

結婚は不合理な差別の始まり?

2008-06-05 16:32:57 | 国際政治
違憲判決受け「国籍法」改正へ、鳩山法相が参院委で言明(読売新聞) - goo ニュース

 婚外子の日本国籍の取得については、各新聞ともに、最高裁判所の判決を評価する社説を載せているようです。世論にあっても同情論が強く、冷たいことを書くようですが、どうしても、この判決には腑に落ちない点があるのです。

 それは第一に、裁判所が、不合理な差別とみなすに当たって、婚姻の有無を挙げていることです。この判決で示された基準は、他の類似の訴訟や法の改正問題に波及するかもしれません。例えば、嫡出子と非嫡出子との間の相続権も、子には責任がないのですから、平等にすべきことになります。また、法律上の妻とお妾さんとの間の権利にも、格差をつけることは難しくなります。この原則の延長線上には、婚姻制度崩壊まで見えてくるのです(もっとも、いつの間にか一夫多妻制が実現し、殿方にとっては喜ばしいかもしれませんが、女性からは猛反発が・・・)。

 第二に、憲法第14条が保障している法の前の平等は、”国民”に対してであり、外国人には及ばないことです。つまり、今回のケースは、憲法の域外適用となるかもしれないのです。しかも、憲法第10条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める」とわざわざ明記し、国籍法は、立法府の裁量に含まれることを示しているのです。

 第三におかしいのは、国籍法が制定された1984年には合憲であって、2003年の時点では、違憲になったという説明です。もし、国民意識の変化によって、法律を変える必要があるならば、それは、国民を代表する立法府が行うべき仕事と言えましょう(司法の立法に対する越権では・・・)。

 第四に、裁判所に、国籍付与の権利があるのか、否かの問題があります。国籍付与は法務省の権限ですが、国籍法は、法律が改正されない間は有効なはずです。裁判所は、現行の国籍法を無効にすることなく、行政機関に対して法律に反する行為を命じることができるのでしょうか?(司法の行政に対する越権では・・・)

 第五に、国籍取得に関する訴訟には、訴える側にも深層心理において差別意識があることです(日本>母国)。母国の国籍に代えて日本国籍を取得して喜ぶ姿は、母国の人々の誇りを傷つけることになるかもしれません。 

 そうして、さらにショッキングであったことは、原告の方々が、「フィリピン移民万歳」と、日本語ではなくタガログ語で叫んだと言うのです(本日付産経新聞朝刊)。日本国籍を取得し、日本人となるにもかかわらず・・・。 

 もし、婚外子の国籍取得を求めるならば、議会への国籍法改正の請願が最も相応しい方法であり、その方が、はるかに多くの国民の支持を得られたのではないか、と思うのです。


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