税理士 倉垣豊明 ブログ

東京武蔵野市(三鷹)の税理士 相続税、贈与税等資産税対策、法人・個人向け税務・会計・会社法のブログ

代理4(代理人の能力)

2008-08-18 08:27:52 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は、代理の第4回目で、代理人の能力について書いてみました。

民法では、制限能力者の行為は取り消しができることとされています。
例えば、未成年者が自己の土地の売買契約を親権者の同意なく結んだ場合、その契約を何の理由もなく取り消せるのです。

もし、未成年者が代理人として本人の土地の売買契約を結んだ場合はどうなるか。
この場合は、その契約は代理人が未成年者であることを理由に取り消すことはできないこととされています。
「代理人は、行為能力者であることを要しない」(民法102条)
その代理行為の効果は、本人に帰属するのであって、代理人たる未成年者を保護する必要性がないことによります。

未成年者の側から本人との間に結んだ委任契約の取り消しはできます。しかし判例で、その委任契約に基づき、代理人として相手方と結んだ契約の効力には影響を及ぼさないこととされています。
本来なら、委任契約の取り消しにより、代理権が遡及的に消滅し、その未成年者の行為は無権代理となるはずですが、相手方の保護や、民法102条の主旨により、取消しの遡及効を制限しています。

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相殺について(弁済期、時効、相殺禁止、差押)

2008-08-15 08:21:51 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

相殺は、債務者が債権者に対して同種の債権を有する場合に、債権と債務を同額で消滅させる一方的意思表示であると説明されています。

例えば、AがBから10,000千円を借入し、逆にAがBに商品を8,000千円売却して売掛金を有することとなった場合に、AはBに対して8,000千円の相殺の意思表示をすることができます。
このケースで、AのBに対する8,000千円の売掛債権を「自動債権」、AのBからの借入債務10,000千円を「受動債権」といいます。

1.各債権の弁済期と相殺
受動債権の弁済期が未到来でも、自動債権の弁済期が到来していれば相殺可能です。
なぜなら、期限の利益は債務者のためにあるものと推定されますので、債務者はこれを放棄して相殺することができます。
これに対して、自動債権の弁済期が未到来の場合は、たとえ受動債権の弁済期が到来していても相殺はできません。債務者の期限の利益を一方的に奪うことはできないからです。

2.自動債権の時効と相殺
時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができます。(民法508条)

3.相殺禁止債権
不法行為により生じた債権を受動債権とする相殺と、差押禁止債権を受動債権とする相殺が禁止されています。(民法509条、510条)
これらの受動債権を相殺により消滅させないで、現実に履行させるためです。

4.差押えと相殺
例えば、B銀行がAに預金を担保に融資をした場合で、Aの債権者Bがその預金を差押をしても、銀行は自動債権(貸付債権)と受動債権(Aの預金)を相殺できるいうのが判例です。
受動債権の差押前に、債務者が債権者に反対債権を有していれば、自動債権の弁済期が未到来でも相殺できます。

相殺は破産法やその他の分野でも重要な問題ですので、ここで事前に検討をしてみました。

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相続11(遺産分割)

2008-08-14 08:22:27 | 相続税・贈与税
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は相続の第11回目で、遺産分割について検討してみました。

1.遺産分割の意義
遺産分割は、遺言や民法の規定により確定した相続分(割合)に応じて、相続人間で共有となっている被相続人の相続財産を具体的に各相続人に確定させる作業です。

2.遺産分割の禁止
被相続人は、遺言で、相続開始の日から5年を超えない期間、遺産の分割を禁止することができます。(民法906条)
家庭裁判所や相続人の合意による遺産の分割禁止もできます。(民法907条3項、民法256条)

3.相続分の譲渡と取戻
共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができることとされています。ただし、その取戻権は、1月以内に行使しなければなりません。(民法905条)

4.遺産分割協議の無効
遺産分割協議で、相続人が全員参加していないとき、例えば被相続人の非嫡出子が遺産分割協議に参加していなければ、その分割協議は無効です。
ただし、相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払いの請求権を有するだけです。(民法910条)

4.遺産分割の法定解除
遺産分割協議の法定解除はできないこととされています。法的安定性が害されることがその主な理由です。しかし、判例では遺産分割協議の合意解除は可能ということです。

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共有3(費用の負担、持ち分の放棄他)

2008-08-13 08:24:09 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は共有の第3回目で、共有物に関する負担などを確認してみます。

1.共有物に関する負担
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負います。
共有者が1年以内にその負担の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができます。(民法253条)

2.共有物についての債権
共有者の1人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができます。(民法254条)
たとえば、他の共有者の管理費用を立て替えていた共有者は、その他の共有者の持分の譲受人に対してもその立替金の請求ができます。

3.持ち分の放棄及び共有者の死亡
共有者の1人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属することとなります。(民法255条)

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共有2(共有物の分割)

2008-08-12 08:21:58 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は共有の2回目で、共有物の分割です。
共有という状態はわが民法においては特殊な状態であり、できれば本来の一物一権主義の単独所有の形態にしたいと思っているようで、共有物の分割の規定をしています。

1.共有物の分割

(1)共有物の分割請求
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約ができます。不分割の契約は更新ができますが、これも更新時から5年を超えることができません。(民法256条)

(2)裁判による共有物の分割
共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所へ請求することになります。(民法258条)

2.共有物の分割への参加
共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができます。そして、その参加請求があったにもかかわらず、その請求をした者を参加させないで分割をしたときは、その分割は、その請求をした者に対抗することができないこととされています。(民法260条)

3.分割における共有者の担保責任
各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負うこととされています。(民法261条)
担保責任の内容は、損害賠償や減額請求のほか、契約解除です。ただし、裁判による分割の解除はできないこととされています。

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共有1(持分と共有物全体の処分等)

2008-08-11 08:37:26 | 税金一般
おはようがおざいます。税理士の倉垣です。

相続が発生した場合で、相続財産である土地などを複数の相続人で取得するときには、その土地の相続人による共有関係が生ずることがあります。
共有は、一つの物に対して複数の者による共同所有の形態です。
共有は一つの物について物件は一つしかないという「一物一権主義」の例外ですが、それぞれの共有者の持分レベルでは一つの持分の上に一つの物件が成立していて、まさに「一物一権主義」そのものともいえます。

1.共有持分の処分
共有持分(共有物全体ではなく、共有者の持分)は、全く自由に行うことができます。

2.共有物全体の処分等
(1)変更
共有物全体の変更には、その物全部の処分(売却など)も含みます。
変更をするには、共有者全員の合意に基づく必要があります。(民法251条)
(2)管理
共有物を賃貸するなどの管理をするには、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決することとされています。(民法252条本文)
賃貸借契約の解除は管理行為とされていますが、共有物の売買契約の解除は解除権の不可分性により共有者の全員から行う必要があります。(民法544条)
(3)保存
保存行為は、各共有者が単独ですることができます。(民法252条但書)
保存行為の例としては、共有土地の不法占拠者に対する明渡し請求などです。

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破産法12(別徐権)

2008-08-08 08:34:17 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

もうブログで、破産法を取り上げて今回で12回目です。
最初はこんなに長くかかるとは思いませんでしたが、いざとりかかってみると簡単な概要だけですけど大変なものをやり始めたなと思い始めました。今回の別徐権を含め、最後の山場があと数件残っています。否認権、相殺権、破産者の免除・復権などです。
破産法は法律のるつぼといわれているようですが、その意味がよく分かりました。
実体法としては民法の債権編や担保物件、手続法としては民事訴訟法、民事執行法、民事保全法などと関連しているためそれらの法律の知識が必要なこと。
破産法は、実体法である民法などで発生した債権が、債務者の破産により最終的にどうなるのかということを取り扱っていて、これを勉強することにより、債権関係の全生涯が見えてきますね。

1.別徐権
別徐権とは、債権者が債務者に対する債権に、抵当権などの担保物権を設定している場合に、その債務者が破産したとき、その担保物権を設定している特定の財産からは破産手続きによらず、民事執行法の競売などにより他の債権者に優先して自分の債権の弁済を受けられる権利をいいます。
これは、破産法で特別に設けられた権利ではなく、民法の担保物権として当然持っている権利内容です。

2.担保物権の消滅請求制度
破産手続きを行う上で、担保物権の対象となる破産財団の財産が任意売却の方が有利であるならば、原則として、担保物権を設定している債権者との協議により、その担保が設定されている財産を任意売却し、その財産に設定されていた担保を全部消滅させることができる制度もあります。
この場合、担保権者との協議がととのわない場合には、担保権者から本来の競売申立てが行われることになります。
担保権者が、一定の条件のもと、自ら購入者となることも認められています。

この、担保物権の消滅請求制度は複雑な手続きですので、また機会がありましたら整理をして詳細をご説明しようと思っています。

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抵当権1(抵当権の効力の及ぶ範囲)

2008-08-07 08:28:29 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

抵当権は、使用収益を伴わない担保物権です。
債権者は、債務者の債務不履行の場合に、抵当権の設定された不動産などの売却代金から優先的に債権の回収を図ることができます。
今日は抵当権の効力の及ぶ範囲を確認してみました。

1.抵当権の効力の及ぶ範囲

「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下、「抵当不動産」という)に付加して一体となっているものに及ぶ。」(民法370条)

イ、付合物
不動産の所有者が、その不動産に従として付合した物を付合物といいます。
建具や建物の増築部分などです。
付合物には付合の時期を問わず、抵当権の効力が及びます。
ロ、従物
物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに付属させたときは、その付属させたものが従物とされます。(民法87条)
従物は付合物と異なり、付属された物の独立性がまだ残っています。
従物は、抵当権設定時のものには抵当権の効力が及び、その後のものには抵当権の効力が及ばないこととされています。

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破産法11(取戻権)

2008-08-06 08:27:10 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は破産法の11回目で、取戻権を取り上げてみました。
破産手続きが開始されると、その開始時の破産者の財産は、破産財団とされ破産管財人の管理下におかれ破産手続きを通して換価、破産債権者ヘ配当されます。
もし、それらの財産の中に例えば他の第三者の所有物であって破産手続きで配当してはならないものがある場合には、その第三者に自己の所有物などを破産財団から取戻す権利が認められています。これを取戻権といいますが、一般の取戻権と破産法の認める特別の取戻権の2つがあります。

1.一般の取戻権
「破産手続きの開始は、破産者に属しない財産を破産財団から取り戻す権利に影響を及ぼさない。(破産法62条)」とされています。
これは実体法上の権利に基づき、破産手続きによらず、特定の財産を財団から取り戻すことを確認した規定です。

実体法上の一般の取戻権の基礎となる権利
イ、物権
所有権、地上権、質権などです。
ただし、対抗要件(登記など)を具備する必要があります。

ロ、債権的請求権
賃貸借契約終了を理由とする、破産者である賃借人に対する賃貸人の目的物返還請求権などです。

2.特別の取戻権
(1)運送中の物品の売主等の取戻権
これは売主が買主に物品を発送し、買主が代金を完済する前、かつ、物品を受取る前に破産した場合に、売主にその物品を取り戻す権利を破産法が特別に認めたものです。(破産法63条)
しかし、この規定は現在は他の制度を利用するなどによりあまり利用されていないようです。

(2)代償的取戻権
「破産者が破産手続開始前に取戻権の目的である財産を譲り渡した場合には、その財産について取戻権を有する者は、反対給付の請求権の移転を請求することができる。破産管財人が取戻権の目的である財産を譲り渡した場合も、同様とする。(破産法64条)」
破産者や破産管財人による取戻権の対象となる財産の譲渡が行われたときは、その取戻権者からのその代金請求権の移転請求を認めたものです。もしその財産の譲渡による反対給付を受け取っている場合には特定性を失っていないかどうかやそれが破産手続き開始前か後かなどにより取り扱いが異なります。

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破産法10(財団債権)

2008-08-05 08:34:13 | 税金一般
おはようございます。税理士の倉垣です。

今日は破産法の10回目で財団債権をまとめてみました。
破産法も9回目からずいぶん時間がたちましたが、あと内容的にはもう少し残っていますので頑張って完結させたいと思っています。

財団債権は、破産手続きによらず、破産財団から、破産債権に先立って弁済を受けることができます。

1.財団債権とは
財産債権とは、破産手続きによらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権をいう。(破産法2条7号)

2.財団債権の範囲
(1)財団債権となる請求権(破産法148条)
次に掲げる請求権は、財団債権とされる。
イ、破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権
ロ、破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権
ハ、破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税等の請求権であって、破産手続開始当時、まだ納期限の到来していないもの又は納期限から1年を経過していないもの
ニ、破産財団に関し破産管財人がした行為によって生じた請求権
ホ、事務管理又は不当利得により破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権
ヘ、委任の終了又は代理権の消滅の後、窮迫の事情があるためにした行為によって破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権
ト、破産管財人が未履行の双務契約の履行をする場合において相手方が有する請求権
チ、破産手続の開始によって双務契約の解約の申入れがあった場合において破産手続開始後その契約の終了に至るまでの間に生じた請求権

(2)使用人の給料等(破産法149条)
イ、破産手続開始前3月間の破産者の使用人の給料の請求権は、財団債権とされます。
ロ、破産手続の終了前に退職した破産者の使用人の退職手当の請求権は、退職前3月間の給料の総額に相当する額が財団債権とされます。

3.財団債権の弁済
上記1のように、財団債権は、破産手続きによらず「随時」に破産財団から「弁済」を受けることができます。
破産債権のうち最も優先順位の高い「優先的破産債権」よりも先立って弁済を受けることができます。

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