KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

富士山・お中道敗退、主杖流しルート

2013年06月23日 | その他の山登り

2013年6月22日(土)~23日(日) 単独

 さて、今週は夏のプチ遠征に向け、富士山で高所トレ。
 山頂で一泊がメインの目的だが、今の時期、五合目から一般登山道をちゃっちゃと登るだけでは芸が無い。
 というわけで、「お中道」をプラス。
 お中道は富士山の五合目付近(標高2,400~2,600m)を繋ぐ昔の修験道で、西側の大沢崩れが難所になっているが、近年はコアな富士山ファンによって結構トレースされているようだ。

 計画では、一日目に富士宮口からお中道を時計回りにグルリと回って吉田口まで行き、そこから登って山頂泊。
 二日目はそのまま吉田口を下り、残りのお中道を伝って富士宮口へ・・・という筈だったのだが。

一日目 
天候:のち
行程:富士宮口五合目8:55-大沢崩れ左岸迷走12:55~15:20-主杖流し3,600m17:20付近(テン泊)

 前夜、台風通過後の雨が残り、ちょっと心配だったが、翌早朝、自宅の窓から見てみると快晴で富士山の上部は真っ白!
 やったね!どうせなら少し雪があった方が面白い。
 急いで東名高速に乗り、御殿場経由で富士宮口五合目へ。

 富士山の山開きはご存知7/1~8/31だが、そんなの待ち切れないフライングゲット組(?)で駐車場はほぼ満車状態。
 何とか空いているスペースに停める。
 出発前にメールチェックすると、例年この時期富士山トレをしているJuqcho氏から「今回は見送り」との連絡あり。
 どうも事前の天気予報に翻弄されたようだが、まぁ残念である。

 いつものように今回も細かい情報収集は間に合わず、持ってきたのもちょうど20年前の昭文社のエアリアマップのみだが、とりあえず富士宮口の六合目からお中道に入ることは確認していた。

 
出発                                  六合目上は建前ではまだ禁止。

 山開き前、良い子の皆さんはまだ登っては行けませんとの警告と共に通路は塞がれている が、皆さん、かつての「小島よしお」のように「そんなの関係ねーっ!」と構わず突破!

 この辺り、お中道を東側の宝永山へ向かう標識はあるものの、西側へ向かう表示は一切無し。
 小屋へ上がる手前、西へ延びるブル道があったので、そこに見当をつけ、立入禁止を無視して入ってみる。

 しばらく九十九折で登り、二俣となっている所をさらに左(西)へ。
 どうやら、お中道に入ったようで火山砂礫の中に細い踏跡、そしてところどころ岩に白ペンキで目印がしてある。

  途中、こんな表示もあり。

  

 白く固まった溶岩流の沢を横断し、さらにシャクナゲのヤブ漕ぎなども強いられつつ、ようやく難所の大沢崩れへ。
 結構時間がかかってしまったが、ここまでほぼ順調。しかし、ここから迷走タイムに入ってしまう。

 ところどころ確認できた岩の白ペンキはここでフッと消えてしまう。他に目印も無い。
 初めて見る大沢崩れは思いのほか大きなスケールでエグレていて、多少バリエーション・ルートの心得があっても、どこでも適当に渡れるものではない。

  
 大沢崩れ。スケールが伝わらないが、かなり大きな壁になっている。

 とりあえず顕著な大岩の基部から大沢崩れの左岸沿いに急で細い踏跡があるので、そこをどんどん下ってみる。
 しかし、かなり下っても横断箇所が見当たらない。プロトレックの高度計では既に2,400mを下回っている。
 手持ちの古いエアリアマップと照合し、これはちょっと下り過ぎではないかと思い、引き返すことにした。 (帰宅後ネットで確認したら、もっと下っていくと工事運搬用のレールがあって、こちらが正解らしい。)
 
 結局、先ほどの大岩の所まで登り返す。
 最後に確認した白ペンキ付近をあれこれ見て回ると、さらに上部に白ペンキの矢印を発見!

 

 それにしたがい登り易い所を繋げていくが、やはりしばらく行くと手詰まり状態。
 このまま大沢崩れのトラバース・ポイントを探しても時間を浪費するばかり。大幅に予定時間を過ぎてしまった今となっては、今日中に吉田口まで回って頂上泊なんてとても無理だ。
 もう面倒くさいので、このまま上を目指すことにする。
 
 とりあえず高度差200mぐらいを一気に直登する。
 この辺り、赤褐色のザレた斜面がほとんどだが、白く溶岩が固まった部分が傾斜の緩いスラブとなっており、そこが自然の登路となっている。
 夕方近くになると、次第に雲が多くなり、この広大な斜面ではリングワンデリングとなりそうなので、白い岩の部分を繋ぎながら徐々に東側へトラバース。
 自分の現在位置を確認するため、富士宮口の登山道が確認できる辺りまで軌道修正しながら登っていく。

 時間も押し迫り、風も少し吹いてきた。寒い!
 富士山は上を目指す限り、道に迷うことはないはずだが、さすがに回りに人も人工物も一切見えないこの斜面を一人で徘徊していると少し不安になってくる。

 白い岩の部分は岩も固く表面がガリガリしているのでフリクションが利き一気に高度が稼げるが、白い岩が途切れた部分は赤いザレで、ほんの数メートルでもまるでアリ地獄のようにズルズルと足を取られて思うように進めない。
 できれば頂上まで辿り着きたかったが、両足が交互に攣り出し、半畳ほどの平坦な場所を見つけた時点で心が折れた。

 標高3,600mほどの地点に「ライズ1」を何とか張る。
 斜めに傾いて何とも不安定だが、風に吹き飛ばされないよう張り綱だけは4点とも大きめの火山岩を使ってしっかり固定した。

 

 夜は薄曇りで、下界の夜景は見えるものの期待していた星空はまったくダメだった。
 星空の写真を撮りたくてわざわざミラーレス一眼も持ってきたのに、ちょっと残念。
 簡単に夕食を済ませ、傾いた斜面からズリ落ちないよう体勢を整えながら眠りにつく。 
 

二日目 
天候:のち
行程:出発5:35-剣が峰6:05~35-お鉢巡り-富士宮口山頂8:30~9:00-富士宮五合目11:45

 朝4時頃、いきなり落石がバスッ!とテントを叩き、目が覚める。 
 テントを確認すると本体は無事、代わりにダイニーマの張り綱が半分切れていた。
 この辺り、比較的岩が安定していると思ったが、よく見ると頭大の火山岩が何とも不安定なバランスで乗っかっているだけ。
 夜から朝にかけて多少風が吹いたが、それでも冬や春先に較べればまったく穏やかで助かった。
 ここしかなかったので仕方なく一夜を過ごしたが、もっと風が強い時期だとテントごと吹っ飛ばされていたかもしれない。 

 朝食は「マルちゃん正麺」。トットと食べてサッサと撤収。

 昨日に引き続き、白い岩の部分を繋ぎながら右斜上していく。
 右側の小尾根を回り込んでふと上を見ると、思いのほか近い所に剣が峰の測候所跡が見えた。視界右側には手すりの部分を行き来する登山者の姿も見える。
 
 
 
 今朝出発してから30分ほどで頂上着。ホッとした。

 

 あと一週間で山開きだが、頂上付近はまだかなり雪に覆われていた。
 それでも表面上だけなので、慣れた人ならアイゼンはいらないぐらいだ。
 もう10回以上は登っているので改めて感動することはないが、やはり日本の最高地点は気持ちがいい。
 ただ、あまり長くいると次から次へと「シャッター押して」と頼まれるので、ちょっとウンザリ。
 あんたら、一人に頼まずに自分が撮ってもらったら次の人を撮ってあげなさいよ。

 頂上からの景色を十分堪能した後、時計回りにお鉢巡り。
 剣が峰直下の部分だけやや雪が厚く、慎重に通過したが、結局持ってきたアイゼンは一度も使うことがなかった。

 トレランで上がってきた人もいて、いろいろ話をしたが、それでも今回見かけた中で最強だったのはこちら。

  進化する山ガール!この格好でキターッ

 ・・・と思ったら実はコスプレ男子。いや、参りましたっ!

 この日、富士山が世界文化遺産に正式登録されたのは下山後に知ったのだが、Mt.フジに来たガイジンさんにしてみれば彼こそが"カルチュラル・ヘリテイジ"だろう。

 下りは富士宮口をのんびり下る。
 山開き前だが吉田口も富士宮口も多くの登山者で賑わい、頂上付近では報道ヘリが旋回していた。

 天気がもてば最後に宝永山でも寄っていくかと思ったが、3,000mから下は厚い雲海の中。また天気の良い日に改めて行くことにした。

 昼前には五合目に下山し、帰りは富士霊園で墓参り、締めはいつもの御殿場市温泉会館へ。

 

  ←イメージはこちら。click
 もちろん混浴ではないので悪しからず。料金高めの富士・箱根周辺の日帰り温泉にあって3時間500円はリーズナブル。

 
 で、後で調べてみると、どうやら今回最後に登ったのは「主杖流し」(20年前のエアリアマップでは「執杖流し」と表記)というルートで、富士山のバリエーション・ルートとしては結構登られているようだ。
 小屋も標識も一切無いのでもちろん慣れた人向きだが、自然にかなった登路で一気に頂上に導いてくれる。
 お中道はまた気が向いたら行くことにして、富士山西面はあまり人が行かないだけにまだまだ面白そうな所がありそうだ。


富士山
・写真集(2013年6月)



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ぴょん太郎)
2013-06-28 13:34:06
現場監督さんこんにちは。
おおっ!!凄い!!富士山バリエーションルートですね。僕も以前からすごく気になっていたルートです。いつかはやってみたいと思っていました。
ところで、
ルート上には、人が全くいないような感じでしたが、やはり現場監督さんたったお一人だけでしたか!?技術的にはどの位の難易度ですか!?浮き石だらけでしたか!?

すみません、凄い興味があり色々とご質問してしまいましたm(_ _)m
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主杖流しについて (現場監督)
2013-06-28 18:10:51
 ぴょんさん、どーも!
 たしかにこの日はお中道も主杖流しも自分以外、まったく誰もいませんでした。
 でも、ネットで検索するとけっこう人は入っているようです。
 技術的な困難は特に無いです。強いてあげるならガスった時でも冷静に登り切る判断力と体力でしょうか。
 白い岩の部分はフリクションばっちりで九十九折りにもなっていないので、かえって一般登山道より短時間に登れます。ただ、赤いザレの部分はたった5mの距離でも蟻地獄です!
 文化遺産になったことで、今後富士山はいろいろ規制がかかりそうですが、ぴょんさんらしい変わったチャレンジをぜひ見せてください。
 私もこれまでMTB、ショートスキー、登山競走、冬季単独、1歳9か月の娘を背負って・・・などいろいろやってきましたが、できたら「海抜0から冬季単独」なんてのをやってみたいですね。(←妄想?)
 
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