Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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何もしなくていい時間

2005-11-22 04:41:32 | 中東
ドバイ最後の夜、なんだか中華料理が食べたくなって、ホテルから通りにでた。

以前もいったことのあるその店までは、キング・ファイサ・ロードという大通りを歩いて10分とかからない。この通りにはやたら家具屋が多く、次から次へとベッドやソファー、箪笥などを売る店が並んでいる。

店の前には決まったように椅子やソファーが置かれ、そこに腰掛けた男達が何をするわけでもなく、ただ通りを眺めている。それぞれの店先がみなそういう具合なので、歩道にはそんな男達の姿がずらりと並んだようになって、見慣れていないとちょっと異様な感じを受けるほどだ。

「なにか楽しいんだろうか?」

そんな男達の前を横切りながら、ふと思った。

彼らは、ただ腰掛けて通りを眺めているだけだ。食事をしたりチェスをしたりするわけでもない。ときおり仲間と言葉を交わす以外は、まったく何もせずにぼんやりしている。

しなくてはならないことや、特にすることもないのだろう。夜になるとこうして数時間をすごし、そして寝床にはいる。。。おそらくそんな日常の繰り返しなのだと思う。

「時間を無駄にしているなあ。。。」

特に楽しそうにも見えない彼らの姿をみながら、僕は一瞬こう思った。
しかし、その直後に、そんな感情を否定するかのように、自分の暮らしのことや、せわしく働く日本人のことが頭をよぎった。

大の男達がなにもせずにぼけっとしているようなこんな風景は、さすがに日本ではなかなかお目にかかれない。
しかし、彼らが本当に時間を無駄にしているなどということができるだろうか。

あくせく働き、自分を顧みる時間さえ奪われてしまった人間達に比べ、実は彼らのほうがゆったりと贅沢な時間を過ごしている。。。そんな風にも考えられなくはないではないか。

「何もしなくていい時間」。。。僕らが忘れてしまったようなそんな時間の過ごし方に、なんだか魅力さえも感じられてきた。




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3 コメント

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Unknown (yana)
2005-11-22 10:36:49
こんにちは。

毎回高橋さんのブログを読んでいると、その場所の喧騒や空気が私にも感じられてうれしいです。

「何もしなくていい時間」。確かに日本人にはあまりなじみの無い時間です。以前南アフリカのMさんにも言われました。

「南アの人たちの楽しみは、友達や恋人とその辺で安いワインを飲みながらとりとめも無い話をすること。それが何よりも贅沢なのよ。」と。



日本人にはなかなか出来ないけれど、そんなココロの余裕がある人になりたいです。



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それが日常で (kiyo)
2005-11-22 12:15:01
当の本人たちには、のんびりしているという自覚さえないのでしょうね。色々な国へ行って文化の違いを体感できて、貴重なことですね。私たちにも伝えてくれて、ありがたいです。外交をするときに相手国の文化(考え方)を熟知しないと、誤解されて大変なことになるものだ、と思う今日このごろ。

ところで、女の人たちは何をしているのかしらね?

kuniものんびりとお過ごしください。まずはゆーっくり歩いてみたらいかが? 
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時間・・・ (maki)
2005-11-23 12:57:47
「何もしなくていい時間」。大切だとは思いながらも、今もご飯を食べながら、メールをチェックしながら、猫のマッサージをしながら、ブログにコメントを書いている・・・いつから、何もしていないとguiltyな気持ちになってしまうようになったんだろう。
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