Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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モガディシュの精神病院

2007-11-03 20:09:16 | アフリカ
モガディシュに滞在中、街にある唯一の精神病院を訪れた。

2005年に院長のハベブ氏によってつくられたこのハベブ・メンタル・ホスピタルには現在50人弱の患者が入院している。

精神安定剤の多用によるものだろう、ほとんどの患者達はうつろな眼で宙をみつめているか、ベッドに横たわり眠っていた。驚いたことに、なかには足を鎖でつながれた患者たちもいる。病院のスタッフが言うに、乱暴な患者に対するやむを得ない措置だという。

ハベブ氏は、精神病に対する3ヶ月ほどのトレーニングを受けただけで、実は正規の医者ではない。それでもこの病院を頼って開院以来2000人以上の患者がこの病院を訪れている。

いまだに精神障害が悪霊の仕業だと信じる人々が少なくないこのような土地では、悪霊をとり払おうと、患者に肉体的暴力を加えたり、食事を与えず飢えさせたり、また、ハイエナと同じ部屋に精神病者を閉じ込めたりすることさえもあるという。

このような、「理解しがたい」精神病に対処することができず、手に負えなくなった家族たちが、患者をハベブ氏のもとに連れてくるのだ。

まともに会話のできない患者達から、一体彼らがどんな理由で精神に異常をきたすようになったかを聞き出すのは不可能だった。それでも、この国で長年続いている内戦の影響は無視できないだろう。

家を焼かれ、家族を殺されたトラウマから抜け出せずに生きる人々は数知れない。

「症状が良くなって退院しても、戦争でまた病んでしまう。。。この繰り返しです。この国では患者の心が癒されることはありません!」

いつになっても戦いの終わることのないこの国の状況に苛立ちながら、叫ぶようにハベブ氏は声を張り上げた。