Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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不平等な命の重さ

2005-10-11 09:10:19 | 報道写真考・たわ言
土曜日におこったカシミールでの地震の犠牲者が2万から3万になりそうだといわれている。

石油問題のプロジェクトが始まっていなかったら、取材にいかせてもらえるようすぐに名乗りをあげていたところだが、実際に取材が会社から認めらていたかどうかははなはだ疑問だ。現実にいまのところトリビューンからフォトグラファーは誰もこの地震取材に派遣されていない。年末も近くなり、財政状況が厳しくなっているために、ニュースに限らずスポーツや文芸などすべての部署で出張取材が切り詰められているのも大きな理由だが、それだけではない。

この地震が、ロンドンやパリ、東京などの先進国首都でおこり、そこでこれだけの犠牲者がでていたとしたらどうだったろう?

間違いなく1人ないし2人のフォトグラファーがシカゴから現地に送られていたと思う。財政云々いっている場合ではない。まさしくそれは大事件だからだ。

ほぼ毎年のように何処かの「後進国」とよばれる国で大天災により何千、万という人間が命を落としている。しかしそれは同規模の災害が「先進国」でおこった場合ほどの大ニュースにはならない。

ここに見えてくるのは、「後進国」の人間の命の重さは「先進国」のそれより軽視されている、ということだ。少なくともアメリカのメディアをみればそれは明らかだし、ここトリビューンのニュース・ルームでも、地震のことよりも、プレイオフを順調に勝ち進んでいるホワイト・ソックスのほうが話題になっているようだ。

しかし、こんなことを書いている自分も、悲しいかな例外ではないのだ。もし、この大地震がパリや東京などでおこっていたら、石油問題のプロジェクトを後回しにしても取材に行かせてくれと上司に頼み込んでいただろうと思う。第一報を聞いて「また地震か。。。」程度にしか考えなかった僕は、取材に行くため上司を説得する努力さえもせずに、自分のプロジェクトを優先させたのだから。。。