吾輩は『ちょび』助である。
この家の守護神として、日夜努力している『ちょび』助である。
それは一昨日のことだった。
「兄貴、歯医者さんに行っている間、駐車場貸してね」
玄関のドアが開く音と共に、そんな声が聞こえてきた。
この声には聞き覚えがある。
自称・飼い主の弟の声だ。
普段は娘を連れてくるので、吾輩や『まこ』オバサンのいる所にはやってこない。
吾輩たちが幼い子供の嫌がることをしたり、脅したりするとでも思っているのだろうか?
嗚呼、昔・・・『まこ』オバサンが嬉しさ余って何度も飛びつき、娘の足を引っ掻いて泣かせたことがあったな。
だから、我が家に来ても吾輩たちの側には来ない訳か・・・何だ。
全部、『まこ』オバサンが悪いんぢゃないか。
吾輩は何も悪くない。
まぁ、吾輩なら喜びを全身で表現して、相手が幼い子供であろうと、全速力で体当たりしてやるが・・・な。
それくらいのことに耐えなければ、吾輩とは遊べないゾ♪
どうせ、無駄だろう。と、思いながらも、吾輩とオバサンは「遊ぼうよぉ。ネェ、遊ぼうよぉ」と、暫く吠えていた。
すると、弟が階段を上がってくる音がする。
うん!?
その日は、歯医者さんに行く途中に家に寄っただけだったので、娘は連れていなかった。
吾輩たちの所まで挨拶に来た様子だ。
なかなか良い心がけである。見直したゾ。
いつもは二階へ上がってこないので、奴の弟の声はよく聞くが、実際に顔を合わすのは本当に久しぶり、今年初めてのことではないか?
「早く来て♪一緒に遊ぼうよぉ」
尻尾を振り振り、吾輩が出迎えると・・・。
現れたのは、写真のヲトコ・・・。
ふぎゃぁぁぁ!!!
吾輩・・・奴の弟の顔をすっかり忘れていたヨ。
この顔は『をんでっど』である。
完全に不審人物である。
顔からして怪しさと恐ろしさを滲み出している。
特に問題なのは、自称・飼い主そっくりの髪型である。
「ヲイ!自称・飼い主!!
このヲトコは怪しい!!
顔だけで十分に不審人物だ!気を付けろ!!」
吾輩、そのヲトコに向かって激しく吠え立てた。
それが功を奏したのか、ヲトコは顔だけ出すと直ぐに家を出て行った。
うん。
吾輩が不審人物を追い払って遣ったゾ! 自称・飼い主。
だが、油断は禁物。
何時、先程のヲトコが戻ってくるか分からない。
吾輩、ヤツを威嚇する意味でも何時までも吠え立てて「吾輩がこの家を守っている限り、決してお前のような不審人物の好きにはさせない」と延々と吠え続けた。
すると、誰かが二階へ上がってきた。
激しい怒りを含んだ、けたたましい足音である。
「何ヤツか!」
吾輩は一層、吠えて周囲の者たちに注意と用心を促したら・・・遣って来たのは自称・飼い主だった。
先程の不審人物と同じ髪型の(爆)。
「五月蠅すぎるだろう。バカ犬」
と、自称・飼い主は吾輩を激しく叱りつけてくる。
「何故だ! 何故、吾輩を叱る!
吾輩は、この家の家長として家とお前を不審人物から守る為に吠えていたのだゾ」
ペしっ!
口答えをしたらヤツの平手が飛んできた。
嗚呼。
漸く、吾輩・・・思い出した。
さっきの奴は、自称・飼い主の弟だった。
あまりに強烈な顔を直視してしまったが為に、つい吾輩・・・弟さんのことが頭から吹っ飛んで、不審人物としか思いつかなかった(爆)。
うん。
意外と吾輩もお茶目な所があるな♪
我ながら。