歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

麦秋

2010-06-14 01:57:40 | 自然
 土曜日、子どもたちと一緒に恒例の谷戸の田畑で農作業。今回は小麦の収穫でした。今ではほとんど見られませんが、かつて鎌倉ではあちこちで小麦を栽培しており、映画「麦秋」は小津安二郎監督が鎌倉近辺の麦畑の風景を眺めてインスピレーションを得たのだとか。



 収穫できた小麦はほんのわずかの量ですが、粉を挽いて何を作りましょうかね。

ブラジル・ベロオリゾンテの銑鉄工場

2010-06-10 00:20:18 | 海外ものづくり事情
 日頃の行いがよいのかどうかはわかりませんが、運良く再びブラジル出張付きのお仕事をいただくことができました。今年の夏、1週間程度の日程でサンパウロと南部のサンタカタリーナ州、リオグランデドスル州を訪れる予定で、私にとって2004年、2006年と今回で3度目のブラジル出張になります。ブラジルのものづくりの現場についてはこれまで何回かこのブログで紹介しましたが、これからも情報があまり得られないこの国の魅力などを紹介できればと思います。

 そういえば2004年の初めてのブラジル出張のことをまだこのブログで書いてなかったので、紹介しておこうと思います。初のブラジル出張は、鋳物用銑鉄の生産と販売の状況について調べるという、かなりマニアックな調査を目的としたもので、サンパウロとミナスジェライス州のベロオリゾンテという町を訪れました。
 ミナスジェライス州は鉄鉱石を豊富に産出する地方であり、新日鉄の技術協力で建設されたウジミナス製鉄所をはじめ鉄鋼産業が集積しています。ブラジルの鉄鋼産業で特徴的なのは、鉄鉱石の還元をコークスではなく木炭を用いている企業が多いことです。ブラジルは豊富な鉄鉱石に恵まれている国ですが、石炭は低品質なものが少量しか採れません。一方、森林資源は豊富ですし、熱帯多雨の気候の地方ではユーカリなどを植えればすぐに成長します。このため、木炭はブラジルの中小鉄鋼メーカーに重宝されているのです。

 こちらはベロオリゾンテ郊外の森の中にある銑鉄工場です。


 工場の前景です。


 回転する型に溶解した銑鉄が流し込まれていきます。


 横から見たところ。


 ちょっと上から見たところ。


 出来上がった銑鉄のインゴットです。


 最後に銑鉄工場の皆さんと一緒に記念撮影。とてもフレンドリーな人達でした。相手がポルトガル語がわからない外国人だろうとお構いなしに、とにかく人を楽しませようとするブラジル人たちのホスピタリティは世界に冠たるものがあります。初めてのブラジル訪問で私が実感したのは、ブラジルの最大の魅力はブラジル人だ、ということです。

水樹奈々の演歌にハマる

2010-06-09 00:27:08 | Weblog
 年度末の繁忙期、危うく心が折れそうな日々をなんとか切り抜けることができたのは、水樹奈々の歌に支えられたから、と言っても過言ではないような気がします。
 昨年末、アニメ声優として史上初の紅白歌合戦に出場したことで一般人の間でも知名度が上昇した彼女ですが、私もそれまで名前を全く知りませんでした。ちなみに紅白歌合戦は観てないので、彼女がどんな歌手であるかその時点ではわからず。
 その後、彼女がアニメ「ハートキャッチプリキュア!」(これは前作の「フレッシュ~」よりも面白いです)の主役の声を当てるという報道に接し、俄然興味を抱いて彼女の歌をYouTubeで幾つか聴いてみたところ、ちょっとした衝撃を受けました。元々彼女は幼少期から演歌歌手を目指していただけに歌唱力は抜群ですし、声優ですから高い表現力を持っています。ミュージシャンのサエキけんぞう氏がコラムで「ひょっとすると史上最強のアイドルなのかもしれない」と絶賛していましたが(こちら)、全く同感です。歌手としても活動している他の声優アイドルとは格が違うように感じます。

 特に私がハマったのが、彼女が歌う坂本冬美の「夜桜お七」です(彼女自身、坂本冬実の大ファンとのこと)。演歌などまともに聴いたことなどなかった私ですが、これにはやられました。


 「八百屋お七」の物語をモチーフとしたこの曲の世界を彼女は見事に歌い切っています。私には坂本冬実のオリジナルを超えているようにしか思えません。彼女が歌うアニソンも実に良いのですが、もっと演歌も歌ってもらいたいように思います。

週末は谷戸で

2010-06-06 20:28:35 | 自然
 この週末は近所の谷戸で楽しんできました。


 田植えを少し手伝いがてら、里山の草刈りをやりました。学生時代のクラブ活動での藪こぎを思い出し、ついつい夢中になってしまいます。


 谷戸の桑の樹にはたくさんの実がなっていました。来週になると終わりかもしれませんね。

衝撃的な"New Google Phone" (ただしソースはOnion News)

2010-06-04 22:48:57 | IT,インターネット
 Onion Newsは相変わらずやってくれますね。




 Googleは最新の検索テクノロジーを駆使し、会話の音声を聴き取り最適な広告を音声で挿入するシステムを備えた新しいGoogle Phoneを開発した、という嘘ニュースです。会話が成り立たないぞ(笑)。さらに着信音ではCMソングが流れ、Google Mapで最短ルートを検索するとルート上の店舗の広告が表示され、写真を表示すると写真に沿った広告が表示されるという徹底ぶり。広告を挿入することで通話料金は劇的に安くなりそうですが、こんな携帯電話は使いたくないですねー。
 しかしGoogleだったらこれぐらいやりかねないぞ、とも思ってしまいます。嘘ニュースでもここまで凝ったものを作るOnion News、さすがです。

留学生の起業を支援すべきでは

2010-06-04 22:01:10 | ニュース・雑感
 1990年代後半、ITの普及と発展を背景に様々なベンチャー企業が登場し、世の中を賑わせた時代がありました。当時は行政や金融機関も競ってベンチャー企業を支援していましたから、あの頃はベンチャーブームでありかつ「ベンチャー支援バブル」の時代であったように思います。こうした中、自らも起業家になることを目指す若者も増え、学校を卒業したら どこかの会社に就職する、という今まで当たり前のように考えられていたキャリアルートが決して当たり前ではなく、卒業後または在学中に起業するのも選択肢の一つと考えられるようになりました。
 しかしITバブルはあっけなく崩壊し、多くのITベンチャーは姿を消してしまいます。また社会のルールを逸脱したベンチャー企業が世間を騒がしたこともあって、起業を評価する風潮も大きくトーンダウンしてしまいます。さらに長引く不況に伴う求人市場の悪化は、若者の保守化傾向もあって「会社への就職が厳しいのであれば自ら起業しよう」という方向には作用せず、却って若者たちの起業に対する意欲は低下しています。

(以下引用)
 会社を立ち上げて経営者になる起業家志向が低下していることが、野村総合研究所の調査でわかった。世代別では10代の起業家志向が最も低かった。仕事をしている人の約6割が「転職は考えていない」と答えるなど、景気低迷のなか安定志向が強まっている。
 調査は価値観や消費スタイルの変化などを探るために15~69歳の約1万人を対象にアンケートを行い、昨年末にまとめた。1997年から3年ごとに実施し、5回目。
 「一流企業に勤めるよりも、自分で事業をおこしたいか」との質問に対し、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた人は計35%にとどまり、97年の49%から14ポイント低下。調査開始以降、低下が続く。2009年を世代別でみると、30代の起業家志向が39%で最も高く、10代が27%で最も低かった。
 一方、安定志向は強まっており、前回調査と比べ3ポイント増の59%が「転職は考えていない」と答えた。また、「有名な大学や学校に通った方が、将来は有利になると思う」との質問に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた人は過去最高の56%。学歴志向も強まっている。
(引用終わり)

出所:起業家志向が低下、10代は27% 野村総研1万人調査 (朝日新聞2010年1月16日23時51分)
http://www.asahi.com/business/update/0116/TKY201001160390.html

 新規創業が活発になれば経済が発展するとか住みよい社会になるとは必ずしも限りませんが、やはり日本経済の閉塞感を打破するようなイノベーションの担い手は若いベンチャー企業に期待したいところです。にもかかわらず、前に述べたように若者たちの起業への意欲は低下しています。もう日本の将来は暗い、のでしょうか。

 そこで注目したいのは日本で学ぶ留学生たちです。彼らの大半は中国、韓国などの東アジアからの留学生ですが、概して日本の若者に比べて独立心は旺盛ですし、チャンスがあれば卒業後に日本で起業したいという夢を持つ人も少なくないものと思われます。 日本で学んだ知識やノウハウを母国に持ち帰っていただくのも、国際貢献の観点からすれば悪いことではありませんし、仮に日本びいきになってもらえれば海外における日本企業の協力先になる可能性があるわけですから、それなりにメリットがあります。しかし、日本を気にいってもらって日本で起業してもらう方が雇用や税収の増加など経済波及効果は当然大きく、より国益にかなっているでしょう。

 財団法人入管協会「国際人流」(2010.1)によると、在留許可が「投資・経営」に変更が許可された留学生・就学生の数は平成17年以降急増しており、平成20年は128名と前年の倍以上となっています。たったそれだけ、なのかもしれませんが、日本人よりも創業資金の調達を行う条件が厳しい外国人にとってはかなり健闘している数字ではないでしょうか。

 自治体の中にはこうした留学生らの起業意欲に注目し、彼らを支援することで地域内の経済活性化につなげようとするところも見られます。例えば神戸市では留学生・OBの神戸での起業について、ワンストップサービスを提供しており、留学生OBが経営する企業がすでに32社あるそうです(こちら)。また川崎市も産学官民共同で「アジア起業家村」を形成し、在日アジア留学生等を対象とした創業支援セミナー「アジア起業塾」を開催しています(こちら)。

 ところで、ITを学ぶ世界の若者がシリコンバレーを目指す理由の一つは、そこでは世界最高水準のITの研究開発が行われているからでしょう。そして彼ら外国人の中からシリコンバレーの活力をさらに高めるような創業者たちが次々に生まれています。これと同じような仕組みが、日本が世界に誇るものづくりの分野で成り立たないものでしょうか。ITと違ってものづくりで創業するには相当な初期投資が必要になりますから話は容易ではないでしょうけれども、日本のものづくりの国際競争力を維持、向上させていくには、ものづくりの技術を学ぶために日本に留学しに来る優秀な外国人の起業を支援することも検討すべきではないかと思います。

細川舜司「日本の「分水嶺」をゆく」

2010-06-03 17:47:04 | 読書
 昨年4月にブログでこんなことを書きました。

(以下引用)
 先日、私の山関係の友人(といっても年齢は遙かに年上の人生の先輩の方)から久しぶりに電話をもらいました。本州の分水嶺をすべて踏破する、という彼の目標がいよいよ達成間近なのだそうです。
(引用終わり)

http://blog.goo.ne.jp/kunihiko_ouchi/e/04f3c89af3fb8bad7bdb482315e84519

 彼はこの偉業を成し遂げ、その記録を昨年11月に「日本の「分水嶺」をゆく」(新樹社)という本にまとめて出版しました。彼の山旅にわずかではありますが同行させてもらった私も献本いただきました。本は既に読ませていただきましたが、分水嶺の踏破の記録もさることながら、樹木に関する著者の知識の豊富さに驚かされます。ただし本書内に多く挿入されている、樹木を擬人化した対話形式のコラムは一般の読者層を意識しすぎであるようで(著者本人曰く、出版社からの要請であるようです)、個人的には記録集に徹したほうがよかったのではと感じました。

 先日、久しぶりに彼から連絡をいただきました。6月1日の「日本経済新聞」に出るから、とのことだったので紙面を見てみると、「私の履歴書」の隣の文化欄に彼の文章が大きく掲載されています。

 経済人として日本経済新聞社の「私の履歴書」や「文化」に寄稿するのは大きな憧れだと思うのですが、実際に知人がこうして紙面に登場すると、なんだか羨ましくも誇らしくも感じます。

「2010年版ものづくり白書」を読んで -技術流出の防止について思うこと-

2010-06-01 23:13:54 | ものづくり・素形材
 「2010年版ものづくり白書」が本日公表されたので読んでみました。
 以下、本白書の中で述べられている「強みをいかした事業戦略の再構築~優位な競争環境の確保 ①技術流出の防止」の箇所について思うところを述べたいと思います。

(以下引用)
技術流出は、製品のみならず人(従業員や退職者等)からの流出が多い。事業活動のグローバル化が進展する中においても、海外拠点における対応・取組は、国内拠点に比べて総じて低い状況にあり、意図せざる技術流出を防ぐ対策を一層講じていくことが重要である。
(引用終わり)


 「技術の流出経路」の図表を見ると、「人を通じた流出」の内訳で最も多いのが「日本人の退職者」(49%)、次いで「日本人の従業員(正規社員)」、「現地人の従業員(正規社員)」(31%)となっています。これを受けて「技術流出の主要な経路として正規従業員や退職者が挙げられることも踏まえると、社内における取組を一層強化するとともに、自社において守るべき技術・ノウハウを明確化し、確固たる管理方針を定めることが、国内・海外拠点双方において必要である」と白書では述べられています。しかし、具体的に企業はどのような管理方針を定めるべきなのでしょうか。



 かつて半導体の分野で韓国が猛烈に日本をキャッチアップしていた頃、週末のソウル行きの飛行機には韓国で技術指導のアルバイトを行う日本のエレクトロニクスメーカーの技術者たちがたくさん乗っていたのだそうです。これを問題視した日本メーカーは、金曜日の終業時間になると技術者たちからパスポートを取り上げたり、または空港で張り込みを行って自社の技術者がいないかチェックしていたとか、まことしやかな噂を聞きました。果たしてこのような方法しか選択肢は無いのでしょうか。
 しかし退職者となると会社もそんなことをするわけにはいきません。私も中国出張中に、日本の総合電機メーカーをリストラになった技術者で、ローカル資本のエレクトロニクスメーカーで技術指導を行っている方とお会いしたことがありますが、お話を聞くと生活のためであることがうかがえました。また一方で、収入よりもむしろ生き甲斐を求めて熱心に技術とノウハウを伝える方もいるようです。このようなOBの方々の渡航をいかにして思いとどめればよいのでしょうか。

 しかし仮に厳しい社内規定を設けるなどして正社員や退職者の韓国メーカーや中国メーカーでのアルバイト、再就職を制限したとしても、技術をどこまで守れるのか少々疑問です。液晶で有名な日本のエレクトロニクスメーカーが最新工場を日本で建設していた頃、韓国のライバルメーカーの社員は工場の建設現場を見下ろす高台から双眼鏡で熱心に観察していたのだそうです。建屋ができた後も韓国メーカーの観察は続き、どんなトラックが出入りするかをチェックしていたというから徹底しています。また、そんなことをせずとも、外国メーカーが日本の技術を学ぶチャンスはたくさんあります。特許庁のデータベースに一番熱心にアクセスしているのは韓国メーカー、中国メーカーだと言いますし。

 「熱心に日本の技術やノウハウを学ぼうとする国がある以上、ある程度は流出してしまうのはやむを得ない」、「であれば流出した技術やノウハウを彼らが身に付ける前に自らはさらに先を行くべく努力するしか方法はない」と、ある技術者の方がおっしゃったのを聞いたことがあります。国の白書でそのようなことはさすがに書けないでしょうけれども、技術流出への対応としてこれが最も有効な策であるのかもしれません。