歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

インドネシアのアルミ鋳造メーカー

2007-04-17 20:53:28 | 海外ものづくり事情
 アルミ重力鋳造で自動車エンジンのマニホールドを生産しています。かつてマニホールドは砂型鋳造で作られていましたが、日本で初めて金型を用いて重力鋳造によるマニホールドを生産したのが、この会社の親会社です。使用するアルミ合金は日本から取り寄せています。マニホールドのような複雑形状の製品を鋳造するには、日本製合金でないと湯流れが悪いのだといいます。
 この会社は95年に進出したのですが、97年から98年はアジア通貨危機とスハルト政権崩壊に伴う暴動で自動車の需要が激減し、仕事がぱったりとなくなりました。かといって従業員を遊ばせるわけにもいかないので、何をしたかというと、会社の敷地で山羊を飼ったりナマズを育てて従業員の給料の足しにしたのだそうです。
 なんだかすごい話だな、と思ったのですが、この会社が立地しているジャカルタ近郊の工業団地では、今でもあちこちで山羊がうろうろしていて道端の草を食べています。草刈りの手間が省けますし、食糧にもなるし、一石二鳥といったところなのかな、と思いました。
 

インドネシア語による5S

2007-04-16 23:12:07 | 海外ものづくり事情
 インドネシアの日系鍛造メーカーで表示されていた5Sの説明書きです。「しつけ」以外についてもしっかり「S」から始まるインドネシア語に翻訳されていました。海外では5Sといっても「S」から始まる単語にどうしても翻訳できない国がほとんでしょう。その点、インドネシア語って便利ですね。

インドネシアの鍛造メーカー

2007-04-16 22:59:39 | 海外ものづくり事情
 インドネシアの日系鍛造メーカーでのチェコ製プレスマシンによる鍛造の模様です。四輪向けと二輪向け両方の仕事をしています。

 この鍛造メーカーでは、インドネシアへの派遣要員のなり手がなかなかいない、という話が印象的でした。この会社の本社は日本有数の米どころにあり、従業員には兼業農家の方がたくさんいらっしゃいます。このため、田んぼの面倒を見なければならないのでインドネシアへの赴任だけは勘弁してほしい、という従業員が多く、困っているのだそうです。
 この会社の話はちょっと極端ですが、海外への派遣要員の人材不足のお話は、今回の東南アジア出張の中で様々な企業でうかがいました。企業としてはできれば若い人材を派遣したいのですが、彼らは海外赴任を忌避する傾向が強いのだそうです。特に地方企業では顕著で、「東京ではなく故郷で働けるから地元企業に就職したのに、なんで海外で働かなくてはならないの?」という反応が返ってくるのだとか。

 故郷を離れなくても満足のいく生活ができるようになったことは、個人にとって喜ばしいことかもしれません。しかし、経済のグローバル化の進展により、地方企業といえども海外となんらかの形でビジネス上の付き合いをせざるを得ない時代に、故郷から離れることを忌避し続けるのはどうかと思います。
 故郷を富ませるためには、狭い日本に固執せず広い海外で稼がなければ、という発想を、地方の人々も持つべきですし、そういった企業を地方自治体等も積極的に後押ししなければ、地方経済には未来がないのではと思います。

インドネシアの投資環境

2007-04-15 23:59:39 | 海外ものづくり事情
 ジャカルタの街です。インドネシアという国は人口2億4千万人の大国で、潜在的な成長の可能性も大きいのですが、どうも法制度と役人がいけません。
 日系企業の方から何度も聞かされたのは、あまりに労働者に有利な労働法と、ものすごい勢いで上昇する最低賃金です。もっとも、最低賃金をまじめに守っているのは日系企業ぐらいだという話ですが。。。
 また、現地の日本政府関係者の方から聞いたのですが、この国の役人の腐敗ぶりは相当ひどいです。外資系企業に対して「10億ルピアの追徴課税なんだけど、私に(賄賂として)1億ルピア払ってくれるんだったら見逃してあげるよ。」などと税務署の職員が話を持ちかけることは少なくあないそうです。さらにあきれたことに、最難関のインドネシア大学の成績優秀な学生が目指す就職先ナンバーワンは、賄賂という莫大な副収入が期待できる税務署と税関なんだとか。
 スハルト時代はまだましで、何をするには誰にどれだけ賄賂を渡せばよいのか割と明確でした。しかし独裁政権が倒れて民主化が進んだ今では、そのあたりのシステムが混乱してしまい、賄賂を渡しても物事がスムーズに動かなくなってしまった、という笑えない状況になっているそうです。
 いろいろな点で魅力の多い国なのですが、難しい問題も多い国です。


プロトンシティー

2007-04-13 22:09:13 | 海外ものづくり事情
 マレーシアの首都クアラルンプールから車で1時間ほど北上したところに、タンジョン・マリムという町があります。この町の郊外に国民車メーカーのプロトンの新工場があり、一帯はプロトンシティーと呼ばれています。山のふもとに広がる広大な工場です。マレーシア政府は、新工場で年間16万台を生産して国外への輸出も大々的に行う計画とのこと。しかし品質が日本車に比べてかなり劣るので、輸出は難しいのではないか、というのが関係者の見解です。
 マレーシアは国民車育成のため、トップダウンであらゆる手段を講じています。たとえば、AFTAの発効によりマレーシアも輸入車の関税を引き下げざるをえなくなったのですが、そこで政府のとった政策は輸入車を狙いうちにした物品税の引き上げだったそうです。そこまでやりますか。。。
 しかしこうしたあまりに過保護な政策は、結局は産業の国際競争力を下げるだけでしょう。基本的に自由な競争環境にあるタイとは状況が大きく異なります。

マレーシアの金型メーカー

2007-04-12 23:02:29 | 海外ものづくり事情
 日本とマレーシア合弁のプレス金型メーカーです。この国では金型用の鋳物が調達できないので、輸入に頼らざるを得ません。マレーシア政府もこの問題点を理解しており、日本に対して技術支援を求めているのですが、話に乗ってくる鋳物メーカーはないそうです。仮に日本の鋳物メーカーが支援するとなっても、金型用の鋳物は自動車部品向けの量産鋳物とは異なり、一品ものの手込め生産ですから、技術導入は容易ではないと思います。

霞が関に響く怒号と罵声

2007-04-12 22:44:21 | 日常
 仕事で霞が関の某官庁を訪れました。中国の温家宝首相が訪日しているので、官庁街には日の丸と五星紅旗がはためいています。警官の数が異様に多く、ものものしい雰囲気です。
 打ち合わせを始めるやいなや、街宣車による温家宝訪日反対の怒号と罵声の大音響が官庁の打ち合わせスペースに飛び込んできました。とても打ち合わせに集中できるような雰囲気ではないのですが、官僚は涼しい顔で淡々と話を進めます。この手の騒音には彼らは完全に慣れっこのようです。
 言論の自由は保証されるべきですが、大音響で喚き散らすだけでは、「愛国無罪」を標榜して日本総領事館に投石したり日本料理店を破壊した、どこかの国の暴徒と五十歩百歩なのではないでしょうか。

マレーシアで大人気のダイハツ車

2007-04-11 23:27:42 | 海外ものづくり事情
 自動車産業をほとんど日本企業に任せてしまったタイとは異なり、マレーシア政府は国民車の構想を掲げ、民族資本による自動車産業の育成に力を入れてきました。現在、マレーシアの二大自動車メーカーは、三菱の技術支援を受けてきたプロトン(Proton)とダイハツ系のプロドゥア(Perodua)です。今まではマレーシア車といえばプロトンだったのですが、最近ではプロドゥアが急速に伸びています。
 プロドゥアの自動車は、前周りと後周りだけがマレーシアのオリジナル、エンジンやプラットフォームなど肝心な部分はダイハツ車、というものなので、実質的にはダイハツ車と同じと言ってよいでしょう。リーズナブルな値段で日本車と同じ性能の車が買える、となるとこれは人気が出て当然だと思います。
 ただし、今までのプロドゥア車は、日本では1世代前、2世代前の「ミラ」や「ムーヴ」をベースとしており、マレーシア人としてはやや不満なところがありました。ところが写真の「マイヴィ」は違います。トヨタ、ダイハツ、プロドゥアの3社が共同開発し、それぞれのメーカーごとにカスタマイズされた上で同時に市場に投入されたのが、トヨタの「パッソ」であり、ダイハツの「ブーン」であり、そしてこの「マイヴィ」です。
 日本とマレーシアで同時に発売された車、ということで「マイヴィ」は大変な人気を集め、現在マレーシアの新車販売市場の2割をこの車種が占めているのだそうです。マレーシアの自動車市場は大きいものではありませんが、それでも1国の新車販売の5台に1台を特定の車種が占めてしまう、というのはすごいことです。「マイヴィ」もやはり前周りと後周りはマレーシアのオリジナルですが、なかなかカッコイイです。日本に持ってきても結構売れるのではないでしょうか。

ブミプトラ政策

2007-04-10 22:48:40 | 海外ものづくり事情
 クアラルンプールの街は緑が多く、高速道路も整備されており、雰囲気がシンガポールに似ています。アジア的な猥雑さがたっぷり(それが魅力なのですが)のバンコク、貧富の格差が大きくちょっとやばい雰囲気漂うジャカルタに比べると、住みごこちが良さそうです。企業の駐在員も安心して家族同伴で赴任できるのではないでしょうか。
 ただし、この国の国民には少々窮屈な思いをしている人たちがいます。華僑です。マレーシアでは土着のマレー人が優先され、華僑はとにかく冷遇されます。マレー人優先の「ブミプトラ政策」は知識としては持っていましたが、実際にマレーシアで見聞きして、ここまで露骨な政策だとは思いませんでした。
 政治家は言うに及ばず、役人はほぼ全員マレー人、また国が強い影響力を持つ大企業の従業員もほとんどマレー人によって占められています。今回、私は国産車メーカーのプロトンと日本の金型メーカーとの合弁会社を訪問する機会がありましたが、そこでも300人以上いる従業員のうち華僑はわずか1人だけで、残りはすべてマレー人でした。
 差別は就職先だけにとどまりません。今回のクアラルンプール滞在中に、現地で華僑の男性と結婚した元同級生と久しぶりに再会したのですが、二児の母となった同級生に聞くと、大学入試でもマレー人が優遇され、華僑はマレー人よりもよほど高い得点を取らなければ入学できないとのことでした。
 立身出世の道が閉ざされた華僑の目指す方向は2つです。1つは自営業に励むことです。もともと自立心旺盛な人たちなので、小規模なレストランや商店の経営は華僑が完全に握っており、街中には漢字の看板が目立ちます。もう1つは新天地を目指してアメリカなどへ留学、移住してしまうというパターンです。マレーシア政府は自国の産業高度化のために、海外留学組のマレーシア人に帰国を促しているのですが、華僑はあまり帰国しようとはしません。そんな華僑たちを、政府は「愛国心がない」と批判するのですが、「あなた方が受け入れてくれないからじゃないか」というのが華僑の言い分です。
 世界各国で悲惨な民族間の紛争が絶えない中、マレーシアという多民族国家は、各民族の文化や伝統を維持させつつ、平和と繁栄を実現している稀有な例であることは事実です。しかしながら、いつまでも国家が特定の民族を優遇したり差別するというのは、決して健全な姿だとは思いません。ブミプトラ政策は経済的に劣るマレー人の地位を高めるための一時的なもの、と聞いています。そろそろこの政策を見直して、先進国への仲間入りを果たすたすべく、マレーシアは華僑の優秀な人材を登用していった方がよいのではないかと思います。

KL空港行き特急電車

2007-04-10 08:55:52 | 海外ものづくり事情
 クアラルンプール国際空港はアクセスも優れています。空港行き特急電車KLIA Expressに乗れば、クアラルンプール中央駅から空港駅まで約30分、料金は約1000円です。しかも特急電車は15分間隔で出発するので、成田エクスプレスのように長時間待たされることもありません。ほんとに快適です。またマレーシア航空を利用する場合、中央駅でチェックインして荷物を預けることができるので、身軽な格好で空港に行けますし、空港では機内持ち込みの手荷物検査とパスポートコントロールだけで搭乗できてしまいます。これは便利です。
 さらに、ありがたいことに駅には日本語で案内表示があります。旅行者の誘致に本当に熱心だなと思います。お隣のシンガポール、バンコクが新空港を開港するなどアジアのハブとなることを目指している中、クアラルンプールとしても負けられない、という競争意識が働いているのではないでしょうか。
 ともあれ、空港は旅行者が最初に降り立つ外国ですから、その出来不出来は旅行者に与えるその国の印象に大きく影響します。私はマレーシアは今回が初訪問でしたが、この国にかなり好感を抱きました。