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最近ちょっとお疲れ気味

鴻海(Foxconn)のチェコ工場訪問の思い出

2010-05-28 08:02:21 | 海外ものづくり事情
 もう5年以上も前になりますが、鴻海(Foxconn)のチェコ現地法人を訪れたことがあります。当時すでに世界最大規模を誇るEMSであった同社に対しては閉鎖的なイメージを抱いていたのですが、ここは非常にオープンな雰囲気で、台湾人のマネージャーに暖かく迎え入れてもらい、社員食堂で中華料理のランチまでご馳走になりました(美味しかったです)。




 この工場はチェコ中部のPardubiceという町にあり、チェコの国営総合電機メーカーTESLAの軍需向け電子部品工場を買収(2000年)するという形での進出です。従業員数は3,500人と、従業員規模では同社の中国拠点とは比べるべくもありません。しかし、売上高は15億ドル、うち14億ドルをヨーロッパ、北アフリカ全域計40ヶ国に輸出する、同社の欧州・北アフリカ向けの一大生産拠点として位置付けられているほか(2004年当時)、チェコにおいて国産自動車メーカーのシュコダに次ぐ第二の輸出業者の地位を占めるまでに成長しています(これも2004年当時の話)。

 残念ながら工場の中の写真撮影は禁止でしたが、印象に残ったことが2つあります。

 まず一つ目が、この工場ではデスクトップPC、ルータ、携帯電話を生産しているのですが、プレス機械と成形機も入れてプレス部品、成形部品の製造も行っていることです。なんとなくEMSといえば中国、東南アジアから部品を運んできて組み立てるところ、と当時考えていた私にとって、プレス機械と成形機がずらりと並ぶ生産ラインは意外なものに見えました。後に、同社の中国工場では金型が大量生産され、筺体の材料であるマグネシウム合金まで自社で生産してしまうという話を聞いてたまげてしまうわけですが。

 もう一つが、日系メーカーではあまり目にしない性悪説に基づく従業員管理です。まるでプロレスラーのような屈強な警備員が建屋の入口で睨みを利かせており(マジで怖かったです)、出入りする従業員のボディーチェックを行っているのですが、台湾人のマネージャー氏に理由を聞くと従業員によるCPUなど高価な部品の盗難を防ぐためであるということでした。従業員による資材や工具の盗難が多いために注意が必要だという話は中国やベトナムなどでよく聞かされましたが、チェコのような工業国でもこんなことをやるのか、と驚きました。しかし、鴻海はチェコですらこういった従業員の管理を行っているということから、中国やベトナムでは相当に厳しい管理を行って従業員にプレッシャーを与えていることが想像されます。

 現在、鴻海の中国工場で従業員の自殺が相次いでいることが大きな問題になっています。同社の行き過ぎた従業員の管理が要因ではないかという報道を見て、ふとチェコ工場で見た光景を思い出した次第です。