歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

雪と象

2008-02-10 14:41:00 | 日常
 よこはま動物園ズーラシアに来ています。こちらは昨夜の雪がたくさん残っており、象たちは寒そうです。ほかの南国の動物たちの檻も、寒さのために展示中止のところが目立ちます。
 北国の動物園の動物たちはもっと大変でしょうね。

坂口孝則「牛丼一杯の儲けは9円」幻冬社新書

2008-02-10 06:43:29 | 読書
 坂口孝則「牛丼一杯の儲けは9円」幻冬社新書を読みました。

「牛丼屋は安さの限界を追求する。よって並盛り一杯350円の儲けは、およそ9円。だが、利益を伸ばす余地はまだある。材料費が10円下がれば、同じ値段でも儲けは倍になるのだ。かように、どんな業種も仕入れの工夫でさらに利幅を増やすことができる。いってみれば、仕入れほど、売り手と買い手が激しい価格交渉を繰り返し、互いの知恵を戦わせる分野もない。仕入れがわかれば、モノの値段と利益の本質が見える!」(本書裏表紙より)

 本書のサブタイトルは「「利益」と「仕入れ」の仁義なき経済学」。まさにその通り、ほとんど詐欺のような手口に、恫喝そのものの手口も横行する、仁義なき世界の実状には唖然とします。しかし、「なるほど」とうならざるを得ない合法的なテクニックには感心しますし、個別商品の原価と利益について意識を高めることと、仕入れ商品についての知識を深めることが企業の利益を高める上でいかに重要なのか、を知る上で、メーカーの調達担当者としてカリスマ的存在の筆者による本書は大変勉強になります。

 ただし少々気になる点もあります。
 本書の中で筆者自身が半導体部品やケーブルを購入したとか、値切りに成功したと思ったら秋葉原で同じ部品がもっと安く売られていてガックリした、という記述があることから、筆者は電子機器メーカーの調達担当者であることがうかがえます。本書の中で筆者は徹底的に市場価格を調べ、仕入先との交渉に臨むことを勧めていますが、確かにこうした購買活動は電子機器のような製品の場合は確かに大変有効だと思います。なぜなら、電子機器はもっぱらマーケットに流通する規格品を組み合わせて作る、(東京大学の藤本隆宏教授の言うところの)典型的な「モジュラー型」の商品であるためです。A社だろうがB社だろうが、日本製だろうが外国製だろうが、世界中どこのものでも同じ規格品でしたら安いにこしたことはありません。
 ところが、カスタマイズされた部品の機能を相互に摺り合わせて作る、「インテグラル型」の製品(典型的なものが乗用車です)については、とてもこうした部品の購買行為はできないでしょう。仮に新規の仕入先を求める場合、仕入先の力量を見極めるにはかなりのコストと時間を要するからです。見積もり価格は安いし相手は「ウチに任せてください」と自信満々で答えるので、それではと発注したものの、とんでもない不良品が納入されるようでは話になりません。

 以下はある中小企業で実際に聞いた話です。長年取引してきた大メーカーから突然「部品を○円で作れ。条件を呑まなければお宅との取引を切って中国メーカーに発注する。」、と通告されたこの中小企業、とても受け入れられない値段だったので、ああそうですかではどうぞ、と返答し、仕事は中国メーカーに発注されることになりました。しかしその中国メーカーは約束通りには作ることができないばかりか、「難しいから作り方を教えてくれないか」と聞いてくる始末。結局、大メーカーはこの中小企業に「言い値でいいから頼むから作ってくれ」、と泣きついてきたのだそうです。振り回されたこの中小企業はいい迷惑を被りましたが、大メーカーが無駄に費やしたコストと時間は多大なものであったはずです。
 仕入れコストの無駄は市場投入後の営業の頑張り等でどうにかカバーできるかもしれませんが、Time to Marketが厳しく問われる昨今、時間の無駄はメーカーにとって致命的なものになりかねません。貴重な時間を浪費してしまうのはビジネス的にマイナスですから、あらゆる製品についてとにかく最安値を追求するのはどうかと思います。そもそも日本が高い国際競争力を持つ「インテグラル型」の製品、これを構成する特殊な部品群については、やはり長年の信頼関係に基づく取引関係の中での発注に勝る調達はないでしょう。
 
 このように、仕入れるモノによっては必ずしも筆者の主張が全て当てはまるとは思えませんが、冒頭に述べたように、個別商品の原価と利益について意識を高めることと、仕入れ商品についての知識を深めることは、製造業のみならず様々な業種の経営において重要であることは間違いありません。ビジネスマンの方々には一読をお勧めします。