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素形材とは何か

2006-09-17 22:54:42 | ものづくり・素形材

素形材、というキーワードをgoogleで検索すると、まずトップに表示されるのが、財団法人素形材センターです。このページの中の「What is 素形材?」によると、素形材の定義について以下のように説明されています。

「素形材」とは、素材に熱や力が加えられ、形が与えられた部品や部材のことをいいます。具体的な素材としては、金属をはじめ木材、石材、窯材、ゴム、ガラス、プラスチックなどがありますが、最近ではファインセラミックス、複合材料も使われるようになりました。これら素材を素形材に変えるためには、鋳造、鍛造、プレス、粉末冶金などいろいろな材料加工法が使われます。

この素形材センターによる定義ですが、木材、石材を素材とするものまで「素形材」とすることには、かなり違和感があります。
素形材技術の専門書ではどのように定義されているのでしょうか。素形材に携わる学識者、業界の技術者らが執筆し、財団法人素形材センターが編集している「ものづくりの原点 素形材技術」(日刊工業新聞社)が参考になります。この本は、写真が豊富に掲載されており、文章も比較的わかりやすいので、入門書としてお勧めです。
第1章「素形材とは」によると、工業製品の材料に形を与える加工方法には、除去加工、付加加工、変形加工、の3つがある、としています。

  • 除去加工:材料の塊の一部を取り去ることにより、残った材料に形を与える加工法。
  • 付加加工:除去加工の逆で、材料を付着や接合させながら形を造る加工法。
  • 変形加工:材料に変形を与えて造形する加工法。

身近な例を挙げると、鉛筆を削る行為は除去加工、プラモデルの部品を接着して組み立てる行為は付加加工ですね。変形加工の身近な例としては、(独身者にはまず無縁な行為でしょうけれど)自家製のクッキーを作る行為が挙げられます。小麦粉と砂糖と卵と水などを混ぜた生地を、型を押し当ててクッキーの形を作り、焼き上げて出来上がり、という一連の行為は、変形加工そのものです。
同書は、工業分野の変形加工について以下のように解説しています。

材料を変形させて形を与えるには、金型や工具で材料に力を加えたり、型に材料を流し込んで転写させる手法を取る。(中略)さらに多くの場合、変形加工は除去加工や付加加工に使われる素材自体の製造法としても活用されているので、素材に形を与える最も重要な手法と言える。そのためこの変形加工を総称して「素形材加工」と言い、それによって製造されたものを「素形材」という。

実に明快な定義です。そして、同書では、素形材加工として、鋳造、鍛造、プレス加工、粉末冶金、プラスチック、ファインセラミックス、金属系新材料、金型の8つを挙げており、素形材の素材としては、金属だけでなく、プラスチックやファインセラミックも対象に入れています。あくまでも工業製品の材料加工法の1つなので、前に例として挙げたクッキーのような食品は、変形加工によって作られてはいても素形材とは言えません。なお、ここでは詳しい説明は省きますが、最後の金型については変形加工や除去加工に使う一種の工具であり、それ自体は素形材ではないので、厳密には「素形材関連製品」と定義すべきでしょう。