歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

電力線高速通信は普及するか

2006-09-15 23:49:38 | IT,インターネット
電カ線を使って高速のインターネット接続ができるという技術があります。わざわざ光ケーブルなどを敷設しなくても、電源コンセントに差し込むだけでネットに接続できるのが売りです。

高速電力線通信推進協議会
http://www.plc-j.org/

この高速電力線通信、技術としては割と歴史があり、既に利用している国もあるとのことですが、我が国では2006年9月13日にようやく総務省から認められました。

家庭コンセント利用の高速ネット通信、電監審が認める
(2006年9月13日23時39分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20060913ib24.htm

なぜなかなか認められなかったのかというと、電力線で通信を行うことによって電波が漏れ出し、それが短波放送やアマチュア無線、電波天文台に障害を与える可能性があるからで、今回の総務省の決定に対し天文学者等は強く抗議しています。

天文学者、「あきれる」 電力線通信に反対やまず
2006年09月14日01時32分
http://www.asahi.com/business/update/0914/002.html

本当に電波天文台などに深刻な影響を与えるのか、素人の私にはわかりません。しかし、この技術は、すでにFTTHやADSLが相当に普及している我が国では、実用化されたとしても家庭にはあまり普及しないのではないでしょうか。
自室でネット接続してたけど、気分転換のために居間にノートPCを持って移動して、再びコンセントにつないでさっきの続きをする、といったシチュエーションには、電力線高速通信は向いているように思われます。しかし、そうした用途で電力線高速通信を売り込もうとすると、無線LANという、既にかなり普及している技術と競争しなければなりません。
また、家電同士でコンテンツのやりとり、たとえばDVDからテレビへ、接続ケーブルなしで電力線インターネット経由で出力する、というシチュエーションもありえます。しかし、コンセントにつなげばすぐに高速ネットに接続できるかというと、それは無理で、モデムを介さなければインターネットには接続できません。モデム購入という投資をしてまで、接続ケーブルを無くしたいと思う消費者がどの程度いるのか、ちょっと疑問です。
確実に需要があると思われるのは、FTTHやADSLが来ていない、だけど電気は来ている、という離島や僻地です。こうした地域でブロードバンド接続を待ち望んでいた人々にとっては、電力線高速通信の実現は朗報でしょう。しかし、残念ながらベンダーにとっては市場規模が小さく、研究開発投資を回収するには難しいように思われます。

あまり明るい展望が描けない電力線高速通信ですが、目を世界に転じると、非常に大きな市場の可能性が広がっていることに気がつきます。
それは途上国の市場です。光ケーブルは当然来ていない、固定電話回線も来ていない、だけど電気は来ている、という家庭は、途上国には山ほどあると思います。設備投資が固定電話に比べて安価ということで、途上国では携帯電話が急速に普及していますが、それでも携帯電話でブロードバンドというのは現状の技術では厳しいものがあります。とりあえず電気だけは来ている、という途上国の家庭で、ブロードバンド接続を実現するには、電力線高速通信が全も現実的な方策でしょう。

しかし、潜在的な需要が大きいとはいえ、途上国の市場には1つ問題があります。それは、彼らがPCを購入できるまで豊かにならなければならない、ということです。
やはり電力線高速通信の前途は厳しいようです。