クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

「踊る大捜査線」。“青島刑事”と“古畑任三郎”はどう違う?

2007年10月14日 | レビュー部屋
放送開始から10年を迎えたという「踊る大捜査線」。
ドラマから始まり最終回を迎えたあとはスペシャル版として放送され、
映画化もされると、『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』は
日本映画史上最高の興行成績を記録したそうです。

主演は青島俊作役の“織田祐二”。
10周年記念ということで、
この劇場版が2007年10月に立て続けにテレビで放送されました。
刑事が登場し、犯罪が起こり、捜査をするという内容は「刑事ドラマ」と言えますが、
警察の官僚体質・キャリア制度の問題を重点的に描いているのが注目されます。
単にストーリーを追うだけの娯楽作品ではありません。
警察という視点から日本の社会そのものが抱えている問題に触れ、
我々はどうしたらいいのか? どうすべきなのか?
という問いを発しています。

「踊る大捜査線」では“名探偵”は登場しません。
いわゆる“偉いヒト”が指揮を執り、
傘下の青島刑事らはその命令に従って奔走します。
偉いヒトの許可が下りないと自由に行動できないし、
発言もままなりません。

青島刑事は組織の1部であり、使い捨て的存在として描かれています。
つまり、組織から見た1個人。
フットワークが軽く、自分の推理を発言する“名探偵”とは一線を画します。
“古畑任三郎”が刑事でありながら強烈な個性を発しているのは、
彼そのものにスポットライトが浴びているからでしょう。
組織という縦軸は希薄です。

名探偵の中には靴底をすり減らすような苦労はせず、
アームチェアに座って推理を働かせるだけで謎を解く者もいます。
組織の鎖に縛られた者にはこんな芸当はできません。
例えば京極夏彦氏の小説に登場する古書肆“中禅寺秋彦”などは、
現場を1度も見なくても自宅の古書店の一室で謎を解いてしまいます。
(しかも嫌々ながら……)

組織の一員である青島刑事はアームチェアでゆっくり考えることは許されません。
考えるのは偉いヒトの仕事で、彼は現場をかけずり回ります。
「踊る大捜査線」が警察という巨大な組織を切り口にしているのは明確です。
組織に入れば当然“上の人間”がいる。
その立ち位置にいるのが“室井慎次”(柳葉敏郎)であったり、
“沖田仁美”(真矢みき)だったりします。
そしてSATを出動させたり、レインボーブリッジを封鎖できるのも、
組織ならではのこと。
人が集まればそれだけ大きな力が集結し、
個人では不可能なことも可能になっていきます。

ただ、そこに集まった人々が厳格な縦軸に配置され、
上と下との距離が離れるほど矛盾と問題が起きてくるのでしょう。
「踊る大捜査線」はストーリーで魅せるだけでなく、
そのことに警鐘を鳴らしているものと思われます。
そしてこの作品が多くの人の支持を得ているのは、
疑問符を投げかけている縦軸構造の組織に、
カタルシスを感じているからかもしれません。

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