くもの国の絵かき

2005年に出版した絵本、『雲の国の絵かき』に
加筆修正を加えて公開するブログです。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

このブログについて

2009年01月19日 00時00分11秒 | このブログについて
2005年に出版した絵本、『雲の国の絵かき』を
文章に多少加筆修正を加えて発表するブログです。

内容などに大きな変更はありませんが、ブログだけのおまけとして
エピローグに『ある日の絵かき』を追加しました。

絵本をご購入いただいたかたも、こちらではじめてお会いするかたも、
この物語を好きになっていただけたら幸いです。



              くもの国の絵かき


売れない絵かき(1)

2009年01月19日 00時00分10秒 | 1.売れない絵かき
ある国に貧しい絵かきがいました。

「なぜぼくの絵は売れないんだろう」

絵かきはいつもそう思っていました。



じっさい、絵かきの絵は見たものをうつしたようにうまく描けていました。


「けれど、心が感じられないよ」




人からそう言われるたびに絵かきは

「それはこの国に、ぼくの絵がわかる人がいないからだ」

と、腹をたてていました。





売れない絵かき(2)

2009年01月19日 00時00分09秒 | 1.売れない絵かき
そういうわけで、絵かきは旅に出ることにしました。

「もっと大きな国ならば、ぼくの絵を買う人がいるにちがいない」




こうして絵かきは、たくさんの国を歩きました。




いろいろな国で絵を売っているうちに気がつきました。

どうやら景色の絵ばかり売れていくようです。

それはいろいろな国に行くたび、
見た景色をなんとはなしに描きためていたものでした。

売れない絵かき(3)

2009年01月19日 00時00分08秒 | 1.売れない絵かき
北の国では、真っ赤な花畑

東の国では、金色の砂漠

西の国では、青く深い海

南の国では、白い雪山

そんな絵がよく売れました。




めずらしいもの見たさというやつでしょうか。

それならばきれいな景色のないところなら、もっと絵が売れるはずです。




絵かきはそんな国を探して、どんどん旅をしました。

そうしてとうとう、遠い遠い、灰色だらけの国へやってきました。

灰の国の絵かき(1)

2009年01月19日 00時00分07秒 | 2.灰の国の絵かき
その国はいつも戦争ばかりしている国でした。

色といったら、かたい石の壁や鉄の砲台の、冷たい灰色しかありません。




「光があるのに色をかえさない国があるなんて!」

絵かきはおどろきました。




それにこの国の人はみんな、
絵かきをあやしんで近づこうともしませんでした。

それどころか、役人につかまってお城につれてこられてしまいました。

灰の国の絵かき(2)

2009年01月19日 00時00分06秒 | 2.灰の国の絵かき
お城には王さまとお姫さまがいました。

お姫さまは生まれつき体が弱く、病気だったので
お城の外に出たことがありませんでした。





絵かきの絵を見たお姫さまはとてもよろこびました。




「こんなにたくさんの色、見たことがないわ!」


絵かきの絵を見てそんなふうに笑った人は、
今までだれもいませんでした。

灰の国の絵かき(3)

2009年01月19日 00時00分05秒 | 2.灰の国の絵かき
その日から絵かきは、毎日お姫さまのために絵を描きました。

灰色だった景色が、絵かきの絵で色とりどりにかざられていきます。




絵かきが思い出しながら描いたどの国の景色も、
お姫さまはうれしそうに笑ってながめていました。





いくらかの時がたって、また戦争がはじまりました。


お姫さまの病気も、だんだんと悪くなっていきました。



雲の国の絵かき(1)

2009年01月19日 00時00分04秒 | 3.雲の国の絵かき
ある日、お姫さまは絵かきに言いました。

「くもの国に行ったことがある?」




「どんなところかわかれば、行くのがこわくないのだけれど。」





絵かきは雲の国など、もちろん見たことがありませんでした。

けれどもお姫さまのために、いっしょうけんめいに雲の国の絵を描きました。




雲の国の絵かき(2)

2009年01月19日 00時00分03秒 | 3.雲の国の絵かき
絵ができあがると絵かきはそれをお姫さまに見せました。




お姫さまはそれを見てほほえむと、ゆっくりと息をひきとりました。






しばらくして戦争も終わりました。

絵かきはまた旅に出て、もうその国にもどることはありませんでした。



雲の国の絵かき(3)

2009年01月19日 00時00分02秒 | 3.雲の国の絵かき
絵かきはそれからずっと絵を描きながら旅を続けています。




お姫さまのいる雲の国へ、彼の見た景色を届けるために。




〈おしまい〉






ある日の絵かき

2009年01月19日 00時00分01秒 | 4.ある日の絵かき
エピローグ 『ある日の絵かき』


ある街の路上で、絵を描く絵かきに話しかける人がいました。

「岩だらけで灰色の、何もない景色の絵ですね。

 けれどなぜだか、あたたかい。」



絵かきは答えました。

「ぼくが見てきたなかで、いちばん美しい景色です。」


そしてすこし笑ってこうつけ加えました。

「そう思わせてくれる人が、いた国だから。」


それはとても気持ちの良いお天気の、ある日の午後のことでした。



あとがき

2009年01月19日 00時00分00秒 | あとがき


最後までお読みいただきありがとうございました!
いかがでしたでしょうか?


絵本との大きな違いは、本編のラスト1ページのみ、
より伝わりやすくするために文章に加筆修正を加えたところです。

どう違うのかはかつて絵本をご購入いただいたかたのみの
特権で、秘密ということで…。

そしてエピローグに『ある日の絵かき』を追加いたしました。

この小さなお話も、当時からメモ書きであったので、
今回表に出すことができて嬉しいです。

ラスト1ページも、実はそんなメモ書きのサイドストーリーが元になっています。

他は文章の区切りなど、ブログ上で読みやすく配置しなおした程度です。



私の中で、この物語はけしてアンハッピーエンドではありません。
読んでくださったかたが、何か感じていただけたのなら幸いです。


また、このブログはコメント・トラックバックの機能を外してありますので、
もしご意見ご感想などをいただける場合は、
下記の日記ブログのほうへコメントをいただければと思います。

ご…誤字脱字等があった場合も
こっそり教えていただければと思います…


『くものねこ』
http://jinta.blog.ocn.ne.jp/gentouka/


本当に、読んでいただきありがとうございました!!
感謝をこめて!!


億錦樹樹