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三郎君と床屋さん

2024-08-29 15:56:54 | 日記
三郎君は月に1回床屋に行きます。床屋に行くたびに3000円をもらっているのですが、実は1350円でカットしてくれるだけの床屋に行っています。少しズルいかもしれませんが、差額で本を買いたいのです。ズルいと言っても、ご両親もそのことは知っています。
「三郎がそれでやりくり上手になるのならいい」とも「決して無駄遣いする子ではないから」とも思って、黙認してくれているのです。
明日はおばあちゃんの法事だという日、いつも行く1350円カットのお店は「従業員研修のため」ということでお休みです。しかたなく、他の店に行くことになりました。
初めてのお店です。おじさんひとりでやっている理髪店です。「髪を切ってもらうだけでいいです」と言うと「えー、そうなのかい」と少しがっかりされました。正直に、いつもはカットだけの10分で済ませてくれる店に行っていることを話しました。そして「人に頭を洗ってもらうことがないのでちょっと…」とも言いました。
普段よりも長い時間が掛かりました。三郎君は「早く終わらないかな」とばかり考えていました。それでも終わったときに、なるべく明るく元気よく「ありがとうございました」と言って2800円を払いました。
明るく元気よくというのは、三郎君が最近読んだ『不機嫌は罪である』という齋藤孝さんの本のことが頭にあったからです。「普段より多く使ってもったいなかったな」という気持ちはあるものの、それを態度にしてしまってはいけないとふるまったのです。
皆さんは、こんなことはありませんか?
文化の違いはお金の問題 - 超時空要塞キクロス (hatenablog.com)

Uおじさん(後編)

2024-08-17 07:57:38 | 日記
田迎さん、いいえ三郎君もUおじさんと頭の中で呼び始めています。Uおじさんが図書館からいなくなってから、司書さんに「これ、言葉づかいがおかしくないですか?」と訊くと「ああ、これ田迎さんのね」。
詳しい話を聞くことができました(もちろん小声です)。Uおじさんは図書館長や本好きの人と同好会を立ち上げたものの、中心となっているUおじさんのわがままが目立ち、今は実質的にUさんひとりでやっているようなものだということでした。最初は同人誌だったのが、書く人もUさんひとりで、ついにリーフレットになってしまったということです。
要は詩吟会とか歌会や、色んなところに顔を出しては、やっぱりうるさがられているらしいのです。

何となく三郎君も分かってきました。自分みたいな本好きに話しかけては、やがてうるさがられるんだ。Uさん自身は大して本も読んでいないんだな。だって、漱石と太宰と鷗外と井伏鱒二に限られているもんな…ということが。

三郎君はUさんと会わないように時間をズラして行ったり、姿を見ると隠れたり、までは行かなくても距離を持つようになりました。

ある日、田迎良雄さんから手紙が来ていました。大規模な工場の誘致が進んでいるが、環境保全の立場から反対の署名活動をしている、協力して欲しいとのことでした。三郎君はまだ五年生ですから、かみ砕いた内容の手紙も添えられていました。
が、なんだか怖くなってお母さんに手紙を見せ、それまでの経緯を話しました。
「住所まで教えちゃったの?」
「読書案内でいいのができたら送るってことだったから。」
「住所は教えちゃダメでしょ・・・ってもあんた五年生だからねぇ。それにしても小学生の家にこんなの送ってくるなんて非常識にもほどがあるわよ。」想像した以上に怒っていました。
結局両親が話し合った結果、田迎さんに、もう息子とは関わって欲しくないという内容の手紙を送ったそうです。

それから…。
三郎君は図書館に滅多に行かなくなりました。小遣いの範囲で古本屋から本を買っています。Uおじさんのことも、三ヶ月も経つとほとんど考えなくなりました。
ある日、おじいちゃんの家の新聞でおくやみ欄に田迎良雄さんの名前を見つけました。おじいちゃんに話すと「寂しかったんじゃないか」と、そして「別に気にしなくていいからな」と言われました。

(実話、それもごく最近のことを元に書きました。)


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三郎君とUおじさん(図書館おじさんのrewriteです)

2024-08-17 07:03:55 | 日記
三郎君は本を読むことが大好きな小学校五年生です。
悩みは同じ趣味を持つ同級生がいないことです。例えば、フランクルの『夜と霧』を読んで感動して、それを誰かに伝えたいと思っても、読んでいる人が周りにいないので、なんとなく孤独を感じているのです。

ある日、三郎君が図書館で本を読んでいると、優しげなおじさんが話しかけてきました。
「君はよく、この東側の席で見かけるけど本が好きなのかい?」から始まって
「夏目漱石の『坊ちゃん』は読んだ?」ときました。
三郎君も好きな本なので、「はい。何回か読みました。」と答えると
「坊ちゃんと山嵐は正義感を持って大暴れしたんだよね。でも、実は正義感ってのが厄介なもので、何が正義かっていうのは人によって違うんだ。」…少し長い話を聞かされましたが三郎君にとっては、とても有意義な時間でした。
本はストーリーが面白ければそれでいいと思っていました。漱石のこの本でも、坊ちゃんと山嵐が無鉄砲さを発揮して、ゲラゲラ笑い、最後は清の遺言でほろりとして…というだけでした。

本を読んで、「はい、おしまい」という感じでしたが、このおじさん、田迎さんの話を聞いてから後は、巻末の解説をしっかり読むようになり、物語が持つ意味であるとか、書かれた時代背景も大事なのだと考えるようになりました。
三郎君は少し成長しました。

田迎さんと時々話をするようになってから『安寿と厨子王』でなく、森鷗外の『山椒大夫』を読んだし、太宰治の『御伽草子』で、童話の類をまた違った捉え方をしているのを読んで、視野が広がりました。いわゆる少年少女向けの本を卒業したのです。

でも・・・・。

田迎さんの話す内容に飽きてしまいました。パターンが何か決まっている気がし始めました。例の坊ちゃんの話も、集英社文庫の巻末にある、ねじめ正一さんの書いたもの、そのままだということにも気が付きました。ネットで調べれば、見つかるような解説ばかりです。浅いなあ、と正直思いました。
そしてそれを見ていたらしい、時々顔を合わせることがある中学生から
「おい、Uおじさんと話をしていたね。」と声を掛けられました。
「え、ユーですか。」
「アルファベットのU。うるさいってことなんだ。」
この頭の良さそうな中学生が、やはり同じような体験をしたそうです。
「あんまり相手にならない方がいいよ」というアドバイス(?)を残して、三郎君の座った席から去って行きました。

ある日、田迎さんから「読書会AtoZ」というリーフレットを渡されました。「今の君には早いかもしれないけど、私はこのサークルを立ち上げて5年目なんだ。」とのこと。
正直、あんまり面白くありません。そして田迎さんが書いた文を読むと、市議会議員の皆さんにお願いしたいことは、庶民の立場に立って欲しいのです
とあって、三郎君は「おかしいなあ、これなら、お願いしたいことは、庶民の立場に立って欲しいということです…みたいな書き方になるんじゃないのか?」と思いました。他にも漢字の間違いをいくつか見つけました。
(後編に続きます)