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即興童話~セミの復活

2024-06-15 06:36:20 | 日記

皆さんは、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のお話を知っていますね。

お釈迦様が地獄にいるカンダタを助けようとして蜘蛛の糸を垂らします。「よし、これで助かるぞ」と思った彼は蜘蛛の糸にすがって上に向かって行きますが、見下ろすとたくさんの人が、自分のつかんでいる糸を使ってよじ登ろうとしています。思わずカンダタは「これは俺の糸だ、お前たちは降りろ」と叫んでしまいます。その瞬間糸は切れてしまい、真っ逆さまに再び地獄へ落ちてしまいました・・・というお話です。

三郎君もこのお話はよく知っています。図鑑でクモの糸がものすごく丈夫なこと、それから他の害虫を捕食するということも知って以来クモを殺したりはしませんし、すごい生き物だと思っています。

ある時、地面にアブラゼミが仰向けに倒れていました。お父さんが、「それ、空に向かって放り投げて見ろ」と言います。恐る恐る親指と人差し指でつまんで、えいっと投げました。すると、アブラゼミはそのままどこかへ飛んで行きました。驚いている三郎君にお父さんが、昔はよくセミを採りに行った話をしました。「まだ動いているセミは、ああやって投げると結構飛んでいく」のだそうです。

とても不思議です。「一寸の虫にも五分の魂」とは本当なんですね。

 


即興童話~三郎君のお母さん

2024-06-06 09:39:58 | 日記

三郎君は悩んでいます。

島本さんが大好きなのですが告白して恋人同士になるなんて恥ずかしいのです。しかも好きになった理由が島本さんのおっぱいの形がいいことなのです。こんな不純な理由で人を好きになるなんて、自分はただのスケベではないですか。

とても孤独を感じています。アウシュビッツに関する本を読んだり、物がだんだん値上がりしてインフレになっているという新聞記事を読んだりして、憂うつだし、こんなことを話し合える友達がいません。

お母さんが、誰にも言えない悩みを抱えていることに気が付いたようです。でも、お母さんも三郎君が人一倍繊細であることは知っています。「悩みがあったら話してよ」と三郎君に言ったところで素直に話してはくれないことは十分承知しています。

ある日、お母さんは思いきって三郎君に話しかけてみました。

「あのね、三郎。私は小さい頃から喘息だったの。」喘息は三郎君も知っています。小学校のクラスで必ず喘息の子がいたからです。五年二組にもいます。

「え、そうだったの。」と三郎君はびっくりしました。そして、「今も喘息なの?」と訊きました。

「治ったのよ。二十歳を過ぎたくらいからだんだん収まってきて、お父さんと結婚して、悦子と三郎が生まれてから、まったく発作が起きなくなったの。私は、悦子と三郎が喘息でないっていうことがとても嬉しいの。喘息の苦しさって、喘息の人しか分からないの。」

「そうなんだ、おれ知らなかった。」

「子どもが生まれた時って、親はとても嬉しいの。そして無事に育ってくれれば、それで十分なの。」と言って、なんと三郎君を抱きしめてくれました。

恥ずかしいし、嬉しいし、何とも言えない気持ちです。そして、島本さんよりも、まだずっと、自分のお母さんの方が好きなのだということに気が付きました。

三郎君の悩みは少ししぼんだようです。


即興童話~三郎君の喧嘩

2024-06-05 07:10:33 | 日記

三郎君は光輝君と喧嘩をしてしまいました。

きっかけは些細なことです。

「三郎、赤ペン貸してくれないか」という光輝君に対して「また?」と少し大げさに言ってしまったのです。クラスの皆も笑っています。

光輝君は「何だ、三郎最近上から目線になって俺をいちいちバカにしているだろっ」と返してきました。そして小さな声で「お前、島本のことが好きなんだろう、知ってるぜ」とささやきました。

三郎君はどこかで光輝君のことを軽く見ていました。勉強も出来ないしボキャが貧弱だからです。その光輝君が"上から目線"なんて言葉を知っていることに驚きました。そして何より島本さんに恋い焦がれていることがバレていることがショックでした。

三郎君もカッとなって「うるさい、俺も、もう知らない!」と言ってしまいました。そうして、しばらく三郎君は光輝君と口を利きませんでした。

喧嘩から四日経って、グループ学習があり、光輝君と同じ班になりました。光輝君は喧嘩のことをすっかり忘れてしまったように「三郎が班長だな」と言って皆に同意を求めました。

勝手にわだかまっていたのは三郎君の方でした。三郎君はちょっと恥ずかしくなりました。「一回喧嘩したなんて大したことないんだな」。そして、あの時「コウちゃんだって、俺のお姉ちゃんのことすきなくせに」と言わなくて良かったと思いました。