「お姉ちゃん、笑わないで聞いてね」と三郎君がご両親が寝静まった後に悦子さんに話しかけました。笑わない、と悦子さんが言うので話してみることにしました。
「1か月前に、俺、熱出して寝込んだことがあったでしょ。熱が出て二日目に、なんでか天井がすぐ近くにある気がするんだ。忍者ハットリ君みたいに天井を足で踏んで歩いたかも。ふっと正気に戻ると、なんかおかしくて笑っちゃった。そして熱が下がって、明くる朝には気分が良くなってた。」
「へえ」と悦子さん。
「でも、俺その時が初めてっていうことじゃなくて、小さい頃も一回か二回、似たようなことがあった気がする。」
「それ、幽体離脱っていうやつじゃないかな。」と悦子さん。「私も金縛りって経験したことあるよ。」
「どんなの?」
「夜目が覚めて、身体が動かないってことに気が付いたの。どんなにがんばっても動かないの。誰か私を見ている気がする。その人が、もしも私に襲いかかったらどうしようかって思うんだけど、やっぱり動かない。怖くて心臓はドキドキするし、声を出そうとしても出ないんだ。どれくらいか分からないけど、しばらくしたら、身体は普通に動くの。とにかく怖かった。」
「やっぱり、そういう不思議なことってあるよね。」と二人は友達から聞いた話や本で読んだことを、その日遅くまで披露し合っていました。

