三郎君は悩んでいます。
島本さんが大好きなのですが告白して恋人同士になるなんて恥ずかしいのです。しかも好きになった理由が島本さんのおっぱいの形がいいことなのです。こんな不純な理由で人を好きになるなんて、自分はただのスケベではないですか。
とても孤独を感じています。アウシュビッツに関する本を読んだり、物がだんだん値上がりしてインフレになっているという新聞記事を読んだりして、憂うつだし、こんなことを話し合える友達がいません。
お母さんが、誰にも言えない悩みを抱えていることに気が付いたようです。でも、お母さんも三郎君が人一倍繊細であることは知っています。「悩みがあったら話してよ」と三郎君に言ったところで素直に話してはくれないことは十分承知しています。
ある日、お母さんは思いきって三郎君に話しかけてみました。
「あのね、三郎。私は小さい頃から喘息だったの。」喘息は三郎君も知っています。小学校のクラスで必ず喘息の子がいたからです。五年二組にもいます。
「え、そうだったの。」と三郎君はびっくりしました。そして、「今も喘息なの?」と訊きました。
「治ったのよ。二十歳を過ぎたくらいからだんだん収まってきて、お父さんと結婚して、悦子と三郎が生まれてから、まったく発作が起きなくなったの。私は、悦子と三郎が喘息でないっていうことがとても嬉しいの。喘息の苦しさって、喘息の人しか分からないの。」
「そうなんだ、おれ知らなかった。」
「子どもが生まれた時って、親はとても嬉しいの。そして無事に育ってくれれば、それで十分なの。」と言って、なんと三郎君を抱きしめてくれました。
恥ずかしいし、嬉しいし、何とも言えない気持ちです。そして、島本さんよりも、まだずっと、自分のお母さんの方が好きなのだということに気が付きました。
三郎君の悩みは少ししぼんだようです。


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