優しいあの人へ

自分の悩みで
いっぱいいっぱいで

ついつい
あなたに話していた

あなたの手の傷など
気にもしないで

自分の悩みで
いっぱいいっぱいで

ついつい
笑顔をなくしていた

あなたの体の不調など
気にもしないで

ついつい甘えていたのね
ついつい傷つけていたのね

あなたの優しい
涙の変わりに

ばんそうこうを
そっと置いてきた

虹

報われない日が

続いたから

涙がこぼれてしかたなかった

でも

優しい言葉が出てくる

あなたからも私からも

刺々しいあなたの言葉が

ふと優しくなった

ああ、そうか

これで報われたのだ

飲みながら

お前の詩は昭和だな
飲みながら父が言った

そういえば学生の頃から
昭和と同級生に言われていた

そのときはなんだか
時代に取り残されたみたいで
嫌だった


最近は昭和が好きだよ
飲みながら父に言った

淡々としたテレビ番組のような
昭和が好き

大好きだった図鑑の香りのような
昭和が好き

父は笑った

この前書いた
昭和という詩を見せたら
また笑っていた

海苔とごはん

温かいごはんを海苔で包んで
お醤油をちょっとつけて食べる

穏やかな海の香りがしてくる
干潟のきれいな景色を思い出す

食べ物にこだわりのない私だけれど
こうして食べるのが一番好き

煙突

工場の煙突が見えたとき
なんだかほっとする

私の家は工場の街
作業着の人が行き交う街

定食屋さんに入れば
仕事帰りの人が
大盛りのごはんを食べている

最近慣れなかったこの街が
好きになった

なんとなく愛おしく
思えるようになった


工場の煙突が見えたとき
なんだかほっとする

きっと私もこの街で
煙突を見つけたのだ