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お風呂放浪記NO.18 ~「帝国湯」(荒川区東日暮里)~

2009-01-21 23:23:19 | お風呂放浪記
 常磐線の三河島駅を降りた。
 かつて、ここが阿鼻叫喚の地獄絵図と化したとは思えないほどに長閑な光景がそこにあった。暮れなずむ街に自転車にまたがったおばちゃんや学生たちが行き交う。
 事故は跡形もなく消え去ってしまっているようだった。
 昭和37年5月3日に起きた「三河島二重衝突事故」である。
 死者160名、重軽傷者383名の大惨事。

 翌日の「讀賣新聞」にはこう記されている。
 「9時40分すぎ、救急隊7人を連れてかけつけたが土手の上は人がいっぱいで口々に助けを求めていた。血だらけの負傷者の数がわからず、ガード下の道路には石で頭をくだかれた男女の死体がころがるなど息もとまるような光景だった。とりあえずハシゴを使って土手から乗客をおろし収容できるだけの死体20体を一ヶ所に集めたが車両の下敷きになっている死体はどうにもならなかった」(福田国士著、「地図から消えた『東京の町』」より)

 実は、三河島駅を降りたのは、事故現場となった駅が今どのようになっているのか、その痕跡を見つけることが可能かどうか、この目で確かめたかったというのがひとつ。
 そしてもうひとつが、都内でも随一の誉れ高き名銭湯「帝国湯」に入浴するというのが目的であった。
 事故の痕跡は全く見つけることはできなかった。

 そこで、わたしは三河島駅を後にし、「帝国湯」へと向かうことにした。下町らしい狭い路地を抜けながら銭湯の煙突を探したのだが、なかなか見つからない。きょろきょろと辺りを見回していると、路地から出て打ち水をする爺さんに不審そうに見られたりする。

 「帝国湯」の場所は分かりづらかった。幾度となくその近所を右往左往したりして、ようやくその偉大なる門構えに辿り着いたのである。

 その豪壮な佇まいにわたしはアッと息をのんだ。
 その存在感は抜群だ。
 入母屋の屋根はこれまで行ったどこの銭湯よりも立派であり、そこに垂れる巨大な暖簾が更に同湯を武骨なイメージへと変えている。

 恐縮しながら、「男湯」に入ると、番台はおばあさん。
 随分とお年を召しておられるように見えるが、未だ現役で番台にのぼる。

 この脱衣所からして圧巻だった。
 全てのもの、長椅子やテーブル、柱の時計、そして舟形天井。何の木を使っているのか、番台の木枠は長年使い続けたために黒光りしている。
 この圧倒的な存在感。これこそ、まさに銭湯の王道を行くかのようだ。

 浴室もまたすごい。
 窓はいまだに木枠が残されており、実に風流だ。
 カランの上には斜めにあつらえられた鏡。これがまず歴史を感じさせる。

 浴槽は3つ。
 ペンキ絵は富士山を配し、その下には鯉がゆったりと泳いだタイルがつけられている。
 お湯の温度は東京にしては低い。約40度といった按配だろうか。

 すばらしすぎる。
 これ以上、銭湯に何を求めるというのか。
 前回の当欄で「銭湯は旅である」と書いた。
 「帝国湯」はそれに時間軸の旅をも加えている。
 古き良き時代のあの空気もそのままに。

 僅か450円の旅。
 「帝国湯」はもはや銭湯の域を超え、それは文化の薫りすら漂わせている。
 これは、間違いなく旅だ!

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10 コメント

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たしか (若旦那)
2009-01-22 01:58:34
帝国湯の目の前にある酒屋は角打ちなんですよ。「家谷酒店」と言って、警察の聞き込みのような方法で発見したところです。ここも色んな意味で歴史があって楽しい所です。
実は (熊猫刑事)
2009-01-22 07:41:37
本文には書いておりませんが、この「帝国湯」訪問は立ち飲みラリー「都電編」の一環なのです。

というのも疋田智さんという人が書いた「自転車とろろん銭湯記」(ハヤカワ文庫)という本の「帝国湯」のくだりにこんな一節がありました。

「帝国湯」を探す疋田氏がこんな記憶をたどっています。
「確か立ち飲みカウンターのある味わい深い酒屋(酒場ではなく酒屋)の目の前にあったはず」。

これを読んで、「帝国湯」に駆けつけたわけなのですが、残念ながら、目の前の酒屋でビールを飲むことは叶いませんでした。

酒屋は開いていましたが、中は薄暗く、覗いてみるとどこにも立ち飲みカウンターが見えませんでした。中はけっこう乱雑でそんなスペースがあるように思えず、「立ち飲みやめたのかなぁ」とわたしは立ち寄らなかったんです。

「家谷酒店」さんはまだ立ち飲みやっているのでしょうか。

もし、やっていたら、わたしはとんだ失態をいたことになりますね。
残念ながら・・・ (若旦那)
2009-01-22 08:19:16
家谷酒店は立ち飲みやっていらっしゃると思いますよ。私の情報は2年ほど前のちょっと古いものですが・・。

あそこは立ち飲みカウンターなどなく、各々が好き勝手に飲んだりできるようになっていて、特に立ち飲みのスペースが用意されているわけでもなく、冷蔵庫があって、そこから好きなお酒を出して勘定、グラスを借りて飲む、という感じでした。実際乱雑な店内なので入るまでが勇気の要りどころですが、入ってしまえば普通の角打ちです。しかし埃っぽいですから、銭湯後に訪問されるのはあまりお薦めできませんね。
あちゃ~。 (熊猫刑事)
2009-01-22 13:27:25
あちゃぁ~って感じです。
しかし、それを気づかせてくれた若旦那さんに感謝です。
ありがとうございます。

しかし、もしここで立ち飲みできていたら、都電編も少し形成が変わっていたかもしれません。少なくとも「なごみ」までは。

そういえば、先日ふと思い出したのですが、以前日暮里の中村屋酒店さんで飲んでいた際に、ご主人へ質問をしたんです。
「この辺に立ち飲み屋って他にあるんですか?」
すると、中村さんのご主人は「荒川区役所のほうに1軒あるよ。剥製屋さんの斜め前。ちょっと入りづらいよ」と教えてくれました。

この中村さんのおっしゃっているところが「なごみ」なのでしょうか。

若旦那さん、是非教えてください。
剥製屋・・・ (若旦那)
2009-01-22 16:51:15
残念ながら剥製屋さんというのが分かりません。「なごみ」は、荒川区役所のすぐそば、ハルピンという中華料理屋の隣にあったかと思います。三河島からも徒歩数分で来れたと思います。

私も以前、日暮里繊維通り沿いに一軒角打ちがあると伺って調査に向かい、見つけたのが「四方酒店(浅草と同じ名前ですね)」というところで、残念ながらそこは角打ちではありませんでした。そこのご主人から、「家谷」さんのことを伺ったのです。

都電はやはり難しいエリアかと存じますが、調べてみると意外と見つかったりします。先日は王子で座りの角打ちを発見致しました。
剥製屋 (熊猫刑事)
2009-01-22 21:42:51
って結構珍しいからネットで検索したこともありましたが、やはり見つからずじまいでした。

若旦那さん、いろいろな情報ありがとうございます。

家谷酒店さんは、再び宿題とします。「帝国湯」に行く口実になるので、それはそれでよかったと思っています。
若旦那さんのご進言のとおり、風呂上りではなく、風呂前に一杯やろうと思います(笑)。

>王子で座りの角打ちを発見致しました。

なんですと?
そのお店の名前は言わないでください。
何とか自力で探してみせます。
しかし、一体どこだろう。
王子ではなく (若旦那)
2009-01-22 22:02:57
王子から近い、都電のある駅のことでした。私もついてっきり王子だと思い込んでしまい、誠に失礼いたしました。

雑誌などにも掲載されているらしいので、きっとすでにご存知かもしれませんよ。
都電! (熊猫刑事)
2009-01-22 22:14:28
やはり、都電ですか。
都電は宿命のライバルになるかもしれません。

>雑誌などにも掲載されているらしいので、きっとすでにご存知かもしれませんよ

幸か不幸か。
存じておりません。

まだまだ修行が足りないようです。
「帝国湯」は名湯ですね~ (ティコティコ)
2009-01-23 11:21:08
「帝国湯」はタオルを貸してくれます。
帰りに返せば無料でいいといってくれます。

向えにある『家松酒店』は今年の正月3日に行きました、元旦から休まずやっているそうです。

入店して右側に飲む場所が有ります、親爺さんは人のいい好々爺です、店内は汚く古く埃だらけですが、今は既に廃品と成った古いポケット瓶のウヰスキーや珍しい売れ残りの品々を見ながら飲むのは楽しいかもしれません。
恐れ入ります (熊猫刑事)
2009-01-23 13:19:18
ティコティコさんの軽いフットワークには恐れ入ります。
ホントに。

正月3日といえば、ティコティコさんは月島に居たんじゃないんですか?

そんなティティコさんを尊敬します。

「家松酒店」さん、早く行かねばと改めて思いました。

楽しみです。

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