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居酒屋放浪記NO.0222 - 立錐の余地ない繁盛店 - 「新橋 やきとん」(港区新橋)

2009-02-06 12:47:46 | 居酒屋さすらい ◆立ち飲み屋
 景気が悪いといいながら銀座は賑わっていた。
 平生、夜の銀座に足を踏み入れることなどないから、その賑わいぶりは分からないが、黒塗りのハイヤーがあちらこちらに止まっていたり、高級車が店の前に止まると、黒服が中から飛び出してカギを預かる光景があちこちで見られた。
 お花屋がアレンジメントを抱えながら右往左往すれば、着飾った貴婦人ともすれ違う。煌びやかながらも浮ついたところがない銀座八丁目をわたしは南に向かっていた。

 銀座も御門通りまで来ると風景を見ただけで銀座が終焉することが分かる。雰囲気が一変するのだ。
 
 そこで、わたしは西に進路を変え、JRの高架を目指す。
 ここまで来ると銀座の雰囲気はない。ヤマダ電機の賑わいはもはや完全に新橋である。
 
 わたしは高架をくぐり、立ち飲み屋を目指した。
 目当ての店は十仁病院跡のすぐ裏手。仕事で歩いた際に偶然見つけた店である。
 
 しかし、この十仁病院の異様さといったら何て表現すればいいのか。
 時効目前に逮捕された逃亡の女、福田和子はここで整形手術を受け、顔の腫れもひかないまま病院を飛び出し、新潟県に向かう。
 そのストーリーだけでもなにか背筋が冷たくなるおぞましさを感じるのだが、この古い病院跡が東京の真ん中にあり、建物を見上げ、その向こうの闇を見ていると空恐ろしい情念と憎悪が渦巻いているようにも見える。

 最近、熊猫は図書館で「廃墟巡霊」(ミリオン出版)という本を借りた。日本全国の廃墟、心霊スポット、殺人事件の現場を掲載した本なのだが、この十仁病院も是非掲載してほしかったと思うのである。ちなみに過日、この界隈を歩いた際、同病院は解体工事を行っていた。今頃はもう更地になっているかもしれない。

 さて、そうした廃墟を通り過ぎると、それとは好対照的な風景が目に飛び込んできた。
 立ち飲み屋の「新橋 やきとん」の盛況ぶりである。
 店に入りきれず、外のテーブルにも酔人が溢れている。
 わたしはその光景に圧倒された。試しに店を覗いてみる。10坪ほどの部屋がすし詰め状態になっている。わたしはひるんでしまった。どう見ても、わたしの入る余地はないのだ。
 
 「よそを探すか」と踵を返そうとしたその刹那、たまたま目の前に女性店員が料理を運んでくるところに出くわした。
 わたしはその店員に声をかけ、試しに訊いてみた。「一人だけどいいかな?」。すると女性は「ちょっと待ってて下さい」と言い残し、料理を客の所へ運んでいくと、店の中央の大テーブルで飲んでいる客を詰めさせ、何とか一人分のスペースを作ってくれた。
 
 一人分と言っても実際はそんな広くもない。スペースを詰めてくれた周囲の人も半身に構えてくれている。わたしは周囲の人に丁重にお礼をいいながら、有り難くそのスペースを借りることにした。

 早速、わたしは生ビール(サッポロ=380円)を頼み、続けて「もつ煮込み」(300円)も注文した。
 驚きはこの値段である。
 ビールジョッキの大きさも他店とほとんど変わらないように見える。それが僅かに380円だ。
 烏森よりも断然安く、この盛況ぶりにはおおいに頷けた。

 この小さな店に3~40人の客が詰め込まれている。かなりの人口密度だ。
 店の外にも20人くらいの人がいて酒を飲んでいる。内外合わせると50~60人くらいの客が来店しているだろうか。
 顔ぶれを見るとほとんどが男性客。しかも40代以上が圧倒的だ。
 わたしが確認したところ、女性は2人しかいなかった。そして、そのほとんどが会社勤めのサラリーマンである。中にはカジュアルな服装の人も見えたが、労働者ではないようだった。

 この客層は明らかに新橋烏森とは異なる。烏森はホワイトカラーも多いが、ブルーカラーも少なくない。
 確かに「新橋やきとん」は新橋駅に近いが、外堀通りを隔てれば、そこはまだ日比谷のエリアなのだ。

 内幸町は日本を代表する大企業が多い。ここに集っているのは、ほとんどがその有名企業の人達なのかもしれない。
 ちなみに、この店と目と鼻の先にあるK栄火災海上保険㈱の某氏に同店の様子をうかがったところ「毎晩混んでいる」とのこと。このエリアに働く人にとっては便利な店なのであろう。

 ともあれ、その混雑と喧噪の中でわたしはサッポロビールをあおった。だが、待てど暮らせど「煮込み」は来ない。やはりこの混雑では致し方ないのか。

 2杯目のビールを飲んでいるとようやく「煮込み」が来た。小さな小鉢に入ったオーソドックスなものだ。早速、口にしてみたが、一口目で幻滅した。「ぬるい」のである。散々待たして、この「ぬるさ」は頂けない。もしかすると、料理はとっくに出来ていたのだが、厨房に置き去りにされており、なかなか運ばれなかったのではないかと疑いたくなった。

 オーダーが遅いのはそれだけではなかった。同店は名前の通り、串焼きの店なのだが、その焼き物も頼んでから出てくるのに相当な時間を費やした。この混雑ではそれも仕方がないと分かっているのだがこっちも空腹の身、やはりイライラするのである。
 しかし、そうは言いながらも焼き物は総じてうまかった。タレは濃厚でともすれば塩辛いが、たいして気になるものでもなかった。

 そして、この値段である。タン、ハツなどは1本100円から。串の種類も豊富で「てっぽう」や「トントロ」など珍しいものもある。
 串焼き以外にもメニューは多い。「たこ焼き」(380円)「焼きそば」(480円)といった軽食もこの値段だ。

 ちなみに、わたしのお薦めは「オクラのおひたし」(315円)、そしてマグロの豚肉巻きソテー「まぐとん」(315円)である。鏡面のプレート製の皿がそっけないが、味は悪くなかった。
 また、営業時間が16時からというのも嬉しい。


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