「BBB」

BASEBALL馬鹿 BLOG

居酒屋放浪記NO.0073 ~立ち飲みラリー~「和一」(江東区富岡)

2006-06-29 23:57:08 | 居酒屋さすらい ◆立ち飲み屋

 夕闇迫るつかの間、ライトアップされた永代橋は、さながら紫陽花のような淡い色合いを隅田川の風に滲ませていた。
 橋の途中で振り返る、佃島の高級マンション郡はまるでコスモポリタン。別世界がそこに横たわっている。

 川を渡ると頭上の看板には「江東区」と記されていた。
 いよいよ深川に入ったのである。
 思い起こせば、この途中下車の旅も台東区にある会社を出たのが2月の中旬。それから秋葉原、神田、三越前、日本橋、茅場町と駅一区間を歩いては、その土地の居酒屋を訪ねるという文字通り酔狂なことを続けてはや4ヶ月余り。ようやく江東区へと辿り着いたのである。
 しかも、このとりとめもなく馬鹿げた企画は、別に意図したわけでもないが、全て訪ねた居酒屋は「立ち飲み」だったことに最近気づいた(過去ログを参照されたし)。

 せっかく築いた伝統を消してはいけない。
 しかし、幸いなことに門前仲町には「立ち飲みの聖地」、「大坂屋」がある。
 「いいお酒を、できる限り安く飲んでいただく、酒好きにはたまらない店」(立ち飲み研究会、『立ち飲み酒』 創森社)、それが大坂屋。
 自然と足取りは軽やかになる。

 門前仲町駅前の黒船橋。店はこの橋の袂にあるというのだが、それらしい店が見あたらない。川の向こう岸にあるかと思い、念のため、橋を渡ってみるのだが、やはりない。それぞれ脇の道に逸れたりして探したのだが、結局店は見つけることができなかった。
 立ち飲み屋としていち早くシングルモルトを入れた同店。このブームに駆ってさぞ店は大繁盛しているのでは、とわくわくしていたのだが、店は既になかった。
店を閉められたか、或いは引越しをされたか、どなたか、大坂屋の消息をご存知の方、是非とも教えていただきたい。

 さて、行くあてをなくした私熊猫は、しばらく駅前を右往左往した。
すると何やら、日活の活劇映画のペンキ絵を店の看板にあしらった昭和ノスタルジー風の立ち飲み屋を発見した。
 うむむ。
 一瞬、ここでもいいかな、と妥協しようとしたのだが、ここはグッと堪えた。江戸の盛り場、門仲に庶民風立ち飲み屋がないはずない、と思ったからである。

 しばらく、ぷらぷらと町を歩いていると飲み屋がズラリと並ぶ一角に出た。
 「ほほう、これはすごい」と感心しながら歩くと、「立ち飲み」という小さな看板が出ている店を発見する。
 青い屋根のこじんまりとしたお店。中を窺うと数人のおじさんが背中を向けて立ち飲み。
 「うむむ。入りづらい」
 だが、さっきの日活ノスタルジーの店にはない面白みがここにはありそうだ。
 意を決して扉を開けた。
 「いらっしゃい」。店の主人の声は意外と優しい。
 カウンターの一番奥に場所を見つけた。

 店は7~8人も入ればいっぱいになってしまうほど小さく、既に4人のおじさんが飲んでいた。
 さりげなく店をぐるりと観察すると、おじさん方は瓶ビールを飲んでいる。
 「はは~ん。ここは生ビールがないんだな」。
と察知して、店の主人に「瓶ビールください!」と快活に頼んだ。
 すると、それまでわいわいと話していたおじさん方がピタリと会話をやめ、店内に不気味な静寂が訪れる。
 僅か一瞬の重苦しい空気が永遠に続くのではないか、と感じたそのとき、店の主人は「後ろの冷蔵庫の手前の扉を開けてみて」と言うのである。
 言われるとおり、冷蔵庫を開けるとたくさんの瓶ビールがそこに冷やされているのである。1本とって、すぐさま自分で栓を開けて、置いてあるコップに注ぎ一気に飲み干した。
 店内は静寂に包まれる前の雰囲気に戻っていた。

 お店には登山の写真がたくさん飾られていた。
 どうやら、店の主人は山登りが好きらしい。
 そして、お客の面々もどうやら山屋風だ。
 一人の客が釣りの話しをすると、店の主人はどこかの山にある、なんとかという沢で釣ったヤマメの話しになると、今度はまた別の客が、その沢の水量が今年は多い、などと言って話題が尽きることがない。お客は皆常連さんのようである。

 わたしは、「鰹のたたき」を注文した。
 この鰹が実にうまかった。
 まず、茗荷とニンニクのスライスが絶妙。決め手は主人秘伝のタレだ。冷蔵庫から2種類の小瓶を出して微妙な調合を加えていた。
 そのタレが実に清々しいのだ。
 瓶ビールを飲み干したわたしはついつい酒を頼んでいた。
 一ノ蔵(㈱一ノ蔵)の吟醸を常温コップ酒で。
 ここ最近、焼酎ばかり飲んでいたせいか、久々の酒は実にうまかった。
 途中、常連のおじさんは新参者のわたしにも話しかけてくれて実に楽しい時間が過ぎていく。酒がうまいのは、こうした和やかに過ごす雰囲気によるところも大きいだろう。

 1人が店を出るとすぐ別の客が入り、また一人店を後にすると、また別の常連が顔を出す。この店には自然の人口調節機能がついているらしい。
 こういう店で長っ尻はよくない。
 コップ酒を飲み干して、わたしも店を後にした。
 会計は1650円。
 だが、それ以上に幸せな余韻が気持ちをポカポカにさせてくれた。
 絶対にまたこの店に来ようと思う。
 (次回は東西線「木場駅」に出没です。木場駅近辺の立ち飲み屋情報求む)


コメント (13)   この記事についてブログを書く
« 居酒屋放浪記NO.0072 ~Go F... | トップ | モザイクの一球NO.0028 ~黒... »

13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
良いねえ (怪鳥)
2006-06-30 09:00:55
初めての店で勝手が解らず、思わず店に静寂を作ってしまう、あるあるこういう事。自分では「瓶しか無いんだな、よし!」と好判断したつもりが、ってのもあるよね~。明日は一人ゴルフ合宿で宇都宮泊まり。一人で宇都宮のバーか?なぜか有名なバーテンダーが多いらしい・・・・。
初めての店。 (熊猫刑事)
2006-06-30 13:39:54
その店の文化に触れる居酒屋放浪を目指しています。だから、恥ずかしがらずに、知ったかぶらずに、そしてとことんディープにいきたい!

でも、やっぱり初めての店には遠慮しちゃうんだよねぇ。

これは居酒屋だけではなく、初対面の人に対してもそう。

厚かましくなく、かといってかしこまらず、これは永遠のテーマなんだろな。



宇都宮合宿、夜のホールインワン(なんのこっちゃ)応援してますよ!
緊張の空気が・・・ (まき子)
2006-06-30 13:54:01
明らかに常連さんが多いお店で

「みんなと違う事」してしまうと、

一瞬ぴし・・・っと空気が固まりますよね。

私もやったことあります・・・

瓶しかない小さなもつ焼き屋さんで「生ビールください」。



でも、飲んでるとそのうち、常連さんと打ち解けちゃうから

こういうお店って、いいですよね。
初めてのお店 (ふらいんぐふりーまん)
2006-06-30 22:19:23
なかなか、ディープな店に行ってるね。居酒屋放浪歴が長くなってプロ(!?)に近いレベルに来ていると見た。(笑)



ただ、最初は常連の中で違和感を醸し出したとしても、それがずーっと続かない店は名店といえるだろうね。



常連しか留まれない雰囲気を思いっきり出してては、店として自らマーケットを閉鎖しているようなものだからなあ。
板について (熊猫刑事)
2006-07-01 09:41:03
きたかね。

このブログをはじめた頃とは文体も変わってきたしね。

これからも、すごい店と軟弱な店の両方で攻めるよ!



まき子さん。

今回の件で分かったことがあります。それはどんな状況に陥ろうとも堂々としていること、ですかね。



そして、師よ。

世の中には自ら閉鎖的なマーケットを醸している店がいっぱいあるらしいぞ。

怪鳥が以前に行った店は常連で固めた様子で「来なくていいのに」という言葉をかけたとか。

そんなお店に突撃し、撃沈できれば本望だねぇ。
そうよ (怪鳥)
2006-07-03 09:21:30
浅草の、とあるおばあさんが一人でやってる店でね。何が気に食わなかった知らないけど・・・・。でも、その後すぐ閉店してしまいました。もう80は間違いなく過ぎてたからやっていけなくなったのだろうけど。親父が若い頃常連だったという店だから行ってみたのだが残念でした。でも、ああいう店はそれでも何度か行くと急に良くされたりするのだろうか?あと、ヒマそうな中華料理屋で主人らしき人間がスポーツ新聞かなかんか読んでいてガラッとドア開けると「チッ!客かよ!」みたいな店。すごく面倒そうに調理されたチャーハンはニチレイの冷凍チャーハンの方が数倍美味かった事は言うまでも無い・・・・。
「来なくていいのに」 (ふらいんぐふりーまん)
2006-07-03 12:31:31
客商売やってて、このセリフはないよね。



しかし、うまいならまだしも、たいした味でもない上に愛想も悪いって言う店なんかに行ってしまったりすると、その店というよりそんなところをチョイスした自分を呪うね。



私見だけど、そういう店って関東の方が多く生き残ってるような気がする。関西だとオープン直後の辛口口コミで、そういう店は消え去っていた記憶があるなあ。



関東方面には、忍耐強い人が多いんだろうか??師もそんな店行って撃沈したいって言ってるし・・・。
しっかし! (熊猫刑事)
2006-07-03 13:36:02
「来なくていいのに」ってよくよく考えるとすごい言葉だね。

そんで、怪鳥はその後どうしたんだっけ?

ところで、宇都宮遠征はどうだったの?



師よ!

それは誤解だな。

一番多いのは敷居が高い京都だろ!

なんか、入る店の半分くらいは「来なくていいのに」って言いそうだもん。

だから和民に入るってわけでもないけれどね。
もちろん (怪鳥)
2006-07-03 14:48:59
「じゃあ、帰ります」と言ってビール一本で帰ったよ。ほんとにおばあさんだから文句言う気も起きずに「ああ、邪魔な客だったんだな」と素直に思ったよ。店と言うより、「人の家」にいきなり上がりこんでしまった感じかな~。「来なくていいのに」ってのはつぶやいてるのが聴こえてしまったんだよね。それをしっかり聞いた俺が「帰る」となった訳です。ここには書けないのでどんな店かメールしますよ。多分、理解出来ると思います。

宇都宮は前日「W林」(by蛭子能収)見過ぎで徹夜で行っちまったもんで最初の居酒屋でへべれけになってしまい、バーなんて程遠く撃沈!それにしてもホテルの窓から「パブ ホールインワン!」と見えたときには目を疑いました。
いちげんさんお断りの店 (ふらいんぐふりーまん)
2006-07-03 17:19:51
確かにいちげんさんお断りの店は、京都には多いらしいが、高級店がほとんどで、居酒屋系にはそういうところはないと思うよ、多分・・・。



ただ、師が来たときに歩いたあのあたりは、いちげんさんお断りではないにしても、地元と言え郊外田舎京都人(苦笑)ではなかなか立ち入ることが難しいような、最初から門戸を開けていない趣の敷居のメチャクチャ高いお店が大量にあったけどね。ただ、あそこらあたりは、京都閉鎖文化の頂点みたいなスポットだからなあ。



代々続く京都人の友達(飲食関係)に聞いた所によると、実際あのあたりに脈々と続く商売コミュニティーには大変に色々なことがあると言ってた。実際に凄まじく閉鎖的な部分があるみたいだ。



まあ、最近ではそんな敷居の高い、(というか入ることができないんだけど)いちげんさんお断り店も背に腹はかえられず、誰でもウエルカム路線に変更したりしているらしいけどね。



俺が言いたかったのは、「ラーメン屋とか定食屋とか、居酒屋とか大衆系のお店で、味&愛想とかがかなりNGなのに生き残ってる比率」のことなんだけど、どう?やっぱ誤解か?師よ。



さて、怪鳥さん。「パブ ホールインワン」脱力系ネーミングですね。(笑)結構地方に行くとそんな素敵な!?名前のお店に遭遇したりしますよね。



ちなみに、前に住んでいた茨城の家の近くには、行った事はないんですが、昔のカルピスのマークのような黒人のおじさんの絵が、シンプ思いっきり描いてあるバー「く○んぼ」というのがありました。

コメントを投稿

居酒屋さすらい ◆立ち飲み屋」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事