熊本レポート

文字の裏に事件あり

熊本コナン、横領か詐欺か真相を探れ ! 第1回

2020-06-28 | ブログ
警察庁の資料によると、詐欺の被害者は福岡、熊本県が抜けて九州に多く、特に熊本県の場合は、その80%が投資詐欺。
ネズミ講に始まり、最新の太陽光発電の再生エネルギーに絡んだ投資詐欺を考えると、場合によっては被告が原告と同居することもあって、自己責任は勿論、地域社会問題として『詐欺』には強い姿勢での取り組みが求められる。

令和1年6月から8月において、熊本市内に住むA 、B 、C 氏他が、同市内で不動産業を営んでいたS 氏より投資話を持ち込まれた。
「特殊な焼却炉施設の販売を目的に代理店契約を結び、事業展開するので出資して欲しい」
化粧品やゴルフ用品等とは異なり、市場が極めて限定される焼却炉という特殊な品物、また環境問題等で自己責任が問われるとあって普通は、投資側でも敬遠される代物。
ところが同年6月から8月において A 、B 、C氏らは200万円から300万円を投資。余程、その製品かS 氏の儲け話に魅力を感じての結果だったと想定される。家庭の主婦も出資している点を考えると多分、後者の方に惹かれたのではないか。
この際の領収証はというと当然、表向きは会社設立の出資金なので、 S氏が営んでいた休眠会社のM社の領収証が発行された。



そして8月、S 氏はその事業体を設立。それが K有限責任事業組合で、それを同年8月23日に登記。
有限責任事業組合( L L P )とは2005年、新たに定義された事業体だが、出資して生産施設を持ち、そこで生産された製品やサービスが利益を生み、その出資比率において利益配分を受けるという株式会社等の法人とは大きく異なる。
L L P は人を中心に作られる組織で有り、そこに参加する人の才能やアイデア、技術等に価値を置いた事業体。また L L P独自の契約は認められず、課税対象の事業体ではなく、よって決算報告も不要。ただ設立費用は6万円と、それに準備期間も短くて済み、設立は極めて簡単。
お判り頂けるだろうが、自ら焼却炉施設の販売に自信を持ち、その営業力に賭けるという人は、個人所得に課税となるので、この L L Pは趣旨からして可能ではある。だが、配当目的で投資した家庭の主婦らは、この段階で騙されたという審判にはならないだろうか。
勿論、別に営利目的の法人設立が求められるのだが、資本参加で多額の出資金も集めていて1年間、それがここまで何の動きがなかったという点からして、S 氏には端っから、そういう気はなかったのではないか。
それでは、自らの営業力に賭けようと出資した人にはどうだったのか。
「それが『X 社の製品には問題がある。そこでZ 社の製品を販売対象にしたい』と、ころころと事業方針を変えた」(B氏談)
これでは、S 氏の事業方針に疑いを持つのは当然。
そこで被害意識を感じ始めたA 氏他は、S 氏を呼び出し話し合いの場を設けたのだが、『事業体の登記簿には未登記(出資者名)』、『同 L L P 預金通帳は残高1万円』で、懸念される事態となったのである。
ドラマのようなセリフになるが、
「あの金(出資金)は何処へいった」
と問うと、意外にも
『私的に流用』
あっさり認めたのである。
ところが、その6月3日以降、そのS 氏が応答しなくなったというか、連絡を断ったのである。
但し、仲介役は居た。
同 LLPの登記簿に多額出資者をさて置き、名を連ねるY 女史である。
『組合は解散して下さいとのS の意向』
彼女は同市東区のマンションで化粧品、健康食品の代理店を営むが、その会社の主力はガン薬の訪問販売。ちなみに同社は、その主要商品の販売方法から一部業務停止を受けて話題となった。
そのY 女史が、前述した通り特殊な製品を取り扱う事業に対して、何故に参加したか、そんな疑問は当然ながら浮上する。単なる S氏との情実での役員参加なのか、それ以外となるとS 氏と同様、出資金募集での営業に魅力を感じたのか、そういう勝手な推察さえ浮上してくる。
ところでS 氏は、自らどのくらいの額面の出資を行ったのか、その証拠資料が不存在する中で、
「500万円で、それは代理店契約で支出と語った」
被害者側は、そう信じている。
しかし、意図も簡単に「組合解散」を希望する男が、その『代理店契約金』を棚に上げて最悪の場合、お縄を頂戴(横領罪)するだろうか。
常識的な考え方だと、違約金を支出しても代理店契約金を取り戻し、私的流用の金に対して少しでも償う姿勢を見せるはずだ。
今後、事案が捜査当局に事件として任せられ、仮に代理店契約が虚偽だったとなると横領罪容疑どころか、これは詐欺罪容疑。



こうした中、S 氏サイドから仲介の「穏便に努めて下さい」という書面が、被害者側の方に届いた。差出人は会社更生法の多い中で、破綻の道を選んだ地元ゼネコンの元代表であるT 氏。再び熊本に帰郷し、親戚筋の建設会社で顧問職にあるが、S 氏を叱責し、被害者への償いにアドバイスならともかく、被害者側に「穏便」とは、介在そのものに疑いが抱かれる。先述したY 女史との関わりを想定する見解も出されるが、それがS 氏と昵懇であっても今回の仲介は『火中の栗を拾う』と同じ行為。それを敢えて実行したとなると、その関係の度合いも推察されるが、人生の先輩、いや常識人として求められるのは『穏便』という時間のない中で被害者への対応処置。
第三者的には真相の見える事案の感じもするが、それが司法の手で事件として公に晒される事を希望する。これが詐欺事件の阻止に繋がると、そう信じるからである…。