熊本熊的日常

日常生活についての雑記

出会い

2010年09月08日 | Weblog
久しぶりの雨だ。今日は木工の日で、ぐい飲み3個を収める木箱を作り始める日だったので、材料となるホウの木を持参しなければならなかった。それでも木工への往復の時はそれほど雨脚も強くはなかった。雨脚が弱い所為かもしれないが、これまで暑い日が続いていたので、久しぶりの雨が慈雨のように感じられて心地よかった。多少荷物が多くても、傘をさして歩くのは楽しくさえあった。

午後1時半頃に住処に戻り、生協の宅配荷物を取り込み、そのなかにあった玉蜀黍を蒸して食べ、午後2時半頃に出かけようとする頃、雨はバケツをひっくり返したような激しさになっていた。住処の前の地蔵通りは川のようで、出かけるのをやめようかとも考えた。しかし、これから会うことになっている人は、ある人から紹介された彫刻家で、今日が初対面だったので、雨くらいで面会を止めるわけにもいかない。タオルと替えの靴下をカバンに入れ、川のような地蔵通りに踏み出し、なるべく商店の軒下を歩くようにしたのだが、巣鴨駅に着く頃には膝から下がびしょ濡れになっていた。

駅の案内ではかなり運休や遅延が発生しているようだったが、山手線は動いていた。これほど激しい雨でなければ、歩いて行くことのできる距離なのだが、電車に乗る。大塚駅から外に出ると、さっきまでの激しい雨が嘘のように、小雨に変わっていた。南口のロータリーを突っ切り、都電の線路を横断して鳥居のある通りを行く。最初の交差点を左に折れたところにある靴屋に入る。店の人に来店の趣旨を伝えると、レジの裏にある階段へ案内された。その階段を5階まで登りきったところがペントハウスで、そこでその彫刻家先生が主催するワークショップが行われていた。

「行われていた」と言っても、参加者はひとり。木のスプーンのようなものを作っている。このワークショップは、普段は小石川にあるカフェで行われているのだが、今日はそのカフェの都合が悪く、彫刻家先生の作業場にこうして集合することになったのである。先生や参加者と話をしているうちに別の参加者がひとりまたひとりと現れて、結局4人になった。若い女性2人と60歳前後の男性2人だ。彫刻家先生は20代。なんとなく弛緩した雰囲気で、参加者それぞれが思い思いに手を動かしている。女性は2人とも木彫で、1人はスプーンのようなもの、もう1人は仏像を彫っている。男性は1人が粘土を捏ね、もう1人は木を鋸で切り始めた。なんだか妙に心地よい雰囲気だ。

1時間ほど見学させてもらいながら、先生や参加者の人たちと楽しく話しをさせていただいた。これから果たしてこの人たちとの関係が深くなるのか、これで終わるのか、今のところはわからない。彫刻家先生は能の役者でもあるそうで、今度の日曜に国立能楽堂で行われる金春会の定期能でツレのひとりとして「紅葉狩」に出演するそうだ。能は以前から一度観てみたいと思っていたので、ちょうど良い機会だから観に行くつもりでいる。

今回、彫刻家先生を紹介してくれたのは、いつも利用しているコーヒー豆店の羽生田さんだ。一体、どのように私のことを伝えたのか知らないのだが、今日、彫刻家先生は初対面の挨拶をした後、私に「作家の方ですか」と尋ねてきた。「陶芸をやる人」という紹介をしたようだ。羽生田さんは、知り合いのカフェのオーナーからこの先生を紹介されたらしい。本当は、そのカフェのオーナーを紹介して頂くはずだった。そのきっかけとしてワークショップとその主催者を紹介していただくということだった。今回はそのメインであるはずのカフェが抜けてしまったが、いずれ近いうちにそのカフェにもお邪魔するつもりでいる。いずれにしても、珈琲、ものづくり、というようなキーワードが今回の出会いの背景に見え隠れしている。仕事とは全く関係のないところで、今まさに自分が取り組んでいる領域で構築されるかもしれない人間関係を前にしている。そう思うと、自分がやりたいと思っていることが、ほんの少しだけ実現に向けて動き出したような気がして、多少の緊張を交えながらも嬉しく感じられる。

大雨が降って涼しくなったり、新しい人たちとの出会いがあったり、今日は愉快な日だ。

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