とね日記

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よくわかる初等力学: 前野昌弘

2019年01月04日 11時49分23秒 | 物理学、数学
よくわかる初等力学: 前野昌弘

内容紹介:
◎力学をちゃんと学ぶと物理学がみえてくる
力学をなめてはいけない。例えばあなたが、物理の大学入試問題を楽勝で解けたとしても、「根本はわかってないけど計算はできる」状態であったなら、その先に進むことはできない。本書は「力学の学習を通じて物理的思考方法を身につけられるように」という方針で書いた。微分や積分、ベクトルなどの数学についても可能な限り詳しく解説し、「計算ができないので物理がわからない」という状況に陥らないように配慮した。力学をちゃんと学ぶと物理学が見えてくる。その魅力を堪能してほしい。

- 背伸びをして大学物理の世界を覗いてみたい高校生
- 指定の教科書が簡潔すぎてとっかかりがつかめない大学生
- 大学の力学をじっくりと、勉強しなおしてみたい人

などなど「悩める力学徒」のために「くそ」がつくほど丁寧な本」にしました。

2013年2月刊行、416ページ。

著者について:
前野昌弘(まえのまさひろ): Twitter: @irobutsu
1985年 神戸大学理学部物理学科卒業。1990年 大阪大学大学院理学研究科博士課程修了。1995年より琉球大学理学部教員。現在 琉球大学理学部物質地球科学科准教授。
著書は「よくわかる電磁気学」、「よくわかる量子力学」、「よくわかる初等力学」、「よくわかる解析力学」、「ヴィジュアルガイド物理数学(シリーズ)」(東京図書)、「今度こそ納得する物理・数学再入門」(技術評論社)、「量子力学入門」(丸善出版)
(以上のサポートページは
http://irobutsu.a.la9.jp/mybook/index.html
にあり)
ネット上のハンドル名は「いろもの物理学者」

ホームページは
http://irobutsu.a.la9.jp/
http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/cgi-bin/pukiwiki/index.php

前野先生の著書: Amazonで検索


理数系書籍のレビュー記事は本書で384冊目。

力学の誕生―オイラーと「力」概念の革新―: 有賀暢迪」を読み、「よくわかる初等力学: 前野昌弘」が無性に読みたくなった。僕の学習進度を考えれば読む必要はないので、前野先生がお書きになった他の教科書は読んでいたが、本書は書店での立ち読みで済ませていた。

しかし、それでよかったのだろうか?念のため確認することにしたわけなのだ。前野先生がおっしゃっているように問題が解けても正しく理解しているとは限らない。たとえば、次の問いにあなたは答えられるだろうか?前野先生がお描きになったポップである。



あとニュートンの力学3法則に関してだが、「第1法則:慣性の法則は第2法則 F=d/dt(v)の特別な場合だから不要なのでは?に対する回答」や「第3法則:作用・反作用の法則の理解に関するよくある間違い」は目から鱗が落ちる。


大学での初等力学は高校物理で学んだ力学を、微積分やベクトルを使って学びなおす。より計算が中心になるため「意味」や「考え方」を問い直す機会は減るのだと思う。その点、前野先生の教科書はご自身が「「悩める力学徒」のために「くそ」がつくほど丁寧な本」にしました。」とお書きになっているように「しつこい」、「くどい」と思えるほど言葉を尽くして、図を描きつくして学生に伝えようというエネルギーが伝わってくる。

とはいっても僕の場合は学生と同じ読み方をするわけではない。次のような点を意識しながら読み進めた。

- 学んでいる内容が「力学の誕生―オイラーと「力」概念の革新―: 有賀暢迪」だと、どの年代、どの段階に対応しているのか想像すること。
- 力学史の発展の順番と本書の構成を対照しながら読むこと。
- 現代ではどのように整理され、学びやすくなっているかを知ること。
- これまでの力学の学習で取りこぼしていた発想や考え方を本書から拾い上げること。
- 一般の力学の教科書には書かれていないことが本書ではどのあたりに該当するのか注意を払うこと。

同じ本でも、視点や読み方が変われば読む価値も変わってくる。このような読書体験ができたのは結果的によかった。

もちろん、本書は本来大学1年生向けであるし、意欲的な高校生が大学物理や大学レベルのベクトル(ベクトル解析の初歩の初歩)を先取りして学ぶための本である。独習にうってつけの本である。

章立てと学習項目は次のとおり、高校で物理を学んだ人ならば、どこまで学べるかがすぐおわかりだと思う。

第1章 静力学その1―力のつりあいの1次元問題
1.1 静力学の法則
1.2 作用・反作用の法則についての注意
1.3 重力と垂直抗力だけを用いた例題
1.4 糸の張力
1.5 系
1.6 弾性力
1.7 ベクトルへの第一歩―力の向きを正負で表現する

第2章 静力学その2―2次元・3次元での力のつりあい
2.1 2次元のつりあい
2.2 静止摩擦力
2.3 ベクトルを使った計算
2.4 ベクトルの分解と成分表示
2.5 斜めの力がある場合のつりあい
2.6 滑車
2.7 連続的な物体に働く力
2.8 質点の静力学に関する補足

第3章 静力学その3―剛体のつりあい
3.1 つりあいの条件と回転しない条件
3.2 てこの原理と力のモーメント
3.3 力のモーメントと外積
3.4 重力のモーメントと重心
3.5 実例における、力と力のモーメント
3.6 面に働く力

第4章 運動の法則その1―1次元運動
4.1 力は何をもたらすか?
4.2 慣性の法則
4.3 運動の法則の理解のために―1次元の速度と加速度
4.4 運動の法則ー運動方程式
4.5 1次元的な運動の運動方程式
4.6 動摩擦力が働く運動
4.7 微分方程式としての運動方程式
4.8 運動の法則に関する補足


本書を読み終えた後「よくわかる解析力学: 前野昌弘」(紹介記事)のほうにも目を通しておいた。「力学の誕生―オイラーと「力」概念の革新―: 有賀暢迪」の第III部「解析力学」に対応する部分も再確認しておきたかったからだ。章立ては次のとおりだが、太字の部分が有賀先生の本の中で紹介されている「解析理学に至るまでの力学(仮想仕事、変分法と「ラグランジュの解析力学」)である。このあたりは特に面白い。

第1章 解析力学入門の準備
第2章 簡単な変分問題
第3章 静力学―仮想仕事の原理から変分原理へ
第4章 ラグランジュ形式の解析力学?導入篇
第5章 ラグランジュ形式の解析力学?発展篇
第6章 ラグランジュ形式の解析力学―実践篇1・振動
第7章 ラグランジュ形式の解析力学―実践篇2・剛体の回転
第8章 保存則と対称性

第9章 ハミルトン形式の解析力学
第10章 正準変換
第11章 ハミルトン・ヤコビ方程式
第12章 おわりに 解析力学と物理


この2冊は有賀先生の本で語られている力学概念が現代どのように理解されているかを考えるのに(難易度が低く、丁寧で読みやすいことも含めて)最適な読み合わせだと思う。

よくわかる初等力学: 前野昌弘」(サポートページ
よくわかる解析力学: 前野昌弘」(紹介記事)(サポートページ
 

すでに紹介記事を書いている前野先生の「よくわかる解析力学」のほうも、僕が読んだ第1刷以来、誤植が訂正されている最新刷を取り寄せておいた。

失礼ながら、前野先生の教科書は刊行時には誤植が多いため、中古本ではなく新品の本をお買い求めになるほうがよい。古い「刷」をお持ちの方のために、サポートページから本に貼り付けて使う訂正用のPDFファイルが公開されている。誤植が多いというのは、刊行後も熱心に内容をチェックされ、よりよい本にしたいという熱意のあらわれである。


関連記事:

力学の誕生―オイラーと「力」概念の革新―: 有賀暢迪
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/39015937594a6282316377ae34a6a240

古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ:山本義隆
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e808487b7e9d668967f703396e32d80a

古典力学の形成: 山本義隆―続きの話
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b5904a574fd4c4e276da496bd2c1821b

よくわかる解析力学:前野昌弘
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bd9d328483de3bc3f9a3ad14ec6fe078

よくわかる電磁気学:前野昌弘
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3f7e34e15a862a7c6471d5eb60be0273

よくわかる量子力学:前野昌弘
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/08beb004bf1a5c9e6f6192439045c120

今度こそ納得する物理・数学再入門:前野昌弘
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8777ea8175e9c48e0170df5b930f42d9

発売情報: ヴィジュアルガイド 物理数学 ~多変数関数と偏微分~: 前野昌弘
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1a891954f5d6e7d280caff962e4b5275


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よくわかる初等力学: 前野昌弘」(サポートページ


はじめに

第1章 静力学その1―力のつりあいの1次元問題
1.1 静力学の法則
1.1.1 力がつりあうということ
1.1.2 鉛直な力のつりあい
1.1.3 力の絵の描き方についての注意
1.2 作用・反作用の法則についての注意
1.2.1 「作用・反作用」と「つりあい」は全く違う概念であること
1.2.2 名前に引きずられないように
1.3 重力と垂直抗力だけを用いた例題
1.4 糸の張力
1.4.1 糸でつながれた物体
1.4.2 質量のある糸:今後のための準備運動
1.5 系
1.5.1 「系」とは
1.5.2 内力_作用・反作用の法則の有り難さ
1.6 弾性力
1.6.1 バネの力
1.6.2 バネの連結
1.6.3 垂直抗力や糸の張力をミクロに見れば
1.6.4 力は状態で決まる量である
1.7 ベクトルへの第一歩―力の向きを正負で表現する

第2章 静力学その2―2次元・3次元での力のつりあい
2.1 2次元のつりあい
2.1.1 二つの方向に働く力
2.2 静止摩擦力
2.2.1 面に働く(垂直抗力以外の)力
2.2.2 静止摩擦力の性質
2.2.3 静止摩擦力がある場合の練習
2.3 ベクトルを使った計算
2.3.1 ベクトルの定義
2.3.2 ベクトルの表記について
2.3.3 ベクトルの和
2.3.4 ベクトルの定数倍と単位ベクトル
2.3.5 ベクトルの差
2.4 ベクトルの分解と成分表示
2.4.1ベクトルの分解
2.4.2 ベクトルの成分
2.4.3 3次元ベクトルの成分表示
2.5 斜めの力がある場合のつりあい
2.5.1 斜めに伸びた糸
2.5.2 斜面に載せた物体
2.5.3 斜めに糸で引っ張る
2.6 滑車
2.6.1 滑車とは
2.6.2 自分を持ち上げる
2.6.3 動滑車
2.7 連続的な物体に働く力
2.7.1 滑車にかけられた質量が無視できる糸の張力
2.7.2 滑車にかけられた、質量のある糸の張力
2.8 質点の静力学に関する補足
2.8.1 力を測る(静力学の範囲で)
2.8.2 質量の定義について、静力学の範囲で

第3章 静力学その3―剛体のつりあい
3.1 つりあいの条件と回転しない条件
3.1.1 ここまで無視してきたこと
3.1.2 剛体が静止する条件―一つの剛体に二つの力が働く時
3.1.3 作用点の移動
3.1.4 剛体が静止する条件―一つの剛体に三つの力が働く時
3.2 てこの原理と力のモーメント
3.2.1 てこの原理
3.2.2 力のモーメントの定義
3.3 力のモーメントと外積
3.3.1 モーメント
3.3.2 支点が任意の点に設定できること
3.3.3 偶力
3.3.4 力のモーメントがベクトルとして足し算できること
3.4 重力のモーメントと重心
3.4.1 棒に働く重力のモーメント
3.4.2 重心
3.4.3 2次元物体の重心
3.5 実例における、力と力のモーメント
3.5.1 床に置かれた物体
3.5.2 壁に立てかけられた板
3.5.3 水平に保持した棒
3.6 面に働く力
3.6.1 圧力
3.6.2 パスカルの原理

第4章 運動の法則その1―1次元運動
4.1 力は何をもたらすか?
4.1.1 アリストテレス的な運動の考え方
4.2 慣性の法則
4.3 運動の法則の理解のために―1次元の速度と加速度
4.3.1 座標とは何か(1次元で)
4.3.2 速度とは何か(1次元で)
4.3.3 加速度とは何か(1次元で)
4.4 運動の法則ー運動方程式
4.5 1次元的な運動の運動方程式
4.5.1 重力の下での運動
4.6 動摩擦力が働く運動
4.6.1 動摩擦力
4.7 微分方程式としての運動方程式
4.7.1 速度に比例する抵抗力が働く場合
4.7.2 次元解析を使った考察
4.7.3 速度に比例する抵抗を受けながらの落下
4.7.4 速度の自乗に比例する抵抗を受けながらの運動
4.8 運動の法則に関する補足
4.8.1 運動方程式は物理法則である
4.8.2 第一法則は要らないのか?
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