「今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈1〉:リチャード・A. ムラー」
出版社による紹介ページ
今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈1〉:リチャード・A. ムラー
http://www.rakkousha.co.jp/books/isbn45-4-imakonosekai-1.html
今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈2〉:リチャード・A. ムラー
http://www.rakkousha.co.jp/books/isbn46-1-imakonosekai-2.html
理数系書籍のレビュー記事は本書で213冊目。
今月5日からNHK Eテレで放送中の「バークレー白熱教室~大統領を目指す君のためのサイエンス」の元ネタ本である。理数系人種向けというより社会人一般向けに書かれたという紹介のほうがふさわしい。読むにあたって物理や数学の知識は不要だ。
この第1巻に書かれているのはまさにいま私たち直面している問題で、アルファ・ブロガーの小飼弾さんも本書の書評の中で「きなくさい」と表現されているように、人によって判断や理解のしかたが分かれ、感情的な議論、政治的、経済的な利害の対立が起きがちな内容だ。具体的には原子力やエネルギー問題、テロリストやテロ国家が取りうる手段の分析が物理学者の視点から解説されている。
そのようなわけで本書を紹介するとさまざまな立場の人からコメントやトラックバックを頂戴しそうでだが、それはまさに本書が「今読むべき本」であるからなのだ。
原発再稼働の是非、使用済み核燃料の廃棄問題、北朝鮮をめぐる国どうしの政治的、軍事的動向など考え方や主張の違いはさまざまであるが、感情論にとらわれずに判断していくためにも物理学的視点から具体的な数値をもとにして、冷静に問題を理解しておくことが大切だと思った。
翻訳の元になった英語版が出版されたのは2008年。東日本大震災や福島第一原発の事故が起きる前のこと。NHKの番組のほうでは福島原発についてムラー先生のお考えを聞くこともできることだろう。
原発の再稼働問題やエネルギー政策がクローズアップされ北朝鮮の挑発が過激さを増している今こそ本書を読むのにちょうどよいタイミングだと思った。メディアやネットからの感情論に支配された情報に振り回され漠然とした不安を抱え続けるよりも本書を読んで「誤解や先入観を取り除き、何を心配し、何をどう判断していくべきか」を知るほうが賢明だと思うのだ。
「今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈1〉:リチャード・A. ムラー」
「今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈2〉:リチャード・A. ムラー」
翻訳の元になった英語版はこちら。
「Richard A. Muller, Physics for Future Presidents: The Science Behind the Headlines, 2008」
ご注意:今日の記事は原発の再稼働問題や北朝鮮など意見の対立しやすいテーマに結びついているので、過激なコメントやトラックバックをいただいた場合は私の判断で公開を承認しないことがありますのであらかじめ申し上げておきます。また、他の方のコメントに対する意見や批判コメントについても同じ方針で公開の承認を判断させていただきます。
関連記事:
今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈2〉:リチャード・A. ムラー
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/20542aca148e021666cfa34fc997d277
番組告知:バークレー白熱教室~大統領を目指す君のためのサイエンス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/36bb14b19b9ca57d17fe60655a704615
応援クリックをお願いします!このブログのランキングはこれらのサイトで確認できます。
「今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈1〉:リチャード・A. ムラー」
はじめに 3
●第一講 テロリズム
1 九・一一事件──何が起きたのか?
*ビル崩壊の主原因は飛行機衝突ではなかった
*崩壊の主原因はジェット燃料から放出された高エネルギーと高熱
*大爆発は起こらなかった。
起きたのは、高熱による物体の不安定化と鉄骨の湾曲
2 テロリストと核兵器
*テロリストが小型核兵器を一から設計・製造できるとは
考えられない
*高純度のウランかプルトニウムを入手しても、
優秀な技術者がいなければ製造は不可能
*北朝鮮の原爆実験は失敗だった。
設計の二〇分の一以下の不完全爆発
*小型核兵器によるテロが行われても、
九・一一事件を大きく上回る被害にはならない
*大型核兵器の製造はテロリストレベルでは不可能
*核兵器が盗まれ密売された場合の危険性
*放射能汚染爆弾によるテロは比較的容易。
大きな被害にはなりにくい
*放射能汚染爆弾については、過剰反応が危険
*真の脅威──ならず者国家による核兵器開発
3 バイオ・テロ
*天然痘テロ──きわめて危険。
実行されれば最大の犠牲者は発展途上国の人々に
*炭疽菌テロ──手紙一通に
推定二〇〇〇万人分の致死量の菌が入っていた
*炭疽菌テロ──数億人分の致死量の菌がまかれたが、
死者は五人だった。なぜか?
*炭疽菌テロの真相──いくつかのシナリオ
*バイオ兵器は核兵器より入手・製造しやすく使い方も容易
●第二講 エネルギー問題
4 エネルギー問題の知られざる真実①
*石油の最大のメリットは、エネルギー量の大きさ
*ガソリンと食物のエネルギー量比較
*ガソリンと代替エネルギーのエネルギー量比較。
もっとも有望なのはブタノール
*ガソリンとその他エネルギーとのエネルギー量比較
5 エネルギー問題の知られざる真実②
*エネルギーの「量」と並ぶ重要ポイントは、
それが一定時間内にこなせる仕事量(仕事率)
*馬一頭の仕事率=一馬力=一キロワット(一〇〇〇ワット)
*アメリカの総発電量は四五〇〇億ワット。
一〇億ワットの大型発電所が四五〇基必要
*石油に代わるエネルギーを考えるなら、まず現状の
エネルギー「用途」とエネルギー「源」を知る必要がある
*「脱石油」実現の最大の課題は、
代替エネルギーのコストを石炭以下に抑えること
6 太陽エネルギー
*誤解の多い太陽エネルギーに関する基本的事実
*ソーラーカーの実用化は未来永劫ありえない
*家庭用太陽電池普及のカギは、コスト低減と電池の長寿命化
*太陽電池利用型発電所の成否のカギは、
電池のコスト減と特殊材料の確保
*太陽熱利用型発電所の成否のカギも、やはりコスト減
7 石油の終焉?
*「もうじき石油が枯渇する」は本当か?
*石炭から石油をつくる「フィッシャー・トロプシュ法」を使えば、
石油は数百~一〇〇〇年以上もつ
●第三講 原子力
8 放射線の基礎知識
*放射線量二〇〇レムの被爆で病気に。
三〇〇レムなら死亡確率五〇パーセント
*ふまえておくべき「閾値効果」
*放射線を不必要に恐れるべきではない。
低レベルの放射線は自然環境の一部
*放射線とガン──ガンと放射線には
どの程度関連があるのか?
*チェルノブイリ原発事故──住民三万人が平均四五レムを被爆。
事故による住民のガン死は約五〇〇人
*住民を避難させたのは正しい選択だったのか?
*事故によるガン死は推定総計四〇〇〇人。住民にとって
より深刻な、ストレス・喫煙・飲酒によるガンと心臓病死
9 放射性物質の基礎知識
*原子核の爆発により放射線が放出され、
放射性物質の「放射性」が「崩壊」していく
*放射性物質が元のレベルの半分になるまでの時間を
「半減期」という
*半減期が一回過ぎれば放射性物質の危険性は二分の一に、
一〇回過ぎれば一〇〇〇分の一になる
*原発事故の際にもっとも危険なのは、
半減期が中間の長さの放射性物質
*さまざまな放射性物質と
半減期の長短に由来する危険性/利便性
*放射線で人間が突然変異するとか、チェルノブイリでは
先天性欠損症が多く見られるという説は、本当なのか?
10 核兵器を知る①
*核兵器の三タイプ──ウラン爆弾、プルトニウム爆弾、水素爆弾
*爆発のカギは「核連鎖反応」──
高エネルギーを出す核分裂の連鎖──を起こせるかどうか
*原子爆弾の誕生──第二次大戦とマンハッタン計画
*アメリカの原爆製造成功のカギは
「臨界質量」を少なくする方法を考案できたこと
*ウラン型(広島型)核爆弾──
構造は単純。比較的簡単につくれる
*ウラン型(広島型)核爆弾──
難しいのは高純度のウラン235の精製・入手
*ウラン濃縮の二つの方法
*最新のウラン濃縮法「遠心分離法」。
パキスタンから北朝鮮などに供与されたのがこの技術
11 核兵器を知る②
*プルトニウム型(長崎型)核爆弾──
プルトニウムの抽出・入手は比較的簡単
*プルトニウム型(長崎型)核爆弾──
設計は困難。北朝鮮の実験失敗も不純物による「早すぎる爆発」
*「早すぎる爆発」の解決策「爆縮」には、
著しく高度な技術が必要
*「爆縮」を成功させられるのは国家レベルの組織。
テログループでは無理
*水素爆弾──「二段階の爆発」で核融合を起こす爆弾
*水素爆弾の設計を可能にした二つの機密技術
*水素爆弾の放射性降下物と爆風はきわめて危険
*史上最大の爆弾──ソ連の水爆
*実は爆弾は小さいほうが破壊力が大きい
12 原子力①
*感情論に陥らないために事実の理解が必要
*核爆弾は核連鎖反応を「一気に」起こす
原子炉は核連鎖反応を「持続的に」起こす
*核爆弾には高純度(核兵器級)の核燃料が必要
原子炉は低純度(原子炉級)の核燃料でよい
*多くの人が原子炉は「原爆のように爆発しうる」と考えているが
それはありえない
*原子炉が「ダイナマイトのように爆発する」ことはありうる。
チェルノブイリで起きたのがそれである
*原子炉内では、ウラン→ネプツニウム→プルトニウム
という変換が行われつづける
*「再処理」とは、廃棄物からプルトニウムを抽出すること。
北朝鮮が事前同意に違反して行っているのがこれ
*高速増殖炉──「原爆のように爆発しうる」タイプの原子炉
13 原子力②
*「チャイナ・シンドローム」という仮説──
冷却材流出事故による最悪の事態の想定
*スリーマイル島事故の現実──
冷却材流出事故によって実際に起きたこと
*チェルノブイリ──設計上の欠陥による
「反応度事故」(核連鎖反応の暴走)
*「冷却材流出事故」も「反応度事故」も心配不要。
安全なペブルベッド型原子炉
14 核廃棄物
*核廃棄物について、反核の立場から考えてみる
*核廃棄物に関するわたしの見解──地下貯蔵計画を進めるべき
*プルトニウムの毒性は過大評価されがち。
胃から吸収されるという俗説も間違い
*劣化ウランに関する事実と議論
15 核融合制御
*核融合制御実現のための三つの方法
*A トカマク核融合炉
*B レーザー核融合
*C 常温核融合
出版社による紹介ページ
今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈1〉:リチャード・A. ムラー
http://www.rakkousha.co.jp/books/isbn45-4-imakonosekai-1.html
今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈2〉:リチャード・A. ムラー
http://www.rakkousha.co.jp/books/isbn46-1-imakonosekai-2.html
理数系書籍のレビュー記事は本書で213冊目。
今月5日からNHK Eテレで放送中の「バークレー白熱教室~大統領を目指す君のためのサイエンス」の元ネタ本である。理数系人種向けというより社会人一般向けに書かれたという紹介のほうがふさわしい。読むにあたって物理や数学の知識は不要だ。
この第1巻に書かれているのはまさにいま私たち直面している問題で、アルファ・ブロガーの小飼弾さんも本書の書評の中で「きなくさい」と表現されているように、人によって判断や理解のしかたが分かれ、感情的な議論、政治的、経済的な利害の対立が起きがちな内容だ。具体的には原子力やエネルギー問題、テロリストやテロ国家が取りうる手段の分析が物理学者の視点から解説されている。
そのようなわけで本書を紹介するとさまざまな立場の人からコメントやトラックバックを頂戴しそうでだが、それはまさに本書が「今読むべき本」であるからなのだ。
原発再稼働の是非、使用済み核燃料の廃棄問題、北朝鮮をめぐる国どうしの政治的、軍事的動向など考え方や主張の違いはさまざまであるが、感情論にとらわれずに判断していくためにも物理学的視点から具体的な数値をもとにして、冷静に問題を理解しておくことが大切だと思った。
翻訳の元になった英語版が出版されたのは2008年。東日本大震災や福島第一原発の事故が起きる前のこと。NHKの番組のほうでは福島原発についてムラー先生のお考えを聞くこともできることだろう。
原発の再稼働問題やエネルギー政策がクローズアップされ北朝鮮の挑発が過激さを増している今こそ本書を読むのにちょうどよいタイミングだと思った。メディアやネットからの感情論に支配された情報に振り回され漠然とした不安を抱え続けるよりも本書を読んで「誤解や先入観を取り除き、何を心配し、何をどう判断していくべきか」を知るほうが賢明だと思うのだ。
「今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈1〉:リチャード・A. ムラー」
「今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈2〉:リチャード・A. ムラー」
翻訳の元になった英語版はこちら。
「Richard A. Muller, Physics for Future Presidents: The Science Behind the Headlines, 2008」
ご注意:今日の記事は原発の再稼働問題や北朝鮮など意見の対立しやすいテーマに結びついているので、過激なコメントやトラックバックをいただいた場合は私の判断で公開を承認しないことがありますのであらかじめ申し上げておきます。また、他の方のコメントに対する意見や批判コメントについても同じ方針で公開の承認を判断させていただきます。
関連記事:
今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈2〉:リチャード・A. ムラー
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/20542aca148e021666cfa34fc997d277
番組告知:バークレー白熱教室~大統領を目指す君のためのサイエンス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/36bb14b19b9ca57d17fe60655a704615
応援クリックをお願いします!このブログのランキングはこれらのサイトで確認できます。
「今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈1〉:リチャード・A. ムラー」
はじめに 3
●第一講 テロリズム
1 九・一一事件──何が起きたのか?
*ビル崩壊の主原因は飛行機衝突ではなかった
*崩壊の主原因はジェット燃料から放出された高エネルギーと高熱
*大爆発は起こらなかった。
起きたのは、高熱による物体の不安定化と鉄骨の湾曲
2 テロリストと核兵器
*テロリストが小型核兵器を一から設計・製造できるとは
考えられない
*高純度のウランかプルトニウムを入手しても、
優秀な技術者がいなければ製造は不可能
*北朝鮮の原爆実験は失敗だった。
設計の二〇分の一以下の不完全爆発
*小型核兵器によるテロが行われても、
九・一一事件を大きく上回る被害にはならない
*大型核兵器の製造はテロリストレベルでは不可能
*核兵器が盗まれ密売された場合の危険性
*放射能汚染爆弾によるテロは比較的容易。
大きな被害にはなりにくい
*放射能汚染爆弾については、過剰反応が危険
*真の脅威──ならず者国家による核兵器開発
3 バイオ・テロ
*天然痘テロ──きわめて危険。
実行されれば最大の犠牲者は発展途上国の人々に
*炭疽菌テロ──手紙一通に
推定二〇〇〇万人分の致死量の菌が入っていた
*炭疽菌テロ──数億人分の致死量の菌がまかれたが、
死者は五人だった。なぜか?
*炭疽菌テロの真相──いくつかのシナリオ
*バイオ兵器は核兵器より入手・製造しやすく使い方も容易
●第二講 エネルギー問題
4 エネルギー問題の知られざる真実①
*石油の最大のメリットは、エネルギー量の大きさ
*ガソリンと食物のエネルギー量比較
*ガソリンと代替エネルギーのエネルギー量比較。
もっとも有望なのはブタノール
*ガソリンとその他エネルギーとのエネルギー量比較
5 エネルギー問題の知られざる真実②
*エネルギーの「量」と並ぶ重要ポイントは、
それが一定時間内にこなせる仕事量(仕事率)
*馬一頭の仕事率=一馬力=一キロワット(一〇〇〇ワット)
*アメリカの総発電量は四五〇〇億ワット。
一〇億ワットの大型発電所が四五〇基必要
*石油に代わるエネルギーを考えるなら、まず現状の
エネルギー「用途」とエネルギー「源」を知る必要がある
*「脱石油」実現の最大の課題は、
代替エネルギーのコストを石炭以下に抑えること
6 太陽エネルギー
*誤解の多い太陽エネルギーに関する基本的事実
*ソーラーカーの実用化は未来永劫ありえない
*家庭用太陽電池普及のカギは、コスト低減と電池の長寿命化
*太陽電池利用型発電所の成否のカギは、
電池のコスト減と特殊材料の確保
*太陽熱利用型発電所の成否のカギも、やはりコスト減
7 石油の終焉?
*「もうじき石油が枯渇する」は本当か?
*石炭から石油をつくる「フィッシャー・トロプシュ法」を使えば、
石油は数百~一〇〇〇年以上もつ
●第三講 原子力
8 放射線の基礎知識
*放射線量二〇〇レムの被爆で病気に。
三〇〇レムなら死亡確率五〇パーセント
*ふまえておくべき「閾値効果」
*放射線を不必要に恐れるべきではない。
低レベルの放射線は自然環境の一部
*放射線とガン──ガンと放射線には
どの程度関連があるのか?
*チェルノブイリ原発事故──住民三万人が平均四五レムを被爆。
事故による住民のガン死は約五〇〇人
*住民を避難させたのは正しい選択だったのか?
*事故によるガン死は推定総計四〇〇〇人。住民にとって
より深刻な、ストレス・喫煙・飲酒によるガンと心臓病死
9 放射性物質の基礎知識
*原子核の爆発により放射線が放出され、
放射性物質の「放射性」が「崩壊」していく
*放射性物質が元のレベルの半分になるまでの時間を
「半減期」という
*半減期が一回過ぎれば放射性物質の危険性は二分の一に、
一〇回過ぎれば一〇〇〇分の一になる
*原発事故の際にもっとも危険なのは、
半減期が中間の長さの放射性物質
*さまざまな放射性物質と
半減期の長短に由来する危険性/利便性
*放射線で人間が突然変異するとか、チェルノブイリでは
先天性欠損症が多く見られるという説は、本当なのか?
10 核兵器を知る①
*核兵器の三タイプ──ウラン爆弾、プルトニウム爆弾、水素爆弾
*爆発のカギは「核連鎖反応」──
高エネルギーを出す核分裂の連鎖──を起こせるかどうか
*原子爆弾の誕生──第二次大戦とマンハッタン計画
*アメリカの原爆製造成功のカギは
「臨界質量」を少なくする方法を考案できたこと
*ウラン型(広島型)核爆弾──
構造は単純。比較的簡単につくれる
*ウラン型(広島型)核爆弾──
難しいのは高純度のウラン235の精製・入手
*ウラン濃縮の二つの方法
*最新のウラン濃縮法「遠心分離法」。
パキスタンから北朝鮮などに供与されたのがこの技術
11 核兵器を知る②
*プルトニウム型(長崎型)核爆弾──
プルトニウムの抽出・入手は比較的簡単
*プルトニウム型(長崎型)核爆弾──
設計は困難。北朝鮮の実験失敗も不純物による「早すぎる爆発」
*「早すぎる爆発」の解決策「爆縮」には、
著しく高度な技術が必要
*「爆縮」を成功させられるのは国家レベルの組織。
テログループでは無理
*水素爆弾──「二段階の爆発」で核融合を起こす爆弾
*水素爆弾の設計を可能にした二つの機密技術
*水素爆弾の放射性降下物と爆風はきわめて危険
*史上最大の爆弾──ソ連の水爆
*実は爆弾は小さいほうが破壊力が大きい
12 原子力①
*感情論に陥らないために事実の理解が必要
*核爆弾は核連鎖反応を「一気に」起こす
原子炉は核連鎖反応を「持続的に」起こす
*核爆弾には高純度(核兵器級)の核燃料が必要
原子炉は低純度(原子炉級)の核燃料でよい
*多くの人が原子炉は「原爆のように爆発しうる」と考えているが
それはありえない
*原子炉が「ダイナマイトのように爆発する」ことはありうる。
チェルノブイリで起きたのがそれである
*原子炉内では、ウラン→ネプツニウム→プルトニウム
という変換が行われつづける
*「再処理」とは、廃棄物からプルトニウムを抽出すること。
北朝鮮が事前同意に違反して行っているのがこれ
*高速増殖炉──「原爆のように爆発しうる」タイプの原子炉
13 原子力②
*「チャイナ・シンドローム」という仮説──
冷却材流出事故による最悪の事態の想定
*スリーマイル島事故の現実──
冷却材流出事故によって実際に起きたこと
*チェルノブイリ──設計上の欠陥による
「反応度事故」(核連鎖反応の暴走)
*「冷却材流出事故」も「反応度事故」も心配不要。
安全なペブルベッド型原子炉
14 核廃棄物
*核廃棄物について、反核の立場から考えてみる
*核廃棄物に関するわたしの見解──地下貯蔵計画を進めるべき
*プルトニウムの毒性は過大評価されがち。
胃から吸収されるという俗説も間違い
*劣化ウランに関する事実と議論
15 核融合制御
*核融合制御実現のための三つの方法
*A トカマク核融合炉
*B レーザー核融合
*C 常温核融合
我が国の国策は、安全神話と深く関係しているに違いない。
だが、最悪のシナリオを想定するのはひどく難しい。恣意の人ならそうなる。
これは、平和ボケのようなものか。
太平洋戦争初期に、フィリピンの米比軍はキング少将もジョーンズ少将も投降して、75000人以上の将兵の命を救った。
太平洋戦争後期に、日本軍は米空軍の飛来をゆるし、1945年3月10日未明、東京の下町の江東地区がB29約300機による空襲をうけ、死者10万をこす被害を出した。
日本人の指導者には、作戦の成否を予測する力はないのか。
人命の尊重はどのように考えられていたのであろうか。
それでも日本人は、原発の再稼働を選んだ。
一億総ざんげへの道。動き出したら止まらない。
この道は、いつか来た道。ああ、そうだよ、民族の歴史は繰り返す。
意思のあるところに方法はある。(Where there’s a will, there’s a way).
意思のないところに解決法はない。
意思は未来時制の内容であり、日本語には時制がない。
それで、日本人には意思がなく、解決法が見つけられない。
自然鎮火を待つのみか。
耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで、もって万世のために太平を開かんと欲す。
不自由を常と思えば不足なし。
座して死を待つか、それとも腹切りするか。
私の父は、玉砕した。何のお役に立てたのかしら。
安らかに眠ってください。過ちは繰り返しますから、、、、
わかっている、わかっている。皆、わかっている。
ああしてこうすりゃこうなると、わかっていながらこうなった、、、、、
十二歳のメンタリィティには、知恵の深さが見られない。教養がない。
わかっちゃいるけど やめられない。ア、ホレ、スイスイ、、、、
白く塗られた黒いオオカミの足を見破ることは難しい。
だます人は悪い人。だまされる人は善良な人。おとり捜査は難しい。
この調子では、人の命はいくつあっても足りるものではない。
我々は、自らは望むことなく危機に陥る民族なのか。
はじめまして。
示唆に富むコメントをいただき、ありがとうございました。
高速増殖炉が「原爆のように爆発しうる」とは知らなかった!そんな原子炉はないと思ってた。(理由を知るまでは、まだ信じてないけど)
現在の原子炉の扱いは、どうせ止めても安全にはならないのだから、廃炉ぎりぎりまで稼働して電力を復興や安全設備建設に使った方がトータルで安全だろうと思っている。
おはようございます。
僕もこの本を立ち読みですませていたときは「大体は知っていること」だと思って買わずにいたのですが、NHKの番組がきっかけで読んでみることにしました。結果、知らないことがいくつも書かれていました。(立ち読みはいいかげんですね。)
そうなんです。高速増殖炉は原爆のように爆発しうるのだそうです。本書にはその他、核爆弾の種類やしくみ、設計、開発の難易度、原子力発電所の種類、核融合炉、常温核融合炉など研究中の発電所についてもこれまでの研究内容と実現可能性、安全性についての解説が行われています。
原発の再稼動や核のゴミの廃棄問題は「安全性」については感情論から極端な議論に陥りやすいですから、危険性を確率的、数量的に示しながらより現実的な議論が必要になりますね。
本が出た2008年だと既にトンデモ扱いになってたはずですが、別なのかな~
常温核融合は本書では「まだまだ実現可能性はない。」と書かれています。
1957年にルイス・アルバレスのグループがミューオンを触媒に使ってジュウテリウム(重水素)とトリチウム(三重水素)の原子核の反発力を無効にする方法を見つけたため、核融合を高温でする必要がなくなったのですが、ときおりミューオンが核融合してできたヘリウムにくっつき、それ以上新しい核融合を誘発しなくなる、つまり触媒としてのはたらきをやめてしまうという問題が残るため常温核融合は実現しませんでした。
1989年にスタンリー・ポンズとマーチン・フライシュマンがパラジウム触媒を使って常温核融合に成功したと発表したが、実験データの解釈を間違えただけだったということが書かれています。
あと、その後も常温核融合は実現していず、もし実現するとしても20年以上先のことだと本書には書かれています。
日本においてはまさにT_NAKAさんのおっしゃるように「温暖化問題」と「原発をどうするか?」に議論は集中しますね。
第2巻ではIPCCの主張、アル・ゴア元大統領が出演した映画「不都合な真実」を2つの軸に据えて温暖化問題を解説していきます。ただ2008年時点での議論なので、その後の原発の危険性に対する認識の変化は反映されていません。
はい、そうなのです。本書ではミューオン触媒の低温核融合も常温核融合として解説されています。