末期高齢者になってしまった老人の日記

我が家の花の写真を中心に、日々の暮らしの中で起きたこと等を書かせていただきます。

国立西洋美術館の「手の痕跡」展 その1

2013-01-28 18:35:04 | 東京散歩
前庭に展示の地獄の門

はじめに

上野の国立西洋美術館で昨27日に終了したロダンとブールデルの

彫刻と素描の展覧会「手の痕跡」では

今迄一堂に展示される事がなかった二人の彫刻69点全てと

素描・版画21点が展示され、更に写真を自由に撮ってOKというので

足の痛みを我慢して25日に楽しんできました。

一昨年までですと、直ぐに報告をブログに書いたのでしょうが

この30日に81歳になる小生、ボケが進むやら意慾が衰えるやらで

いざ書こうと思うと構想が纏まらない様になってしまいました。

日常生活でも色々とドジを踏む事が多いこの頃

皆様へのコメントも頓珍漢であったり、失礼な事を書いたりしていると思いますし

ブログに間違った事を書く事もあると思いますが

どうか爺さんボケたなとお許し頂ければ幸いです。

 
彫刻については余り知識もない小生ですので、本展の紹介サイトの資料を参考に

先ず展覧会の概要をご紹介した後は、主な作品の中で

彫刻鑑賞とは無関係な面白い話があるものを取り上げて紹介する積りですので

ご興味があればお読み頂ければ幸いです。

驚いた事に撮った写真は僅か20枚で、ブログ用写真として

どうしてあそこを撮らなかったのかと残念に思うばかりです。

撮り忘れた写真は、別の時に撮った写真と

当美術館のサイトからお借りしたものを掲載しました。


「手の痕跡」とは

フランス近代彫刻史上に個性を輝かせた1840年生まれのロダンと

そのロダンのもとで一時は下彫り工として働き

その彫刻に最も近く接した21歳若いブールデルは

社会や文化が近代化を遂げるなかでアカデミックな彫刻教育から距離を置き

新しい立体表現を提示し続けた彫刻家として位置づけられています。

新古典主義の彫刻が滑らかに磨き上げられた仕上げに特徴があるのに対し

ロダンやブールデルの彫刻の表面は

あえて素材の粗いテクスチャー,指や型,道具の跡を残し

生々しさを露にしており、それは作者の「手の跡」であり

見る者が彫刻家の存在を間近に感じる重要な要素となっています。

そうした作品の特徴が、そのまま展覧会名になっています。

(上記の事を会場に行く前に知っていたら、見方も違ったと思いますが

ブログを書くに当たり知った事で、後の祭りになってしまいました。)

展示は次の4章に分かれて展示されていました。

第1章 古代彫刻やルネサンス彫刻からの影響

第2章 肖像・頭部彫刻

第3章 人体の動勢表現

第4章 記念像制作

以下1章から順次ご紹介します。


第1章 古代彫刻やルネサンス彫刻からの影響

ルーヴル美術館あるいは旅で訪れたイタリア各地で

古代彫刻やルネサンス、バロック彫刻に触れ

精力的にそこから学びとろうとしていた時代の作品で

主要作品としてはロダンの「青銅時代」、「アダム」、「エヴァ」

ブールデルの「弓をひくヘラクレス」等があり

ロダン6、ブーデル4の10点が展示されていました。


ロダン 青銅時代1877年 ブロンズ


青銅時代

この『青銅時代』はオーギュスト・ネイトと言う人物をモデルにした

等身大の男性像で、極めて緻密でリアルな作品のために

「実際の人間から型を取ったのではないか」との疑いをかけられました。

ロダンは型取りの嫌疑をはらすため、モデルとなったオーギュスト・ネイの写真と

彼から取った型を審査員に提出し、その疑いを晴らした結果

審査員たちはロダンの彫刻に対して賞賛の言葉を送り

ロダンの名は一気にフランス中に広まりました。

1880年のパリのサロンで、ブロンズの《青銅時代》は3等賞を受賞し

国家買い上げとなり、その数ヵ月後には

国から《地獄の門》制作の依頼を受けました。


ロダン アダム 1881年ブロンズ

アダム 展示室のものを撮ってなかったので、以前地獄の門の横にある像を撮った写真

最初に掲載した「地獄の門」の構想過程で

ロダンは門の両脇に巨像を立てる着想を得

それには人類の祖であり人間の業苦の根源である原罪を犯した

アダムとエヴァが最もふさわしと考えました。

制作にあたっては「鉄の顎をもつ男」と呼ばれた力技の芸人をモデルに使いました。

なお地獄の門の上には、これほど体はよじられていませんが

このアダムとそっくりの姿に見える三つの像があります。

ロダン エヴァ 1907年 ブロンズ

エヴァ これも撮り忘れたので、地獄の門の横にあるものを以前撮った写真

「豹のしなやかさと優美さ」を具えた美しい肉体を持つモデルを使って

エヴァを制作していましたが、彼女が妊娠していたため

頭部と両足は未完成のまま中止されました。

1906-07年に、ロダンはブールデルに石膏原型に基づく石灰石像を彫らせ

この時頭部と両足を完成させるため新しいモデルを使うことを許したそうです。

写真のエヴァは、この石像による鋳造と考えられています。


ロダン 説教する洗礼者ヨハネ 1880年鋳造

説教する洗礼者ヨハネ

この作品のモデルはイタリア人の農夫で

アトリエを訪ねてきたこの男は強靭な肉体にも荒々しい力をみなぎらせ

また素朴で神秘的な雰囲気を漂わせていたため

彼を見てロダンはただちに洗礼者ヨハネを思い浮かべたそうです。


ブールデル 弓をひくヘラクレス 1909年ブロンズ

展示場の小さな像

前庭の大きな像

ブールデルの名を不朽のものとした本作品は

ギリシャ神話の英雄へラクレスが怪鳥ステュムファリデスを射るために

渾身の力で弓をひき、まさに矢を放とうとする瞬間を捉えています。

隆々たる筋肉におおわれた緊張感あふれるヘラクレスの肉体は

驚嘆すべきエネルギーに満ちており、1910年サロンに出品された本作品は

批評家シャルル・モーリスが「レアリスムがイデアリスムの域にまで達している」

と絶讃したそうです。