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備忘録

『素人が口を出すな』という感じがあった ~全国検察審査協会連合会会長

2009-07-04 17:57:50 | 雑記録

2009年7月 4日

『素人が口を出すな』という感じがあった ~全国検察審査協会連合会会長

法律の改正で検察審査会が果たす役割も大きくなり、その存在がさらに脚光を浴びることになりそうです。ある意味前進であり前向きの評価をしたいところですが、実際問題として裁判をきちんとやってほしいと願っている人たちの思いが叶えられるだろうかという疑問があります。

高知白バイ事件で、検察審査会の議決がでました。「不起訴不当」でした。審査員11人中6人、もしくは7人が検察のやったことは納得できないと判断した結果だと推定されます。民主主義の多数決の原理でいけば文句なしに「検察が起訴しないのはオカシイ」という結論を高知県民が出したということです。が、それでも検察は微動だにしませんでした。当時は「6人・7人の不起訴不当」だろうがが「8人以上の起訴相当」と議決がでても法改正以前ですから拘束力はななく、検察にとっては痛くもかゆくもありませんでした。無視していればよかったわけです。

制度の中で、「不起訴不当」と「起訴相当」の閾値(6人・7人、8人以上)がどんな経緯で作られたか知りませんが、制度が作られて随分時間が経ちました。その制度が十分に機能してこなかったこともあり、それを生かそうとして法律がすこし改正されました。せっかくそういう機運がでてきたのですから、もう少し踏み込んでやってもらいたい思いがあります。というのは、
裁判員制度では多数決で有罪無罪を決め、死刑でさえ多数決で決めるご時勢ですから、検察審査会の場でも単純明快な「多数決」でなんの問題がありましょうか、ということです。
「不起訴不当」と「起訴相当」を廃止して「2分の1以上の多数決」にすべき、ということです。

裁判の数が増加するのを避けたい、予算面で云々というのがあるのでしょう。が、それは別の問題です。裁判官を増やすなどしなければならないですが、それは避けて通れないことです。予算を押さえるためにヘンテコな理屈を拵えて入口を絞ることなど本末転倒なことです。

ということと、もう一つ、「検察の協力が十分に得られるかどうか」です。
これは下記の中日新聞が一番最後でふれています。
高知白バイ事件は特異な事件ですが、それでも裁判にのせることができれば通常の事件として扱われるので多くの人がそれを望んでいたと思います。ところが検察は検察審査会の議決も無視、なにもしませんでした。

ここで仮定の話として考えてみます。
「2回つづけて起訴相当の議決がでて、弁護士が起訴して裁判を始めることとなった」として想定してみます。
高知白バイ事件では証拠自体が怪しいとみられ、その証拠能力を担保するオリジナルのネガフィルムさえ拒否されている事件です。オリジナルのというのがポイントです。接写され作られた写真の複製ネガフィルムではない、生のネガということです。
裁判で認定された証拠といっても物証はなく、路面にあったとされるブレーキ痕のようなものを写した写真があることが決定的な証拠とされ、ほか証言として白バイ隊員の目撃証言だけが認定されました。そのほかは一切無視、却下されました。
そんな事件において弁護士が起訴したとして、どこまで証拠集めができるだろうか、検察や警察に乗り込んで調べられるだろうかという大問題があります。
選任された弁護士には起訴できる権限は与えられますが、捜査権は与えられません。証拠に辿り着くにはどうしても捜査権が必要であり、そのときは検察にお願いして依頼するしか方法はありません。そこで検察がホイホイと協力してくれるというなら、そもそもがそんなゴタゴタになってなかったでしょうし、検察審査会の出番もなく、検察が起訴を拒むこともなかったはずです。
ということは、検察が捜査に協力しないだろうということが容易に想像されます。

※「検察の協力」について、何日か前のNHKクローズアップ現代で取り上げられ、実際の事件で苦労し、協力が得られなかったという弁護士が登場していました。

とにもかくにも司法制度改革の歯車が回りだしました。
どうせやるなら制度をちゃんと機能させた方がいいに決まっているので、上で述べた2点についても議論が高まってほしいものだと思います。 

 1. 「不起訴不当」と「起訴相当」を廃止して、単純明快な「2分の1以上の多数決」一本にする
 2. 選任された弁護士に捜査権を与える

中日新聞2009年7月3日

  ■ 無罪増加?

 最高裁の統計によると、検審で「起訴相当」か「不起訴不当」と議決されたもので、起訴に至ったのは三割弱。審査員OBでつくる全国検察審査協会連合会の高野武会長(七七)は「これまで検察には『素人が口を出すな』という感じがあった」と振り返る。

 議決に法的拘束力を持たせた今回の法改正と裁判員制度導入は、国民の司法参加を担う「車の両輪」とされる。起訴された事件を国民が裁く裁判員裁判と同様、不起訴事件についても民意を直接反映させる狙いがあった。

 交通事故や業務上過失事件の被害者が強制起訴に寄せる期待は大きい。だが、一般的には不起訴になった事件は公判維持が難しく、結果的に無罪が増える可能性もある。

 神弁護士は「有罪率99%の現状が世界で異例。無罪になっても、裁判という公の場で審理されることに意味がある」と強調する。

 二度目の起訴議決で、弁護士が被告の責任を追及する検察官役となる。補充捜査が必要とされる事件も予想される。このため、検察の協力が十分に得られるかどうかが課題だ。

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