鉄と政 再起動12日目 高知白バイ事件
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鉄が政を「霞」に呼びつけた。
約束の時間にほんの少し遅れた政が、「遅くなりやした」と頭を下げると同時に鉄が話を切り出した。
鉄「政、どうなっているんだい」
政「へっ?」
政がなんの話かわからないのは当然だろう。いきなりそう訊かれても答えようがない。
鉄はその表情を見て、一息ついて話を切り出した。
鉄「旦那と今の支援する会との関係はどうなっているんだい」
政「……」
鉄「以前のような仲じゃないのは、俺だって感じてるぜ。それも昨日今日の話じゃねぇ。あれっと思い始めたのは3年は昔になるぜ…、それはまだいいんだが、弁護団が解散してからの旦那は俺たちの前にさえ姿を見せねぇじゃねか。何があったんだい」
前触れもなく、その話を持ち出した鉄の態度が癇に障った。
政「いや、兄貴。いきなりそう言われても困るんですが…、兄貴はどうしてそう思ったんですかい」
政は落ち着いて切り返したつもりだが、不満が目つきに表れる。
一番、旦那の側にいた深読みの鉄と言われた男にそんなことが読めないはずがない。それなのになぜ自分に訊くのか政には解せなかった。
鉄「何か知ってることがあるんじゃねぇのか」
政「そりゃ、旦那の話についちゃあ、いろんな話があっしの耳に入ってきます。あることないこと入ってきますが、裏が取れねぇんですよ」
鉄「なんで裏が取れねぇんだ」
政はその言葉に我慢できなくなった。
政「兄貴。何を言ってるんです。この村の中で、あっしら二人が旦那の下で動いているってことは皆が知ってるんですよ。誰が何を言ったか旦那に筒抜けなのがわかってて、誰が話してくれるってんです。どうやって旦那絡みの話の裏を取れってんですかい」
鉄「……」
一息ついても収まらない政が続けた
政「それにですよ。裏が取れないネタを仕入れたとして、一体兄貴に何ができるんです。読み様がねぇでしょう。いや、話の裏が取れてたとしても、あっしらには動きようがないんですよ」
そういう政の眼差しから目をそらした鉄は腕を組んで天井を見上げた。その夜の霞は混んでいて誰も二人のやり取りに気がつく客はいなかった。
続く
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