切り絵

浮世絵を切り絵に

広重 富士三十六景 相模江之鳥入口

2015年08月02日 | Weblog

相模江之鳥入口」 (神奈川県藤沢市)                          

江の島は砂嘴で本土とつながった陸繋島で、弁財天をまつる江島神社が鎮座されている。江戸から近く、風光明媚な景勝地だったこともあって、江の島は金運や芸事の上達を祈る参詣人でにぎわい、浮世絵の格好の題材となっていた。本図は江の島側から北に向かって富士山を望んでいる。ここに描かれる鳥居は文政四年(1821)に参道入口に建立されたもので、「青銅の鳥居」として今も親しまれている。揃いの着物の女性三人連れは、音曲を習う人々の一行と見える。鳥居の右側の脚は画面外にはみ出し、左手の茶屋も軒先が見えるのみです。晩年の広重は画面構成に制限のある縦構図を用いるにあたり、モティーフの一部をトリミングすることで、かえって画面の外側への広がりを暗示する手法を好んでいた。配色では、紫の効果的な使用が目を引き、女性たちの着物の柄と茶屋の暖簾、そして富士山の左右に施されたぼかしが呼応しあい、近景と遠景を緊密に結びつけている。広重が描きたかったのは、鳥居越しに富士山をのぞき見る視角の面白さだったであろう。この方向から見ると、弁財天のための鳥居があたかも富士山を崇めているかのようだ。

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