録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

私的録画保証金の法的根拠について

2009-11-12 22:25:41 | B-CAS&規制撤廃運動
昨日、半ば怒りに任せてあまり調べもせずに「私的録音録画補償金に法的根拠はない」と書いたわたしですが、引用先も他も書かなかっただけで、著作権法内に私的録音録画補償金の項目は存在したようなのです。
いくつか参照できるところはありますが、せっかくなので頂いた情報部分を貼ってみましょうか。

著作権 第五章 私的録音録画補償金


他には、社団法人著作権情報センター内の記事など


先日の記事では、根拠もなしに補償金の法的解釈を書いてしまい、まことに申し訳ありませんでした。少なくとも、私的録音録画補償金に関して法的根拠は存在するようです。

ただし、この著作権法第百四条の二~十、第五章「私的録音録画補償金」の項には、録画録音補償金の対象物に関しては特になく、第三十条(私的使用のための複製)において定義されています。該当部分を引用してみましょう。

2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

よく読んでみましょう。あくまで対象となるものは、"デジタル方式の録画又は録音"です。デジタル放送に対し、われわれが行っているのはデジタル方式の録画又は録音でしょうか? 慣例上で録画といっていますが、実際にはデジタル波をそのまま保存しているのみですよね。アナログ放送をデジタルに変換して録画する場合と、デジタル放送の放送波をそのまま保存すケースは、技術的にはまったく異なる方法です。この法律に従う限り、「アナログ放送をデジタルに変換して録画ないし録音を行う」あるいは「なんらかの方法でアナログ化した映像をもう一度デジタル化して保存する」場合に限られるのです! と、なると、東芝・パナソニックが厳密に私的録画補償金か逃れるには、アナログの入力端子を省く必要があったのではないか、と思われます(^^;) ここを付かれると若干弱いかなぁ・・・って、わたしがSARVHに塩を送ってどうする!? ただ、もちろんデジタル放送のアナログ入力をまったく受け付けない仕様になっていれば話は別ですが。

ただし、そういう追求の仕方でのなりふり構わぬ勝ち方ならば、逆に録音録画補償金は崩壊します。なにせ、デジタル放送の保存が録画でないと定義されれば、当然ですがCDのダビングもデジタル録音ではないとなります。録画と録音の著作権から見た対象は片や「お金を払って購入したCD」、片や「放送された番組」とまったくことなりますが、ほかのメディアにコピーする場合はどちらも同じ「デジタルデータのコピー」に過ぎません。第百四条の四「当該特定機器又は特定記録媒体について定められた額の私的録音録画補償金の支払の請求があつた場合には、当該私的録音録画補償金を支払わなければならない。」とはあるのですが、メディアに直接録画するわけでもないので、これも支払い義務がなくなってしまいます。いや~補償金なんてモロイものですねぇ。若干こじつけくさいですが、法律なんてこじつけた方の勝ちですよ。
ついでに言えば、第三十条には「政令で定めるものにより」という文があり、それに従う機器および記録媒体でなければならないことを第百四条の四で認めており、政令が「"アナログチューナーを搭載していないビデオレコーダー等”(クオート内の表現は通知に書かれている原文のまま)について、録画補償金に関する関係者意見の隔たりが大きいため、“その取扱について検討し、政令の見直しを含む必要な措置を適切に講ずること”」とハッキリと書いている以上、現状ではこの法律をSARVHのよりどころにすることはできません。
なお、ここで考えられる問題点として、AVCまたはVR方式に圧縮しながらの同時保存はどうなるのか、ということですが、今回の機種ではAVCはないにしてもVRはあると思われます。その場合、現在の政令では録画の扱いとはなっていませんが、録画としてもいいかも知れません。ただし、直接ではなく追っかけ方式のトランスコード技術を採用することで(つまり、同時保存、最後にTSを削除、とするなら)回避できる問題です。

わたしの解釈
「デジタル放送専用機も当然補償金の対象内」という見解は明らかに間違っており、仮に対象となるとしても、少なくとも審議会に基づき、文化庁長官レベルの判断が、必要であるのは明白です。課長では話になりません。
どうしてもデジタル放送専用機を対象としたのなら、そもそも誰かの判断ではなく、私的録音録画補償金該当部分の大幅な改定が必要(録音・録画に放送波の直接保存を含める、の項目を含めるなど)です。

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24 コメント

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Unknown (ゴリ)
2009-11-12 23:32:46
う~ん(-"-;) 法律の解釈って難しいですね。自分も著作権法を一通り調べてみましたけど、難しくてよくわかりませんでした(^^;
今回の裁判の件ですけど、個人的にはMIAUの津田さんの「B-CASが廃止されれば補償金を認めるという考えはある」の意見に一票って感じですね。地デジの録画規制がなくなるんだったら、補償金を認めてもいいかなって思います。
もちろん、録画規制を残すんだったら、補償金は大反対ですね。
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Unknown (krmmk3)
2009-11-12 23:58:37
>ゴリさん
わたしも専門的に学んだことがあるわけではないので大変でした。法律の文って、学者とか弁護士みたいな専門家だけが解釈できればいいと思って書いているとしか思えない書き方してますね。
個人的にはそれでもかなり著作権側に有利な落としどころになるので賛成しかねるのですが、規制なしなら補償金もあり、という考え方が本来出てきても当然ですよね。著作権側の主張に誰も賛成しないのは、著作者と消費者の関係が100対0以外認めない、とし続けているからと考えています。
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krmmk3さんの解釈には少し違和感が (N.Shim@)
2009-11-13 00:08:10
単純にアナログかデジタルかの2択で捉えた場合、ビデオテープとフィルム、LDなんかはアナログだと思いますが、HDDとDVD-R/RW/RAM等の保存ファイルはデジタルだと思います。
「放送波の記録はデジタル録画ではない」という場合、それはストリームビットの固まりをファイル形式で落とすのではなく、波としての電波を波形で記録するような方式(何か機械があれば、同じ波を送出できるような感じ?)でないと、ちょっと曲解ではないかなぁという気がします。
それと、krmmk3さんは”「なんらかの方法でアナログ化した映像をもう一度デジタル化して保存する」場合に限られる”と定義しているので、TSでの保存は対象外でも、DRとかVRとか呼ばれるMPEG2やスカパー!HD以外でMPEG4-AVCに再エンコードしての保存[内部的に一度「映像に復号(これはアナログ化と考えても良いかと)した上で、その映像を別な形式のデジタルデータとして生成している]はその定義に該当するのではないでしょうか。
(私の感覚だと、元デジタルデータ形式のまま端折る「トランスコード」は、この定義には該当しないと思う)

私の解釈としては、「デジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体」に私的利用の為に録画・録音をした場合は、相当額の補償金を払え、というのであれば、レコーダ内の取り出すことが出来ないHDDを記録媒体と見なすかどうか、ということになるのではないかと思います。
以前の議論の中で「録画自体が私的利用のためだろう」という意見が出たのは、「中から物理的には取り出せない」場合でも「記録媒体」と見なしたいから、なんだと思います。

昔ッからコンピュータをやってる私としては、主記憶領域(メインメモリ)でも記録媒体「ではない」とは言いづらいんですが、一般的な狭義の解釈でなら、可搬出来ない保存場所を「記録媒体」とは言わないんじゃないですかねぇ。
(レコーダ自体を運べるじゃん、って混ぜっ返しはナシで)

ということで、TSのみで保存できてそこから取り出せない、って条件の場合はシロ。
DR/VR録画で取り出し可能メディアに書ける場合は、メディアに対する補償金は妥当。
それ以外の条件の場合は法解釈のバトル。

ってのが、私の今の判断です。
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Unknown (krmmk3)
2009-11-13 00:42:56
>N.Shim@さん
その点まったく気にならなかったわけではありません。AVC圧縮に関しては「アレ? 直接圧縮しながらだと録画に相当しちゃうかな?」という懸念はありました。ただ、今回の機種は東芝・パナソニックともにAVCはないし、いいかな? と考えました。VRはちょっと忘れていたのですが、VR圧縮方式は当然ありますよね。それは純粋にわたしのミスです。ちょっと直します。なお、わたしもトランスコードは録画に相当しないと思います。
もともとはレコーダー内部のHDDは対象ではなかったはずなんですよ。HDDだけではタイムシフトにしかならないわけですから当然ですよね。それをDVDなりBDに移動させるのは、明らかに補償金の二重取りですよね。HDD自体は完全にはずす、というのは是も非もなく明確になるべきと思います。
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Unknown (sifo)
2009-11-13 00:50:10
N.Shim@さんの言うとおりデジタル放送のダビングはどう考えてもデジタル方式の録画でしょう。

ただし、書いていらっしゃる通り政令に定められた機器であることが、対象なので今回の裁判はここが争点になります。
政令はBDが対象となった時のものが下記です。
http://www.jeita.or.jp/japanese/file/090522.pdf

読んでもらえばわかると思いますが「アナログデジ変換が行われた映像を記録する機器」を対象としています。
なのでkrmmk3さんの解釈はその意味で的を射ているんですよ。
したがって違法性は現在のところないという意見は私もここの住人方と一致しますね。

それでこの通知の中にはちゃんと「アナログチューナー非搭載レコーダ出荷時に問題が顕在化して、
メーカーの協力を得られなくなるからその時は適切に措置を講じますよ」と書いてあります。
先日言った通り、問題はこの「適切な措置」を怠っている文化庁なんですよ。
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補償金制度の改革を (str)
2009-11-13 00:56:45
法律を読み返してみても、あいまいすぎて未だにどう解釈していいかわかりません。
スポンサーをつけて無料放送しているのに、さらに補償金までつけて二重取りしているところがおかしく思います。
要は損失のある部分を補償すればいいのだから、そろそろ地デジや無料放送のBSデジタルは録画フリーにして、ネットにつながないと有料放送を録画できないようにするべきだと
思います。
そこで録画した分だけ、録画補償金支払えば済むことなのではないでしょうか?

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Unknown (krmmk3)
2009-11-13 01:06:41
>sifoさん
著作権法における該当機器の解釈は政令に基づくものですから、最新の政令であるそちらの文がいま遵守しなければならない考え方ですね。
今回著作権法を読んで思ったのが、想像以上に文化庁、ただし、長官クラスですが、の解釈の重要性が高いことでした。と、なると、SARVHが文句をつけるべき相手は文化庁のトップクラスですよね。結局、連中はいうほど大事にはしたくない、厳密な解釈を持ちたくないだけではないでしょうか。

>strさん
難しいですよね。だからこそ、誰かがはっきりと言ってやらなければならないのです。
このお考えは、EPNと呼ばれた、一度は決まりかけた考え方と近いですよね。ところが、どうしても一代限りでコピーのコピーを許したくないやつらがどこかにおりまして、そいつらが字面だけ緩和した感のあるダビ10という方法にしてしまい、EPNすらつぶしてしまったんです。どう考えてもそれはSARVHの関係者しかありえないのですが・・・。
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Unknown (sifo)
2009-11-13 01:07:59
ちょっと追記です。
http://www.jeita.or.jp/cgi-bin/topics/detail.cgi?n=1702
最後の部分にある通り、文化庁はアナログチューナー非搭載機器も著作権法施行令第1条第2項第3号の特定機器に該当するという見解を示しています。
まあ確かに放送局側でアナログデジタル変換したといえばそうかもしれませんよね。
くどいようですが今回の訴訟の争点はここですよ。

>strさん

録画補償金が本来どうあるべきかという議論と
現行法がどうなっているかという議論とは
別々に考えた方がよろしいですよ
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Unknown (ATX5000)
2009-11-13 01:10:49
裁判が権利者・ユーザー・メーカーのもつれた糸を解きほぐす契機になってくれたらいいよね。まぁ、もつれ過ぎた状態にしり込みする場合もありうるか・・・ユーザーとメーカーは似たようなスタンスだが、大手メディアは権利者寄りだろうな。さてこの件に関して正しく報道はなされるだろうか。
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Unknown (krmmk3)
2009-11-13 01:19:46
>sifoさん
文化庁の出した具体的な声明文を読んでいなかったので、参考になりました。最新の政令であれだけ何度も「アナログデジタル変換が行われたもの」と書いているにもかかわらず、ただSARVH側の言うことをハイハイと聞いて書いただけにしか見えないですね。たぶん、あまり詳しくない人なのでしょう。

>ATX5000さん
今のところ、最終的にお金を払うユーザーの立場だけは無視されてますね。MIAUの発言にもあったように、消費者に直接かかわる問題なのに。どちらに有利に発言するにしてもマスコミは報道しなければならない問題ですよね。やっぱり無視されてますが。無視するのが一番著作権側に都合がいいと考えているのでしょうか。
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