録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

妖怪巨大女とリメイク

2019-01-06 00:18:35 | 特撮・モンスター映画
だいぶ前、映画"進撃の巨人 ATTACK ON TITAN"公開時にそれを見に行って「怪獣映画を見に行ったつもりだったら妖怪映画だった」「巨人の気味の悪さが異様」と評したことがあります。あの映画は前編に過ぎず、後編「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド」があったわけなんですが、実は見に行ってません。前編が比較的切りのいいところで終わったこと、"シン・ゴジラ"の前哨としての手ごたえを見るには前編だけで十分だったこと、別に原作漫画のファンとかではなく(というよりほとんど読んでない)最後まで付き合いたいという気にならなかったことがあります。それらはすべて「巨人描写が気味が悪いので、あれ以上積極的に見る気にならない」ことに集約されるわけですが。気味が悪いと思われるのは制作側から見れば想定通り、なんでしょうが、エンターテインメントとして楽しく見る"不気味さ"ではなく"気味が悪い"だったので、その手の映画を好むわたしでも敬遠してしまったのですが。「まぁ"シン・ゴジラ"もヒットしたし、「シン・ゴジラと同じスタッフが作った映画」としてどこかで放送するでしょ」と楽観視してはや数年。結局忘れるほど見る機会がなく、もちろんディスクも買う気になりませんでした。ひょっとしたらCSのどこかで放送していたのかも知れませんが、あったとしても見つけられるほど宣伝されていなかったんでしょう。で、忘れるほどたった昨年末、NECOでようやく進撃の巨人二部作が放送されることになりました。ただ、一回目の放送は衛星放送特融の現象で録画に失敗してしまいましたが、リピートでなんとか確保。まぁまだ見ていませんし、見た中身についてブログで書くつもりもないのですが、さすがに放送波を液晶で見るとかなり映像がCG臭くなるので前編だけでも劇場で見るほど気味が悪くはならないようなので、少し安心して見られそう。それがいいのか悪いのかは分かりませんが。

進撃の巨人に登場する巨人は造形物で表現されていたり、CG加工でデフォルメされていたりでそのままの人間ではありませんでした。が、人間をそのまま巨人として扱う映画は少なからず存在します。以前よく書いていたバート・I・ゴードン監督の作品にはその系統の作品が多く、まだ日本語DVD化されていない作品もあるのでぜひ出してほしいものですが、今回は他の監督作品を取り上げます。巨人は人間をそのまま合成すればとりあえずなんとかなりますので、最低限のメイクで怪獣表現が出来るので予算の削減につながりますから、低予算でとりあえず劇場を埋められるハッタリの利いたB級映画を作るには向いているんですよ。それだけに実はろくなものがなく、バート・I・ゴードン作品など他の巨人映画と比べれば上等な部類に入ります。その中でも「ひどい」「しょうもない」と言われるのが巨大女を描いた作品。男が巨大化するなら上半身裸のムキムキ筋肉でそれなりに破壊や暴力に説得力のある絵を作れますが、女の巨大化となると、もうごく一部の特殊なフェチかサディスティック趣味を満たすものにしかならないわけで、設定だけで最低映画扱いを食らうわけです。もちろん大好物です。その最初の一本と言われるのが先日発売になった"妖怪巨大女"です。

妖怪巨大女 [DVD]
アリソン・ヘイズ,ウィリアム・ハドソン,イヴェット・ヴィッカーズ,ロイ・ゴードン
復刻シネマライブラリー


最低映画の一本にあげられる本作ながら、監督はネイサン・ハーツ名義ではありますがその正体はネイサン・ジュラン。わたしが以前絶賛した「極地からの怪物 大カマキリの脅威」をはじめ、「地球へ2千万マイル」「シンバッド七回目の航海」「H.G.ウェルズのS.F.月世界探険」といった洋物特撮映画ファンにはおなじみの名作を監督した人で、美術部門ではアカデミー賞を受賞したことさえある監督さんです。まぁ大した準備もなく、短期間で作ったのだと思いますが。
展開はそれほど面白いわけではありません。謎のUFOや巨人の目撃の話はありますが、大半はハリーの浮気の話です。ナンシーと結婚したのはあくまで金目当てで愛のないハーリーは愛人のハニーと浮気三昧。金だけ取り上げてナンシーを切り離すため、暗殺さえ企てますが執事に感づかれ・・・。というまぁ大して盛り上がらない話が中盤まで続きます。後半、UFOから現れた巨人にナンシーがとらわれます。それをいいことにハリーはナンシーを見捨てて逃げてしまい、そのまま家の荷物をまとめて出て行ってしまいます(財産は?)。ナンシーはその後いつの間にか街に戻され、病院へ運ばれますが、薬の過剰投与でナンシーを殺そうとやってきたハリーが部屋に入ってくると、なぜか巨大化していたのでした。やがてナンシーは目が覚め、浮気のハリーを懲らしめるべく巨体を駆使して捕まえてしまう・・・。というよくわからないストーリーです。なんでナンシーが巨大化したのか説明がなく、よくわかりません。ただ、巨人(おそらく宇宙人)の載っていたUFOにはどう見ても等身大の人間が通るための通路や出入り口が存在します。おそらくUFO内には巨大・縮小化装置があり、状況に応じて体のサイズを変えていたのでしょう。ナンシーは首から下げていた巨大ダイヤのペンダントを狙ってさらわれました。それを外して自分のものにするために宇宙人は一度縮小化、そのあと元に戻ろうとしたときに、たまたまその巨大化のエネルギーか何かを浴びてしまったのでしょう。後で暴れらることを恐れた宇宙人に巨大化を解除されることなく追い出されたと思われます。宇宙人からすれば地球人に対し面倒な縮小化などやってやる必要を感じなかったでしょうし、地球がどう混乱しようと知ったこともなかったでしょうから。
特撮は、残念ながら手抜きの一言。巨人表現の大半は合成なのですが、フィルム同士を重ね合わせただけの単純なオーバーラップ方式なので画の構成には無頓着、巨人も半透明で向こう側の背景が透けて見えるため、全然巨人感がありません。ここら辺が最低映画といわれる所以でしょう。ただ一か所だけ、ナンシーとは別のUFOに乗っていた巨人が調査に来た保安官に攻撃を受けた腹いせに彼らの乗ってきた自動車を持ち上げたあと投げつけて壊してしまうシーンがあるのですが、自動車をつかもうと覆いかぶさる手の動きがなぜかリアル。空いていた窓枠に親指を差し込んでつかもうとする動きがかなり自然で、コマ送りで繰り返し見入ってしまったほどです。間違いなく大きな造形の手を押し込むだけの単純な特撮なのですが、作られた腕の指の硬さ・柔らかさ・重さのバランスがちょうどよく、多分たまたまいい動きになってしまったのでしょう。この箇所以外はそこまで自然な動きはしていませんでしたし。
本作の映画の原題は"ATTACK OF THE 50FT.WOMAN"。タイトルでは身長は50フィート、約15mとされています。パッケージの姿はどうみても15mくらいじゃすまない30mはありそうですが、ポスターでハッタリかますのはよくあることなので置いておきましょう。先にも書きました通り本作ではナンシー以外にUFOに乗った巨大な宇宙人が登場します。この宇宙人のサイズは日本語字幕では10m、登場人物のセリフでは34フィートと推測されています。1フィート約30cm強ですから34フィートで10m、タイトルのナンシーより小さいのです。ところが、先に自動車を持ち上げるときに使った手は巨大ナンシーの手にも流用されています。さらにナンシーはハリーを捕まえる際にホテルに迫るシーンがあり、それはミニチュアで再現されているのですが2階建てでしかありません。通常の家より一階ごとの高さはかなり高いとしても、それと巨大ナンシーはほとんど同じ高さですからその身長はやはり10m、34フィートを想定したとしか思えないのですが。ちゃんと手と家のサイズが統一されているあたりはさすが美術でアカデミー賞を受賞したことのあるネイサン・ジュラン監督ですが、だからこそタイトルの50フィートが違うとしか思えません。タイトルは後付けなんでしょうかねぇ。

なお、”妖怪巨大女"はのちにリメイクされました。ただし、劇場公開用ではなく、テレビ映画として、です。原題はほぼ同じ"ATTACK of the 50foot Woman"ですが、日本では「愛しのジャイアントウーマン」のタイトルでDVDがリリースされました。そのお値段なんと500円! しかも本屋ルートです。本屋で売っている500円DVDと言えば著作権切れの古い作品が定番ですが、"ATTACK~"は1958年、リメイクの方は1993年の公開ですから映像著作権期間、70年にはまだ達していません。そんな作品を500円で出そうと思っただけで素晴らしい企画だと思います。原作ではナンシーは元に戻れず、死亡しますが、リメイクでは冒頭ナンシーの語りから始まるようにナンシーはUFOからの光線で元に戻ります。特撮は、さすがに時代がたっていて流用できる素材もたくさんあったでしょうからテレビ用の低予算でもそこそこ見られるものになっています。それがかえって平凡な作品に落としてしまったのは仕方ない話ですね。ちなみに巨大化するナンシーを演じるのはダリル・ハンナ。SF映画の名作といわれる"ブレードランナー"でレプリカントの一人を演じた人です。”愛しのジャイアントウーマン"では共同制作としてもクレジットされており、自分で企画して自分で汚れ役をやってるわけです、有名な女優なのに・・・。

リメイクが作られたように"妖怪巨大女"はいろんな意味で業界に衝撃を与え、派生映画も作られました。比較的有名なのが妖怪巨大女のリメイクを企画してうまくいかず、代わりに作った"Attack of the 60feet Centerfolds"。センターフォールドとは中綴じ方式の雑誌、あるいはその中央部分のこと。見開きで一枚の紙が使えるため、大きなグラビア写真やポスターを織り込むことがよくあります。この作品の巨大女はそのグラビア写真のモデルの座を争う二人で、両者とも巨大化して戦うようです。残念ながら見たことないですが、多分"妖怪巨大女"よりはるかに見るところはないでしょう。さらにB級映画の帝王、ロジャー・コーマンに目を付けられ、そのまたリメイクが作られるわけですが、さすがにそこまで来るとわたしでもついていきたくなくなります。

これらと比べると、日本の巨大女の代表格、ウルトラマン「禁じられた言葉」の巨大フジ隊員とか、ウルトラマンタロウ「ウルトラ父子餅つき大作戦!」の巨大南夕子辺りは格段にまともな演出がなされたというべきでしょう。たとえ怪獣図鑑の中で素顔で他の怪獣と並んで掲載されることが何十年と続いているとしても。
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2 コメント

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1958年ですか・・・ (ドラピー)
2019-01-16 17:00:51
おはこんばんちは。

『ATTACK OF THE 50ft. WOMAN』は1958年ですか・・・。
いや〜、俄然観たくなってきました。
とりあえずトレーラーだけでも検索して観てみようかと思います。

諸外国では未だにかなり酷い"特撮"の、素人の作品かと思うような映像もあるので、当時のアメリカの低予算の巨大化人間がどのように表現されてるかなんだかワクワクします(笑)

この手の作品をまさに"カウチポテト"でニヤニヤしながら観るのが大好きなのです(笑)←
Unknown (krmmk3)
2019-01-17 00:13:58
>ドラピーさん
かなり古いものでかつ誰が上げたか分からないやつがYoutubeにありますね。ほかにも海外の方が「怪獣映画の歴史」とかのタイトルで他の映画と一緒に一部が収録されてます。
監督がちゃんとした映画の撮れる人なのでミニチュアや造形はよくできてます。合成はひどいですけどね。その酷さを楽しむのがB級ヲタの醍醐味(笑)

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