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差別化するなら10倍

2007-06-12 | 経営と戦略
また今週ダイヤモンドハーバードビジネスの岩崎編集長との打ち合わせがあり、頭がくらくらして熱が出そうなのですが、同誌の今月号にとてもインパクトのある論文を見つけました。

開発者と消費者の間にある深い溝
新製品と消費者行動の経済学
ハーバード・ビジネススクール教授 ジョン T. グルビル
http://www.dhbr.net/magazine/article/200707_s02.html

この論文のテーマは、なぜ新製品やイノベーションは失敗することが多いか(著者によると失敗する確率は、分野によって違いはあるが40%~90%!!ということです)。

著者は2002年にノーベル経済学賞を受賞したカーネマンの研究から始めます。お題は、なぜ、どのように、人間は経済合理的な行動から逸脱するかというものです。カーネマンの「損失回避」理論は、簡単にいうと「損失は利得より大きく見える」ということです。

ここから「所有効果」というものが生まれます。すなわち、人間は所有しているものを高く評価するということです。実験によれば、いちど所有したものを手放すために要求する価値は、所有コストの3倍から4倍にあたるといいます。

この効果から導き出されるのは衝撃的な心理的バイアスです。すなわち、新製品を購入する際には、もちろんそれによって得られる新たな効用がありますが、一方で失うものもある。その失うものの価値は、すでに所有している状態にあるので3倍に評価されるというものです。

さらにグルビルは開発する側にも心理的バイアスがあるといいます。それは開発者がそのプロダクトに入れ込むがゆえに、その効用を3倍に過剰評価するというものです。

そうして、消費者がすでに普及しているものを3倍過大評価し、開発者がイノベーションの利点を3倍過大評価するので、開発者と消費者の間には9倍のギャップがあると論じます。

これはわたしの経験から見ても結構あたっていると思います。したがって、確実にイノベーションをユーザーに受け入れてもらうためには、今のモノより10倍の効用がないとだめだということになります。そこまでの効用がないのであれば、消費者に要求される行動の修正をできるだけ小幅に抑えなくてはなりません。

この理論、結構応用範囲が広そうですね。
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