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きょうも小屋日和

小屋日記17 失われた小屋を求めて

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◯月◯日
この日記のいいところは、新旧入り混じって時間がバラバラなところです。
「そういえば、あの小屋のことを書いてみようかな」と思いついたら、3年前のことでも先週のことでも、まるで昨日のことのように日付などおかまいなしに書いています。
つまり、「いい」というのは書き手である私にとって「都合がいい」ということであって、読み手にとってではないところが少々申し訳ないのですが、そんなことを気にしながら読んでいる人は多分いないでしょうから、そこもまたいいところです。

そもそも私が撮っている小屋はいつからそこに建っているかも分からないですし、私と出会ったその日はたまたまあったけれど、不要になったら翌日には撤去されるかもしれません。そうならなくても、いつかは朽ちて周囲から忘れ去られていきます。
小屋は私たちが生きている時間軸からは遊離した余白のような存在だと私は思っています。

なぜこんな話を書いているのかというと、今年2020年2月のマニアフェスタの会場で私のZINEを手にとってくださった来場者が「東京郊外の車通りの多い道端で、こんな場所に?という変なところに小屋があるよ」と教えてくれたことを思い出したからです。
その時にGoogle mapの航空写真を見ながら一緒に場所を確認し、今度行ってみますと約束したのですが、コロナのこともあってそのままになっていました。
ようやく緊急事態宣言が解除された直後の6月の上旬、天気の良い日に、多摩川近くのその場所を訪ねました。


結論からいうと、その小屋はありませんでした。

実は行く前からGoogle mapで確認して、小屋が既にないことは知ってはいたのです。
そうでありながらも足を運ばないという選択肢は私の中にありませんでした。

理由はいくつかあるのですが、マニアフェスタの会場で情報を提供してくれた方との約束を果たさなければ、ということがひとつ。

もうひとつは、通りすがりの人に強く印象を残すような小屋のロケーションを実際にこの目で確認したかったこと。

そして最後は些細なことですが、現場の「今」をこの目で見てみたいという欲求です。
自室の13インチモニター内で小屋が既にないことは確認できていますが、それで「はい、おしまい」というのでは、なんだかつまらない。ストリートビューで見られる最新の画像は2019年4月ですので既に1年以上の時間が経過しています。ひょっとしたら2020年6月時点で風景に変化がおきているかもしれません。

それでは、見ていきましょう。
航空写真と3Dにはまだ在りし日の小屋が建っています。
どこに小屋があるか、お分かりになりますか?

場所は東京郊外の住宅街です。
分かりづらいのですが、画像中央、駐車場手前、二つの横断歩道に挟まれて小屋が建っています(いました)。
視点を反対側に移動させた下の画像で見ると、赤い矢印の先です。

今度は俯瞰写真です。確かに、こんな住宅街で片側2車線の交差点に小屋が取り残されていたのは不思議で、印象にも残るはずです。



地上に降りてみましょう。
ストリートビューの優れている点は、複数回撮影している場所ではデータが上書き消去されずに、過去の画像もみられるように残していることです。
実は今回詳細に見ているうちに、2018年9月から10月にかけて通過した台風21号か24号によって小屋が倒壊したようだということまでわかりました。
これは2018年9月以前の小屋がまだ建っていた頃のストリートビュー画像です。
品のない選挙ポスターがベタベタと貼られているのが、小屋を愛する者としてはちょっと悲しいところです(注:候補者に品がないということでは一切なく、選挙ポスターにそもそも品を感じないということです)。

それはさておき、小屋からパイプが地面に出ていて、電線が小屋に延びていることが画像から確認できます。ということは、これは地下から水を汲み上げるポンプ小屋のようです。
このことから、小屋の周囲には以前は田園があったと推察できます。宅地開発が進み、道路が拡幅される中で、小屋と右側の柵に囲まれた土地だけが何かの事情で取り残され、現在に至っていると考えて差し支えないでしょう。

今度は国土地理院の航空写真を見てみます。
2009年ごろの画像です。今とほとんど変わりませんね。


1988-1990年ごろ、今から約30年前になると、矢印の場所は緑色ですので、どうやらこの頃はまだ田んぼだったようです。小屋らしき影が映っていますので、ポンプが役割を果たしていたと考えていいでしょう。


もう少しさかのぼってみましょう。1974-1978年の間です。周辺に田畑がまだら模様で残っています。小屋があるかどうかは、残念ながらこの写真ではわかりません。

そして国土地理院のHPから無料で掲載できる一番古い写真は今から50〜60年ほど前のもので、1961-1969年の間の写真です。
同じ場所とは思えませんが、位置に間違いはありません。上の写真と見比べてみてください。高度経済成長で郊外に開発の波が押し寄せたのが見て取れます。
あのポンプ小屋の所有者も、かつてこの風景の中で稲を育てていたのでしょうか。
ひとつ前の写真で「田んぼがまだら模様で残ってい」ると表現しましたが、1960年代からの視点で語るなら1974-1978年は「田畑が住宅街に侵食された」という表現になるでしょう。
そういえば、スタジオジブリの「平成狸合戦ぽんぽこ」の舞台はこの周辺の多摩丘陵でした。

過去の検証の旅はここまでです。

2020年6月の小屋があった場所周辺を歩きましょう。
交差点を挟んで反対側の小道に暗渠を見つけました。
小屋はこの先の交差点を渡ったところにありました。

そして交差点を突っ切り、100mも離れていない場所には緑道の看板が立っていました。
かつてここには小川か用水路が流れ、周囲の田んぼに水を行き渡らせていたようです。開発が進む中で川は蓋され、田んぼに水を汲み上げるためのポンプが必要になり小屋が建てられたのでしょう。
この日、2019年4月のストリートビューの画像に比べて大きな変化は見つけられませんでした。
警察署を舞台にしたテレビドラマで「現場百回」という言葉があった気がしますが、そんな大袈裟なことでなくとも、やはり現場を訪ねなければ分からないことは必ずあります。PCモニターを通してでは、緑道も暗渠も見つけられませんでした。

小屋があった場所には夏草が茂り、小さいながらも木が成長を始めていました。ひょっとしたら、数年後には信号待ちの人々が休めるような木陰ができているかもしれません。
新しい風景がはじまっています。

koya_diaryさんの出品

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