story・・小さな物語              那覇新一

小説・散文・詩などです。
那覇新一として故東淵修師主宰、近藤摩耶氏発行の「銀河詩手帖」に投稿することもあります。

展望車の女(ひと)

2022年02月05日 09時57分41秒 | 小説

 

名古屋近くの企業へ出張に行った。
その企業は名古屋市内中心部に本社があり、知多半島にちょっと大きめの工場を持っている自動車部品製造会社だ。

名古屋駅の近くで宿が取れればよいのだが、適度な値段のビジネスホテルはどこにあたっても満室で、高級ホテルでは会社の経費では落ちない。
仕方がないから、思い切って郊外のホテルを探したが、知多方面はどこも満室でやむなく犬山市のホテルに滞在して、名古屋市内の本社と、知多の工場に数日ずつ通うことにした。
会社の経費では、高級ホテルの宿代は出ないが、現地での移動費は出る。
名鉄電車の運賃なんて数百円のもので、たかが知れているというわけだ。

だが、工場に向かわねばならないときは、電車での移動時間が案外長くなることが分かった。
しかも朝早い時刻だが、犬山からの急行電車はすでにラッシュの様相で、座るどころか、掴まるものさえない有様、途中の名古屋で大勢の乗客が降りるけれども、同じくらい大勢の乗客が乗ってきて電車の中でひしめき合っている様相は変わりがない・・これで1時間15分ほどの時間が必要で、僕はこの状況に一日で辟易してしまった。
銀色や赤色の名鉄電車は瀟洒だが電車の混雑は関西のどの電車よりも酷いのではないだろうか。

翌朝は数本早い時刻の電車にした。
急行として犬山駅から現地へ直通する最初の電車だ。
朝は早くなるが少しでも空いていないかと思ったのだ。

すると、急行なのに座席指定の特別車両がついているという。
名鉄の座席指定料金は360円と割安だ。
ならば、その特別車に乗ろうと駅の窓口に聞いてみた。
「はい、特別車ありますよ、普通の座席でよいですか?」
女性の駅員はそんなことを言う。
「普通じゃないってどんな座席ですか?」
興味本位で聞いてみた。
「展望車、パノラマスーパーです」
そう言えば名鉄特急に、流線形だが爬虫類の顔に見える不思議なデザインの電車をたまに見ることを思い出した。
あの前頭部が展望車なのだろう。
「そこでお願いします!」僕はそう言ってミューチケットなる座席指定券を出してもらった。
ミューチケットとは特急券だと思っていたがそういえば特急には自由席もあるし、指定席のない特急電車もあるようだ。
つまり急行電車が、全部一般の電車ではなく指定席があっても良いという事だろうか。

どうでもいいが、とにかくこれで犬山から知多半田まで1時間15分の座席は確保できたことになる。
ホームへ降りるとすぐに電車は来た。
やはりあの爬虫類のような流線形が先頭の、赤と白に塗られた電車だ。
まだ夜の明けぬ犬山駅のホームにヘッドライトを輝かせ、そして展望室からの灯りをまき散らしながら入ってくる。
なかなかカッコいいではないか。

一番前の扉から車内へ入り、チケットと座席を照らし合わせる。
1Dの座席だ。
一番前、展望席の右側だ。
この時点では展望室にはほかに3人しか入っていなかった。

名古屋まで途中三つしか停まらない特急に比せばさすがに急行はよく停まる。
停車駅を出て一気に加速して速度が上がったなと思えばもうブレーキだ。
それでも、展望室からの眺めは良い。
景色というほどの物はなく、ただ朝の通勤風景しか見えないのだが、夜の明ける前から残念ながらこの日は小雨で、太陽の上がる昇るさまは見られなかったのだが、小雨が大きな前面窓にあたりながらも、少しずつあたりが明るくなっていく中を電車は駆けていく。

二つ目の停車駅だろうか、この辺りでは展望室への乗客も増えてきた。
すでに自由席の一般車両は満席いや、満員なのだろう。

だが展望室もまだまだ空きがある。
後ろを見ると、窓側ばかり半分ほど埋まっているだけだ。
そこへ、僕の隣席、1Cに女性が座ってきた。
彼女が来た時にまさかそこへ座るとは思わなかった。
赤いコートを着た、セミロングの髪の小柄な女性だ
座席を指定して購入するなら窓側の空いている席にすればいいのにと思ったが、そこはそれ、既に先の駅からの乗客が押さえてしまっている場合もあるだろう。
件の女性は、お辞儀をするでもなく、いきなり尻を座席に下ろす。

座ったかと思えばスマホを取り出して電車の前方にカメラを向けた。
昨今流行りの女性鉄道ファン、鉄子さんだろうか。
だいたい、鉄道ファンというのは礼儀を知らない人が多いと思っている。
ホームで立っている人の前を平気で走り抜けるし、乗換駅では大挙して大きなカメラバッグをもってそれが人にあたっても知らぬ顔で階段を突っ走ったりするし、一度など駅で電車を待っているだけで「邪魔だ」と怒鳴られたこともある。
その時はすぐに目の前に風変わりな団体列車が来たから「なるほど」とは思ったものだが一度傷ついた感情は収まることはない。
僕はそれ以来、鉄道ファンという人種をある意味では野蛮な人たちと認識するようになっていた。

件の女性は、僕の左肩や腕にその人のスマホを持ち上げる腕が当たっているのを気にすることもなく、電車の前にスマホカメラを向けている。
電車はその駅を発車した。
名鉄は良く揺れる。
揺れるたびに女性の腕が僕にあたる。
注意をしたいがなぜか周囲とのコミュニケーションを女性が拒んでいる気がしていた。
反対方向の列車が頻繁に通る。
さすがに朝のラッシュだ。
しかも反対方向の列車もみな混んでいる。

電車が大きく減速しそして揺れた。
女性はバランスを崩したのだろう、僕の方にもたれかかってきた。
「すみません」
小さな可愛い声でそういうのが聞こえる。
コミュニケーションできるじゃないか・・そう思ったが「いえいえ」とだけ答えた。
電車はそこから速度を落としたまま、ゆっくり名古屋都心へ入っていく、
横にはJRの電車や特急、新幹線も見える。

人が大勢乗り降りする駅があった。
だがやはり件の女性はスマホカメラを構えたままた。
そして展望室付きの急行電車は、ゆっくり名古屋の地下線へ入っていく。

名古屋駅で停車して、当然、大半の乗客は入れ替るものと思っていたが、この展望室の乗客は数人がそのまま座っている。
展望席の固定された窓からでも名古屋駅の喧騒は伝わる。
ここから乗ってきた大勢の人を加えて電車は今度は地上へ向かう。

この間も女性はスマホを電車の前に向けたままだ。
電車が金山に着くと、気が済んだのか女性はスマホを鞄にしまい込んだ。
そしてあとは前面を食い入るように見つめている。

金山、神宮前を過ぎても前面展望は良くならず、むしろ、臨海工業地帯のようなところへ入り込んで、都会の下町の様相だ。
反対方向の電車がひっきりなしにすれ違う。
真っ赤な電車もあるが、ステンレスらしい銀色の車体もあるし、赤と白の電車もある。
このバラエティは鉄道ファンには堪らないだろうなと思う。
時刻はそろそろ朝のラッシュのど真ん中に差し掛かっているのだろう。
通過する駅のホームはどこも大勢の客であふれている。

やがて、太田川という高架駅を過ぎたころから車内は落ち着いてきた。
前面窓から田園地帯の広がりが見える。
僕もホッとして展望室の値打ちを楽しむ。
隣の女性は座席の背もたれに体を任すでもなく、食い入るように全面窓を見ている。
肘掛けに腕を置いて身体を支えるという基本的なことをしていないからか、女性はよく僕の身体にあたる。
ときどき「すみません」というが、何も言わないときもある。

やがて電車は小雨の知多半田駅に着いた。
展望室からも、そこから階段を下りた平屋の特別席からも大半の乗客が降りる。
件の女性はまだ乗り続けるようだが、僕が「失礼」と小声で言うと、その時はさっと立って通路に出る僕を出してくれた。
変な人ではないんだ・・と思った。

橋上駅の改札を抜け、僕は一階にあるタクシー乗り場へ向かう。
数日は仕事先まで片道1500円ほどのタクシーの世話になる。
件の女性はこの先、どこまで乗るのだろう。

その日の仕事はかなり厳しく、時間も押してしまい気がついた時にはすっかり夜になってしまっていた。
僕は知多半田の駅にタクシーでつき、犬山へ戻る切符を求める時に、朝に乗ってきた特別車があの女性の一件を除けば快適だったことを思い出し、窓口で特別車のついた列車はないか聞いてみた。
「犬山へ直通で行く特急はこの時刻にはないのですが、金山でお乗り換えすれば全区間を特急の特別車で行けますよ」とのこと、座席指定券の料金は事前に購入すれば乗り換えても同じだという。

赤や銀色の急行電車なら、直通で行けるとも教えてくれたが疲れた体には少しでも快適さが欲しい。
どうやらこの時間の急行電車には特別車は繋いでいないらしいというか、本来、特別車というものは特急電車のものだとのことで、朝の急行電車は例外だったという事だ。

名古屋行き特急にはまだ時間があったが、待ち時間の間に改札の外にあるコンビニで缶ビールとツマミを少し求めた。
座席は指定されているし、疲れた身体を少しでも癒しながらホテルに戻ろうというわけだ。

特別車の連結された特急という事で、朝に乗った急行と同じあの爬虫類のような電車かと思ったが、やってきた特急電車はのっぺりした顔立ちの普通の電車だった。
なんだががっかりするが、快適なのは変わりない。
むしろ広々とした空間が心地よい電車に満足してビールのプルタブを開ける。
疾走する特急電車のジョイントを聴きながらホッと一息をつく。

列車はさほど混んでおらず、乗客はだれしも寛いでいる。
窓の外を見ても真っ暗で、電車の車内が窓ガラスを鏡として映りこむのが見えるだけだ。
だが、闇を走る特急もまた心地が良い。

知多半田の駅員に言われたとおり、30分ほど乗って金山で降りた。
ホームは遅い時間でも多くの人が思い思いに電車を待っている。

接続する犬山方面、新鵜沼行き特急には数分あった。
特別車両は後ろ側になるので、ホームの端の方で電車を待つことになるが、その前にホームの売店で缶ビールを買う。
缶ビールを二本、上着の両ポケットに入れ、後部の特別車乗車位置へ行く。
ふと見ると、赤いオーバーの小柄で、セミロングの髪の女性・・
そうまさに、今朝に隣の席にいたあの女性が立っているのが見えた。

彼女はそこで隣のJR線路のほうを、ただぼうっと見ているようだ。
JRの快速電車が轟音を立てていく。
名鉄はどうもJRとの並行区間ではあまりその成績は芳しくないようだ。

特急電車が入ってきた。
正面は展望車ではないが、スマートな顔つきの電車だ。
この電車だと、後ろに爬虫類顔のあの、展望電車が繋がっているはずだ。

座席指定券=ミューチケットを確認すると、僕の座席は1号車1D・・朝と同じだ。
下車する人を待ち、何人かの乗客のあとに電車に乗り込み、階段を上る展望席のほうへ行く。
良く空いている・・だが、僕が座る予定の1D席の隣、1C席に座ろうとしている人がいる。
朝のあの女性だ。

「すみません」そういいながら僕は窓側に入らせてもらう。
女性は素直にいったん立ち上がり、僕を入れてくれた。
「朝もお会いしましたね」僕は声をかけた。
女性は一瞬、僕の方を見る。
細い顔立ちのなかなかの美人だ。
「そうなんですか?」
「はい、多分、朝の電車で隣同士になって僕は知多半田で降りたのですが」
「ああ・・そういえば・・」
「さっきは金山で電車を待っておられましたね」
「ええ、河和線からここで新鵜沼行きに接続する特急がパノラマスーパーではなかったので、一本前の特急で先にここに来て待っていたのです」
「一本前は、あの展望電車だったのですが?」
「はい、三本に一本くらいしか来ないので」
女性は続けて呟く。
「昔は殆ど、パノラマスーパーだったのですけれど」
なんだか哀しそうだ。

電車は後ろ向きに走り始めた。
一瞬驚いたが、まぁ、当たり前だろうと納得する。
名鉄の特別車は必ず、東、南向きに2両連結されている。
展望電車だと言っても北向き、つまり逆向きに走れば後ろになるのは当たり前だ。
「この展望車、犬山に向かう時は逆向きしかないのですよね」
地元の人らしい件の女性に訊いてみる。
女性は一瞬間を置き、去り行く景色を眺めながら小さく答えてくれた。
「昔は、両方ともパノラマスーパーだったのですが」
「そうなのですか、この電車はかなり昔から走っているのでしょうか」
「そうでもないのです、私が小学生くらいだったからから・・だから昭和から平成になったころからでしょうか」
だとすればもう30年も走っている電車という事になる。
「私の母が、この電車の前のパノラマカーが大好きで、それでよく、パノラマカーや、このパノラマスーパーにも無理に用事を作って乗せてくれたのです」
「では、鉄道ファンもお母さま譲りですか?」
「いえ、私は鉄道ファンではないのです、パノラマカー、パノラマスーパーが好きなだけで」
「では、お母様も?」
「はい、母も鉄道ファンではなく、パノラマカーファンだと言ってました」

電車は横に新幹線やJR電車を眺めながら地下に入る。
やがて喧噪の名鉄名古屋駅だ。
乗客の入替はあるものの、展望室の中は落ち着いた雰囲気で、降りる乗客も乗る乗客もほとんど無言だ。
乗ってきた人は黙って座り、そのまま目をつぶるか、スマホの画面を見る。
「こちら向きはミュージックホーンが鳴らないか、鳴ってもあまり聴こえないのでなんだか寂しいです」
女性はそんなことを言う。
「なんですか、そのミュージックなんたら・・」
「ミュージックホーンですよ、警笛の代わりに音楽が流れるのです」

電車はすぐに名鉄名古屋を発車して地下線を走るがすぐに地上に出る。
朝に見た景色の反対というわけだが、夜の大都会をこうしてみるのもなかなかいい。

すれ違った電車が、不思議な音色の、確かに音楽に聞こえなくもない警笛を鳴らした。
「あれですよ、あの音」
「でも電車が違いますよね」
青い色のあれは確か、空港行き特急だろう。
「あれはミュースカイ、全車特別車なんです・・昔はパノラマスーパーも全車特別車だったのですけれど」
「なるほど、今は自由席を繋いでいるという事なんですね」
「ええ、一般車といいます」

女性の声は落ち着いたトーンで、そして周囲に声が漏れないように配慮して喋っているのが分かる。
「なんだか、朝の時みたいに一生懸命には前を、今は後ろかな・・を見ておられないような」
缶ビールを開け、僕は呑み込みながら訊いた。
「朝は、なんだろ・・それこそ一生懸命に前を見ていたくて・・」
そういって小さく笑う。
そして僕の持っている缶ビールを見て「美味しそうですね」ともいう。
「お酒、お好きですか?」
「はい、特にビールは」
「失礼しました、このようなものでよろしければ」
僕はもう片方のポケットに入っている缶ビールを女性に差し出そうとした。
その時、ポケットをまさぐっている僕の手が、ポケット越しに彼女の腰にあたる。
「失礼しました」
そう詫びながら缶ビールを渡す。
「いえいえ、朝の私って多分もっと失礼だったのではないかと」
自分で朝のあの姿勢を分かっているのだ。
「でも、もうなんだか、ほんと、一生懸命に見てしまうのです、それに今朝はインスタグラムに投稿するための動画も撮っていたので、ごめんなさい」
「いえいえ、そうやってお詫びされるほどのことでは」
「でも、隣の方が真面目そうな殿方で安心していました」
笑って女性は缶ビールのプルタブを開ける。

缶を合わせて乾杯しながら、僕はこの女性とこうしてこの電車に乗れることがなにかの引き合わせのような気がしていた。

電車は快速特急だという事で、朝の急行とは段違いの速度で走る。
駅も沢山通過する。
時折、前のほうから例のミュージックホーンが小さく聴こえてくる。
「あなたの、お母様もこうして“パノラマスーパー”に乗られるのですか?」
「母は、今はあまり乗りません、パノラマスーパーの前のパノラマカーが大好きだったみたいで」
「そのパノラマカーってどんな電車なんです?」
「真っ赤で、あ・・特急専用車は赤に白帯を巻いてたりしますが、やはり前が見える綺麗な電車です」
「その電車はもう走ってないのですか?」
「はい、ずいぶん前に引退しました・・母はそれから名鉄が楽しくなくなったと言ってます」
「でもあなたは、パノラマスーパーがあるからこれが好きだと」
「ないものをねだっても仕方ないですし」
そういって笑う、僕の方を見てくれたがやはり可愛い女性ではある。
「で、今朝はどちらまで行かれたのですか?」
朝の電車で、彼女がまだ先へ乗っていったのを僕は思い出した。
「終点の河和まで」
「そこは何かお仕事ですか?」
「いえいえ、母に呼ばれたのです」
「お母様に・・」
「母は今、昔に出会った男性と再会して、河和駅近くの海の見えるマンションに住んでいます」
「ほう、それは何かロマンチックを感じます」
「その男性との出会いも、再会もパノラマカーが縁だったそうです」
クスっと笑う。
電車は一つ、駅に停車しまた加速をする。
「今日は母の誕生日で、お祝いに孫たちも来るので準備を手伝ってほしいと」
「誕生日を祝ってもらう人がなにか準備をする?」
「そういう人なんです、人の輪の中にいるのが大好きな」
「お母様のお孫さんというと、あなたのお子さんも?」
「いえいえ、私はずっと独身ですよ、母は若いころには結構、奔放な恋愛をしたようですが」
「ではそのお孫さんたちは」
「姉二人の子供、私から見れば姪、甥です」
「なるほど」
そうそう、呟きながら彼女はスマホを取り出し、なにやら操作をしている。
やがて「あった」といいながら「これです」と、僕にそのスマホの画面を見せる。
身体を寄せて僕にスマホを見せようとする女性からいい香りが漂う。
柔らかな体の感覚が僕をドキリとさせる。

見せてくれたスマホに写っているのは赤い電車だった。
運転台が二階にある真っ赤な特急電車。
「これがパノラマカーです」
子供の頃の絵本でも、新聞やテレビでもずっと昔に見たことがある。
「この電車、知っていますよ」
僕がそういうと、彼女は満面の笑みで僕を見つめてくれた。
もしかしたら、いい出会いなのかもしれない。

パノラマスーパーは夜の郊外の暗がり、後ろに光をまき散らしながら疾走する。
「僕もまだ一人です」
ふっとそう呟いてしまった。

しまった、余計なことを言ってしまったか・・
そう思った。
だが、僕はこの女性にかなり気を惹かれたのは間違いがない。
彼女はうつむいてしまった。
だが、小さく、絞り出すような声で「私にもパノラマスーパーでご縁が出来たのかな」と呟いた。
反対方向への電車が例のミュージックホーンを鳴らしながら走り去る。
高架に上がる線路で遠くに名古屋だろうか、大都会の夜景が見える。


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