豊富町「工房レティエ」
「こんな森の中にあるの?」。目的地「工房レティエ」は、木立の中に ポッンと建っていた。工房兼店では、摂りたての牛乳を原料にした チ-ズやジェラ-トなどを製造販売している。「牛が好きだから、自 然と父の仕事を手伝うようになった」と言うのは、店長の久世歩さん (29)。人里離れた森の中でうら若き女性が、と驚いていたら、代表 で父の久世薫嗣さん(63)にはもっと驚かされた。神戸で牛乳など安 全食品の共同購入の仕事をしていたが、「もっとおいしい牛乳を飲む には、自分で牧場を経営するしかない」と決心。家族と家畜(牛、豚、 鳥)を伴い、さながら「ノアの箱舟」のトラックで北海道に上陸。豊富 町に移住して約20年たつ。現在は二男の亮さん(32)と一緒に、70 ヘクタ-ルの土地でホルスタイン、ジャ-ジ-合わせて50頭の牛を 放牧している。牛たちは青草を選びながら、丘陵地帯をのほほんと 移動。こんなに自由にたくましく育った牛の牛乳が、おいしくないわけ がない。研究を重ね完成したナチュラルチ-ズは、モッツァレラ、フロ マ-ジュ・ブランなどのフレッシュタイプと、4種類のハ-ドタイプ。乳 質のうまみが生かされていてどれも個性的。ジェラ-トもさわやかな 草原のような味わいで、疲れた体に染みこむよう。家族の誠実な仕事 ぶりが伝わってくる。工房では、モッツアレラとストリングスチ-ズの 手作り体験もできる。歩さんの手ほどきに従い粘土をこねる要領で、 熱い湯の中でチ-ズをぷにゅぷにゅもみもみ。良質の原料と親切な 指導で、簡単にできた。ラクレットチ-ズは、専用の道具で溶かして ト-ストの上にとろり。身もだえしながら食べている小世里さん。「もう 一度食べたい!」と、いまも目を潤ませている。 (佐々木小世里、柳亜古。記)
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