手話通訳者のブログ

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手話通訳技術/指さし(同時に表す)

2015-08-05 06:47:01 | 手話
片手で表すことができる手話、たくさんあるやろ?
好き、嫌い、認める、認めない等・・・
この時、もう一方の手、遊んどったら、あかんで。
まあ、必ず両手を動かせ、とは言わへんけど。

日本語でもそうやけど、話が上手い人と下手な人がいる。
長々と話しているけど、結局、何が言いたいのかわからない人がいる。
なぜか。
いくつか、理由はあるが、「主語がない」あるいは「主語が明確になっていない」という要因がある。

手話通訳現場に複数の人がいるとする。
わかりやすい通訳を心がけるために、誰が、誰に、ということを明確にする必要がある。
例えば、会議の場でA氏が発言している、とする。
当然、同時に(厳密に言えばワンテンポ遅らせて)手話を表す。
A氏の発言中、B氏が「それは違うと思う」と言った。
手話通訳者はA氏の発言内容を手話で表しているわけだが、ここでわずかに体の向きを変えて、片手で「違う」「思う」と表し、残っている手で発言者(B)を指さす。
誰の発言なのかを明確にしないと、見ている方(申請者)は混乱してしまう。

会議等、複数の人が同時に発言する場では、手話通訳はスピードが重要になる。
「今、Bさんがこう言いました」
なんて手話表現をしている余裕はない。
そこで、指さしを使う。
かと言って、発言者を常に指でさしていたら、それだけで片腕がとられてしまい、手話の表現力が落ちてしまう。
どうするか。

視線を使う。
発言者をチラリと見る。
ろう者の視線は鋭い。通訳者が今、誰を見たのか、一瞬で見抜く。
その視線に「意図」があれば、ろう者はほぼ100%、通訳者の視線の意味を理解する。