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なぜ立憲主義は機能を停止したか 『「天皇機関説」事件』(集英社新書)で読み解く (山崎雅弘著 半藤一利氏推薦)

2017-06-07 10:24:52 | ご案内

今日本が全体主義化しつつある中、かつて日本がどのように全体主義化、ファシズム化していったのかを学ぶことは必要です。「天皇機関説事件」はその転換点となった事件です。

 

http://www.asahi.com/and_M/articles/SDI2017060671161.html

なぜ立憲主義は機能を停止したか 『「天皇機関説」事件』で読み解く

  • 2017年6月6日
  • 戦前の日本の転機にスポットを当てた『「天皇機関説」事件』山崎雅弘(集英社新書)

 200年ぶりとなる天皇陛下の退位が、国会での審議を経て実現しようとしています。天皇を「象徴」と規定している日本国憲法のもとでは、譲位を想定していなかったため、慎重に特例法の整備が進められてきました。現状では天皇が自分の意思で退位できないというのは、ある意味で立憲主義の一面ともいえるでしょう。

 昭和、平成、そして次の元号に向けて、国民と皇室が新たな時代を迎えようとしている今こそ、過去の苦い経験を見つめ直す良い機会かもしれません。そんなタイムリーな一冊が、82年前の政界を揺るがした弾圧事件に迫った『「天皇機関説」事件』(集英社新書)です。

 天皇機関説は、当時の大日本帝国憲法に則(のっと)って政治を進めるにあたり「国家を法人とみなし、天皇をその最高機関と位置づける」「天皇の主権は憲法の制約を受ける」という憲法解釈です。当時の定説でしたが、国会での質疑をきっかけに、右派の政治活動家や軍人らによる徹底的な攻撃を受けます。この学説が抹殺されていく様子が、本書では克明に描かれています。

 “事件”が起こった1935年は、日本が戦争へと突入していく真っただ中。歴史の教科書では、一部の軍人が起こしたクーデターである五・一五事件と二・二六事件の間に併記されていることが多く、あまり目立たない存在です。しかし、日本の立憲政治を骨抜きにしたという意味で、国家を暗転させた重大な“事件”だといえるでしょう。

 筆者の山崎雅弘氏は、戦史や現代紛争史の研究家として、最近では現代日本の政治情勢を分析した著書で知られています。難しくなりがちな学者らの憲法解釈も、対立の図式を解きほぐして一般向けにわかりやすく解説。関係者の背景やキャラクターに着目して、人物像を浮き彫りにしています。

 登場人物のやり取りを読んで感じられるのが、今の日本でも起こりそうなドラマが繰り広げられていること。自分と違う意見は全く受け入れない人、過去の遺恨を忘れない人、ことなかれ主義で済まそうとする人……。不用意な発言で政治家が失脚するような“政治のワイドショー”が、当時から存在していたことがうかがえます。

 例えば、糾弾される当事者で「機関説」を唱えた美濃部達吉(みのべ・たつきち)は、貴族院議員で憲法学の最高峰といえる人物。内閣が事態を収拾しようとしたのに対して、美濃部は2度にわたる弁明を行い、攻撃する勢力の火に油を注いでしまいます。自説の正当性を信じる信念が、政治的駆け引きの場では裏目に出てしまったといえるでしょう。

 事件の陰の仕掛け人として過激な活動を展開した蓑田胸喜(みのだ・むねき)は、戦前のファシズムを代表する右翼思想家で、近年になって注目されています。論理性では美濃部に劣っていても、感情に強く訴えるアジテーションで「敵の敵を増やす」という蓑田の戦略が効果を発揮したことについても、筆者は鋭く切り込んでいます。

 昭和天皇の「軍部が自分の意にしたがわずして、天皇主権説を唱えているのは、矛盾ではないか?」という言葉も印象的です。権力の暴走を止める安全装置を失い、日本は戦争への道を進んでいきます。

 立憲主義という言葉がクローズアップされる2017年の日本において、当時と今を比較する書物が多く出ているのも興味深いところ。筆者の山崎氏が現代の政治的問題をどう捉えているかについては『日本会議 戦前回帰への情念』(集英社新書)を併せて読むと良いでしょう。(文 ライター・北林伸夫)

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