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12・14衆院選 自民党公約 不都合は封印するのか
11月27日(木)
公約というよりはスローガンのような印象を受ける。
自民党が総選挙に向けて発表した政権公約だ。「景気回復、この道しかない」との表題が物語っている。
第2次安倍晋三政権が発足して以降、雇用や企業倒産件数などの経済指標が好転したとする例を次々に列挙した。
首相が一方的に総選挙の最大争点に設定した自身の経済政策「アベノミクス」が軌道に乗っていることをアピールする狙いなのだろう。成果が判断しにくいものをあえて争点化し、有権者の支持を取り付ける考えのようだ。
自衛隊の任務を大きく変える集団的自衛権の行使容認や原発の再稼働など、国民の賛否が割れる問題は多い。戦後日本の針路に関わる問題なのに、安倍政権が積極的に進めてきたこれらの政策を公約は国民の目から遠ざけているようにも見える。
首相が言うように、アベノミクスしか道はないのか。今春の消費税アップや急速な円安で実質賃金の減少など、暮らしは揺らいでいる。雇用が増えているとはいっても、非正規労働者が増えているのであって、格差は広がっているとの指摘がある。
自民の公約は、こうした側面には触れていない。待ったなしで取り組まなくてはならない財政再建の見通しも不透明のままだ。具体策が乏しいにもかかわらず、財政再建の手を緩めず、景気回復を加速させると強調している。
一方、保守色の濃い記述は影をひそめた。2年前の総選挙では国防軍保持など具体的な憲法改正草案を記していたが、今回は「国民の理解を得つつ憲法改正原案を国会に提出」するとした。
行使容認を閣議決定した「集団的自衛権」の文言も盛ってはいない。「切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を速やかに整備する」との表現にとどめた。
先に公約を発表した民主党は行使容認決定の「撤回」を掲げている。特定秘密保護法も含め、安倍政権が進める安全保障政策には国民の反対や懸念は根強い。
不都合な部分を見えにくくし、選挙を乗り切ろうとの自民党の思惑が透ける。アベノミクスを訴えて衆院の過半数を制すれば、後は白紙委任で―。そんな展開は認められない。選挙戦では安倍政治の2年について丁寧に説明しなくてはならない。