ヴィレッジ生活 ある日のＮさん
何時もは4人で夕食ですが、姉が居ないので３人です。
珍しくＮさんと顔を合わせたので、こちらの席に誘いました。
とても明るいひょうきんな方で皆から好かれています。
入り口でオーダーしてから着席ですが、
我々は既にオーダーを済ませていました。
早く注文していらっしゃいと言って出かけました。
間もなく係の人と戻って来て、既に注文はしてあるそうです。
この日皆はステーキを注文していました。
彼女は私も同じものを注文したと言っていましたが、
運ばれてきたものは別のものでした。
彼女はアルツハイマーにかかっているのです。
今の事も直ぐに忘れてしまいます。
一度食べたのに又注文しに行く事もありました。
この日は台風の前日でしたので、翌朝の食事は
お弁当を貰って行くよう看板が出ておりました。
お弁当を貰うよう、彼女にも勧めました。
「こんな便利なものがあったのね。知らなかったわ」
そう言って彼女も貰う事にしました。
行ってみたら彼女は毎朝お弁当を配達して貰ってるとのことでした。
時どきこんな事もありました。
食事に出かける時近くのラーメン屋さんの方から帰ってくることがあります。
「こんな朝早く何処へ行って来たの」
「ラーメン屋さんに行って来たけど開いてなかった」
以前彼女は猫を飼っていました。
2年前に死んでしまいました。
どうもこの頃から急におかしくなったようです。
息子さんが来て納骨されているにもかかわらず、
今でも猫が居なくなったと受付に行って困らせているようです。
大変優秀な方で、以前は私と一緒に陶芸や絵を描いておりました。
皆が驚くほど見事な作品を作り、
今でもヴィレッジには飾ってあります。
いつ何時誰がなってもおかしくないアルツハイマー、
防ぎようがないのが困りますね。
昨日からお盆ですが、こんな所に居ると迎え火も焚けませんし、
提灯すら飾る事が出来ず、しまったままです。
お供え物をしてあげるだけなんです。
昨日は姉の所へ行って来ました。
少しづつですが食事をさせて貰って居るようです。
相変らず家に帰りたいというのには困りました。
冷たい表情をしています。
早くＮさんの様な明るい表情が戻って来る事を願っております。
今日もヴィレッジ生活の模様で申し訳ございません。
紅