実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

「したい」と「出来る」 実戦教師塾通信五百九十五号

2018-04-13 11:33:48 | 子ども/学校
「したい」と「出来る」
     ~「もと居た場所」と「浮いた場所」~


 1 「もと居た場所」
 「オオタニさ~ん」の勢いが止まらない。張本以外はもう脱帽というか、気持ちのいいコメント、オンパレードだ。

打つ/投げる二刀流の大谷が、ホームランを打ってなんぼの大リーグ野球を変えようとしているという。
 以前イチローもそう言われた。イチローは、
「平凡なゴロ」を打っても、
「絶対捕(と)れない」打球が飛んでも、
観客の「まだ分からない」気持ちを止めることがない。野球の面白さを、イチローは改めて知らせた。

 野球は、たとえば「抑(おさ)えの」「(指名)打者の」「代走の」スペシャリスト、という「進化」をして来た。大谷も、指名打者としては「守らなくてもいい」が「投げる」のである。それは、もともと野球が持っていた面白さだ。
 「野球を好きなんだ」というイチロー。格安の契約でもいいから「メジャーでプレイしたかった」イチロー。そんなイチローは変わっていなかった。難産だった今年の契約のことだ。
「メジャーでプレイを続けることが、揺らいだことはない」
帰国のラブコールが激しかったことは、私たちの記憶に新しい。だから、この「揺らぎのなさ」を聞かされたことは大きかった。とりわけイチローにとって、帰国は「凱旋(がいせん)」ではない。日本に帰って来ないと分かってがっかりしたのは、イチローのファンではない。こんなに野球を一途(いちず)に愛する日本人が「太平洋の向こうに」いることを、私たちは再確認出来た。
 一方イチローは、
「まだまだやれるんだ」
と、もう言わない。イチメーターも動きが緩慢だ。しかし、
「自分のプレイを見たい人たちがいることに感謝している」
と言う。これはまるで、
「オマエはなにをしたかったんだ」
と、私たちにも「もと居た場所」を問いかけているかのようだ。イチローは野球を「したい」、そして「好き」なのだ。
 また、低い給料でも「二刀流での約束があれば」とこだわった大谷。破竹(はちく)の興奮は、これもアメリカ全土と太平洋を越えて押し寄せて来る。
 しかし必ず「風は止(や)む」。その時、ファンは「気まぐれ」な姿を見せる。大谷もそんな時、野球が「好きでしょうがない」姿を見せて欲しいと思う。それで私たちの「もと居た場所」を見るように思うからだ。

 2 「浮いた場所」
 千葉県鎌ヶ谷は、私の住む柏の隣である。そこに日本ハムの練習場がある。ご存じと思うが、困ったことが起こっている。清宮とハイタッチ出来なかった若者が、
「オレたちとはしねえのかよ」
と騒ぎだし、警察が出動する事態となった。

解散後もこの連中は選手寮前で選手たちを待ち伏せし、サインをおねだりして書いてもらうも、その色紙を投げて遊ぶという不埒(ふらち)を続けた。ひところ世間を賑(にぎ)わせた「荒れる成人式」を思い起こさせる。じゃあキミたちは何しに来たの?と聞きたくなる、奇妙な出来事なのだ。
 この連中のモチベーションはおそらく、卑屈な感情の底に淀(よど)んでいる「ひがみ」と思って間違いない。
「相手にされたい」「遊んで欲しい」
のである。つまりこのストーカーのような屈折は、「退屈」という屈折である(このあたりは拙著『学校をゲームする子どもたち』参照)。また同時に、この困った連中は、
「『したい』ことと『出来る』ことを混同する」
のである。そして、この「したい/出来る」の混同を分からないままに「出来る」方向に進む。
◇簡単に実現できる
◇簡単に手に入る
と思うのである。こんな行動パターンを、世間では「駄々をこねる」と言っている。
 さて、何でも可能だと思えた傲慢(ごうまん)な、バブルという時期を日本は過ごした。それははじけた。この事態を、島田洋七が『佐賀のがばいばあちゃん』で、
「もとに戻っただけだ」
と書いたけれど、この潔(いさぎよ)さをその後、私たちは持てていない気がする。私たちの「浮わついた感じ」が、抵抗しがたくあるからだ。社会はまだまだ不況だというのに、このやな感じは続いている。スマホがこの「全能感」に拍車をかけているのは間違いない。
 さて、日本ハムにまとわりつく困った連中はどうしよう。
 人というものを知らない「ボタンでタッチが生活」の現代の若者(に限らないが)は、むしろ、この騒動の中から初めて、人や大人や生活者やという道に入りかけている。大人はそれに付き合うしかない。ルール化する方向ではなく「大人らしく」上手に、だ。しかし、こいつらの「したい」道は、さらにさらにその先だ。



 ☆後記☆
張本ホントにダメですねえ。この人、開幕前は大谷を絶望視してたんですから。それで引っ込みがつかないのかも、ですがねぇ。大沢親分のような「抑え」のきく人が間にいないと、もうサンデーモーニング見ないゾですよ。
 ☆ ☆
ゴールデンウィークに、なんかイチロー対大谷の対決があるらしいですね。その頃のシアトル行きのチケットがバカ売れだそうで、ニュースでやってましたね。いいニュースです。

     我が家の八重です。かわいいです。

 昨日、久しぶりに柏の小学校を訪れました。子どもら、かわいいですねえ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿