実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

その<場所> 実戦教師塾通信五百九十七号

2018-04-27 11:26:33 | 福島からの報告
その<場所>
     ~忘れてはいけない~


 ☆初めに☆
大川小学校の控訴審判決が出ました。「勝訴」でした。
「大川小 津波防災に過失」(朝日新聞)
という見出しからうかがえるのは、震災に対する行政のマニュアル不備という結論です。しかし、
「……児童生徒の行動を拘束(こうそく)する以上、教師は安全を確保するため、学校設置者から提供される情報も、批判的に検討することが求められる場合もある。」(判決文より)
ともあるのです。この事件当初から声を上げてきた吉岡弁護士が「画期的(かっきてき)判決」と呼ぶのは、この点にもある。遺族の方々がずっと「知りたい!」としていた「空白の50分間」に踏み込んでいると思えます。
「早く逃げれば助かっていたという訴えを、裁判所が認めてくれた」
とは、昨年講演いただいた佐藤和隆さんの言葉です。ニュースは「行政がマニュアル強化を」とアナウンスしますが、それではまずい。学校の教師があの時なにが出来たのか、これからも私たちは考え続けねばなりません。

 ☆桜散る☆
やっぱり福島でも桜は終わってました。今年は暖かかったのですね。

        でも楢葉では菜の花が満開でした。
「琴寄さん、半袖だよ~!」
と、こたつに入ったまま、渡部さんのおばあちゃんは、冬支度(じたく)のかっこうで叫びました。
半袖一枚で充分の、あったかな春の日なのです。

 1 神童(しんどう)
 皆さん、あの国税庁長官佐川宣寿(のぶひさ)の出身、知ってました? 渡部さんからの思いもかけない、
「いわきなんだよな」
に、びっくり仰天(ぎょうてん)。いわき! その昔いわきは「平(たいら)」と呼んでいた。佐川先生、渡部さんたちと同期だそうです。
 その頃の話だと、県下でも五本の指を数える天才だったそうで、「神童」、つまり神の子、そう呼ばれていたそうです。中学校の後、東京の九段高校に進学していたことが、噂(うわさ)で伝わってきたという。すごいですねえ。

 ついでに、地元の新聞やテレビでニュースになっていた面白い話。
「センター試験中 控室で飲酒」
の見出しは『福島民友』(4月21日)。大学入試センター試験会場の教員向け控室で、試験時間中に飲酒した高校の男性教諭(57)が、減給の処分を受けたというものです。以下は記事からの抜粋(ばっすい)。
「……昼ごろに引率教諭らが待機するための控室を私的に訪問。……(夕方までの間)……室内にあった日本酒8合(約1,4ℓ)を『珍しい酒だ』と飲みきって深酔い状態になり、試験対応を担当する同僚の教員に大声で詰め寄ったり胸ぐらをつかむなどしたという。……『慢心と酒に自堕落(じだらく)な性格が原因』と話し、反省しているという」
これ読む限りでは、いわゆる「でしゃばって」会場に行った教師です。きっと、表沙汰(おもてざた)にしないといけないくらい暴れたんですねえ。
 こっちは「神童」ならぬ「悪童」です。

 2 忘れてはいけない
 離れの家の畑。玉ねぎが元気よく伸びてます。これってネギではないの? といぶかる私です。もっと伸びて、地面に倒れるくらいの時が収穫時なんだそうで、

「梅雨の晴れ間かな」
渡部さんが言います。
 子牛たちはだいぶ大きくなってました。お昼寝タイムだったみたい。

こちらは、大人の牛たち。私たちが小屋に近づいて行くと、みんな外に出てきてくれました。見ての通り、渡部牧場も若葉の季節です。


 母屋(おもや)に移動しました。この日は屋根に瓦を葺(ふ)いているところでした。これがもう、平屋(ひらや)というには、見上げるような屋根なんです。


中の柱も見事な幾何学(きかがく)模様なんでね。

「もうこれは、お屋敷ですねえ」
私は思わず口にします。
 こう書いたことで、あらぬことを考える読者がいると困るので、補足いたします。

「あいつら、一億もらったってよ」
こう口汚(くちぎたな)く話す人が、いわきにはたくさんいました。
 何度か触れた賠償のことですが、今回は数字で簡単におさらいします。2012年3月に政府から出された賠償の目安です。
◇避難指示準備区域  月10万円
◇居住制限区域    240万円(2年分)
◇帰還困難区域    600万円(5年分)
大体の人は「600万円だと!?」と驚き立腹(りっぷく)なのでした。実はどの区域も「月10万円」という支給額。一括払(いっかつばらい)か分割かという違いなのですが、それが目に入らない。
 この4カ月あとに、家屋/家財/生活費も含んだ賠償基準が、東電から発表されます。この時の最高額が6000万円近い数字でした。もちろんそれは「帰還困難区域」(双葉町大熊町)です。しかも、家族は五人で、家屋は200平方mという条件で。でもこれが、
「一億もらったってよ」
の、口汚さになるのです。自分たちは一銭ももらってない(正確には違う)、でも、いわきに避難してきた連中はみんな「一億もらってる」となる。
 あとは前も書きましたがもう一度。いわき中央台に暮らすおばちゃんのとなりの分譲(ぶんじょう)住宅に、双葉地区の家族が引っ越してきた。おばちゃんは、
「あの人たちはお金があるからね」
そう言っていたが、近所づきあいをする仲となった。その家の人から、いろいろなグチを聞かされるようになった。そしてある日、その家はまた引っ越しをしてしまう。
「なんか住みづらいんだとよ」
おばちゃんが教えてくれた。おばちゃんはもう、
「あの人たちはお金があるからね」
とは言わなかった。

 3 筍/たらの芽
 写真で撮っとけばよかった。お昼をご馳走になりました。たらの芽とメヒカリの天ぷらが絶品でした。小名浜にもメヒカリが上がるようになったこの頃。でも地元の店に出るほどは捕れないらしく、この日のメヒカリは地元産ではないという。でもとにかく、ホクホクする。食べたことのある人なら分かる。そして、畑の道でとれたという「タラメ(たらの芽)」。
 いつも黙って食べる渡部さんですが、
「何も言わないで食べてると、料理(を作る方)は上達しないんだよ」
と、ひと言入れる奥さんでした。一方私は、こたつの布団に冷し中華のどんぶりをひっくり返し、お騒がせなのです。
 開け放たれた窓から、風が渡っていきます。



 ☆後記☆
楢葉町の教育委員会を訪れました。震災前は「南小学校」だったのですが、今は委員会と「まなび館」が併設(へいせつ)されています。詳細(しょうさい)の報告は後日にいたします。

 ☆ ☆
事件から10年。館山いじめの第三者委員会は三年目に入りました。少し不安を感じるこの頃の展開なんです。先日の記者会見の様子です。

さて、この事件のシンポジウムを、同じく千葉県の柏で行います。期日は6月23日(土)。案内ビラを次回掲載します。皆さん、ぜひおいでください。
 ☆ ☆
最後も春らしく。東京檜原村から立派な筍が届きました! ありがとうございます!

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